個人税務での勘違い防止①-譲渡所得の計算における株式の取得費の単価は、必ず総平均法に準ずる方法で計算する点を見逃していないか?

Q上場会社オーナーが亡くなり、後継者が上場株式を相続しました。後継者はストックオプションを行使して当該上場会社株式の一部を取得しています。相続税の納税資金を確保するために相続した株式の一部を売却した際の譲渡所得の計算において、株式の取得費はどのように計算しますか?

A総平均法に準ずる方法で計算します。

解説
二回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券を譲渡した場合には、当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時)から譲渡の時までの期間を基礎として、総平均法に準ずる方法で算出した一単位当たりの金額により計算した金額とします(所得税法施行令第118条)。
なお、一円未満の端数は切り上げとなります(租税特別措置法通達37の10・37の11共-14)。

 

所得税法第48条(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)
居住者の有価証券につき第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者の事業所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する有価証券の価額は、その者が有価証券について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した評価の方法により評価しなかつた場合には、評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とする。
2 前項の選定をすることができる評価の方法の種類、その選定の手続その他有価証券の評価に関し必要な事項は、政令で定める。
3 居住者が二回以上にわたつて取得した同一銘柄の有価証券につき第三十七条第一項の規定によりその者の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、政令で定めるところにより、それぞれの取得に要した金額を基礎として第一項の規定に準じて評価した金額とする。

 

所得税法施行令第118条(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等)
居住者が法第四十八条第三項(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等の計算)に規定する二回以上にわたつて取得した同一銘柄の有価証券で雑所得又は譲渡所得の基因となるものを譲渡した場合には、その譲渡につき法第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者のその譲渡の日の属する年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は法第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の当該年分の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。以下この項において同じ。)から当該譲渡の時までの期間を基礎として、当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法に準ずる方法によつて算出した一単位当たりの金額により計算した金額とする。

2 第百九条から前条までの規定は、前項に規定する所得の基因となる有価証券について準用する。

 

所得税法施行令第105条(有価証券の評価の方法)
法第四十八条第一項(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)の規定によるその年十二月三十一日(同項の居住者が年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この条において同じ。)において有する有価証券(以下この項において「期末有価証券」という。)の評価額の計算上選定をすることができる評価の方法は、期末有価証券につき次に掲げる方法のうちいずれかの方法によつてその取得価額を算出し、その算出した取得価額をもつて当該期末有価証券の評価額とする方法とする。
一 総平均法(有価証券をその種類及び銘柄(以下この項において「種類等」という。)の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その年一月一日において有していた種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額とその年中に取得した種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して計算した価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)
二 移動平均法(有価証券をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当初の一単位当たりの取得価額が、種類等を同じくする有価証券を再び取得した場合にはその取得の時において有する当該有価証券とその取得した有価証券との数及び取得価額を基礎として算出した平均単価によつて改定されたものとみなし、以後種類等を同じくする有価証券を取得する都度同様の方法により一単位当たりの取得価額が改定されたものとみなし、その年十二月三十一日から最も近い日において改定されたものとみなされた一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)
2 居住者の有する株式(出資及び投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項(定義)に規定する投資口を含む。)又は投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益権について、その年の中途において第百十条から第百十六条まで(株式の分割等の場合の株式等の取得価額)に規定する事実(以下この項において「事実」という。)があつた場合には、当該事実(その年中に二回以上にわたつて事実があつた場合には、その年十二月三十一日から最も近い日における事実)があつた日をその年一月一日とみなして、その年以後の各年における前項の規定による当該株式又は受益権の評価額の計算をするものとする。

 

租税特別措置法通達37の10・37の11共-14(1単位当たりの取得価額の端数処理)
所得税法令第105条第1項の規定により計算された1単位当たりの取得価額又は所得税法令第118条第1項《譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等》の規定により計算された1単位当たりの金額に1円未満の端数(公社債は額面100円当たりの価額とした場合の小数点以下2位未満の端数)があるときは、原則として、その端数を切り上げるものとする。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13追加)

 

国税庁タックスアンサーNo.1466(同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1466.htm