合同会社のメリットと留意事項⑤-出資の払戻しの際に、みなし配当課税が生じると考えていないか?
Q 合同会社を設立しようと考えています。最大のメリットは何ですか?
A 出資の払戻しを行うことができ、出資した金額分まではみなし配当課税とならずに会社から金銭を引き出せることです。
解説
株式会社の場合には「出資の払戻し」を行うことができません。
資本の払戻しに近いのは、発行法人に自己株式として売却することですが、自己株式の売却の場合、交付された金銭の額(取引価格は資本部分と利益部分の合計としての時価純資産価額で計算するものとする)がその交付の基因となつた当該法人の資本に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分がみなし配当となり、配当課税となります(所得税法第25条)。
資本に対応する部分の計算は、自己株式の取得等の直前の資本金等の額を当該直前の発行済株式(自己が有する自己の株式を除く。)の総数で除し、これに当該自己株式の取得に係る株式の数を乗じて計算した金額となりますので、1株あたりの資本金等の額を超える部分は必ずみなし配当課税の対象となってしまいます(法人税法施行令第8条1項20号)。
これに対して、合同会社は「出資の払戻し」を行うことができます(会社法第626条)。
出資の払戻しについては、払戻した金銭の基因となった当該法人の資本に対応する部分の金額について、払戻し直前の資本金等の額を払戻し直前の出資総額で除し、払戻し分の出資金額を乗じて計算します(法人税法施行令第8条第1項第18号)。
すなわち、会社が稼得した利益部分を対応させず、資本部分に対応させて計算するため、資本金等の額=出資総額である限り、出資した金額まではみなし配当となりません(法人税法施行令第9条1項12号)。したがって、会社に出資した分までは、無税で引き出せることになります。
所得税法第25条(配当等とみなす金額)
法人(法人税法第二条第六号(定義)に規定する公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この項において同じ。)の株主等が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(同条第十二号の十五に規定する適格現物分配に係る資産にあつては、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額が当該法人の同条第十六号に規定する資本金等の額又は同条第十七号の二に規定する連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額に係る金銭その他の資産は、前条第一項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配又は金銭の分配とみなす。
3 第一項に規定する株式又は出資に対応する部分の金額の計算の方法その他前二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
法人税法施行令第8条1項18号
資本の払戻し等(法第二十四条第一項第四号に規定する資本の払戻し(法第二十三条第一項第二号に規定する出資等減少分配を除く。)及び解散による残余財産の一部の分配をいう。以下この号において同じ。)に係る減資資本金額(当該資本の払戻し等の直前の資本金等の額にイに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、当該直前の資本金等の額が零を超え、かつ、イに掲げる金額が零以下である場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額をいい、当該計算した金額が当該資本の払戻し等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額を超える場合には、その超える部分の金額を減算した金額とする。)
ロ 当該資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は当該解散による残余財産の一部の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額(当該減少した資本剰余金の額又は当該合計額がイに掲げる金額を超える場合には、イに掲げる金額)
法人税法施行令第8条1項20号
法人税法施行令第9条1項12号(利益積立金)
十二 前条第一項第十八号に規定する資本の払戻し等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額が当該資本の払戻し等に係る同号に規定する減資資本金額を超える場合におけるその超える部分の金額
会社法第626条(出資の払戻し又は持分の払戻しを行う場合の資本金の額の減少)
合同会社は、第六百二十条第一項の場合のほか、出資の払戻し又は持分の払戻しのために、その資本金の額を減少することができる。
2 前項の規定により出資の払戻しのために減少する資本金の額は、第六百三十二条第二項に規定する出資払戻額から出資の払戻しをする日における剰余金額を控除して得た額を超えてはならない。
3 第一項の規定により持分の払戻しのために減少する資本金の額は、第六百三十五条第一項に規定する持分払戻額から持分の払戻しをする日における剰余金額を控除して得た額を超えてはならない。
4 前二項に規定する「剰余金額」とは、第一号に掲げる額から第二号から第四号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(第四款及び第五款において同じ。)。
一 資産の額
二 負債の額
三 資本金の額
四 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額