株式交付制度⑤-債権者保護手続きが必要となるケースを整理せずに実務を行っていないか?
Q弊社は株式交付により他の会社を子会社化しようと考えています。対価として弊社株式のみを交付するか、一部現金対価を併用するか検討しています。法務手続きに影響する点を教えていただけますか?
A債権者保護手続きの要否に影響を与えます。
解説
交付する自社株式以外の対価が、対価総額の5%未満である場合には債権者保護手続きは必要ありませんが、5%以上である場合には債権者保護手続きが必要となります(会社法第816条の8、会社法施行規則第213条の7)。現金対価が対価総額の5%以上である場合には、会社財産の流出による債権者への影響を考慮して、株式交付に異議のある債権者を保護する手続きが求められています。
会社法第816条の8(債権者の異議)
株式交付に際して株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)が株式交付親会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合には、株式交付親会社の債権者は、株式交付親会社に対し、株式交付について異議を述べることができる。
2 前項の規定により株式交付親会社の債権者が異議を述べることができる場合には、株式交付親会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 株式交付をする旨
二 株式交付子会社の商号及び住所
三 株式交付親会社及び株式交付子会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
3 前項の規定にかかわらず、株式交付親会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
4 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該株式交付について承認をしたものとみなす。
5 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、株式交付親会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該株式交付をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
会社法施行規則第213条の7(株式交付親会社の株式に準ずるもの)
法第八百十六条の八第一項に規定する法務省令で定めるものは、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を減じて得た額が第三号に掲げる額よりも小さい場合における法第七百七十四条の三第一項第五号、第六号、第八号及び第九号の定めに従い交付する株式交付親会社の株式以外の金銭等とする。
一 株式交付子会社の株式、新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)及び新株予約権付社債の譲渡人に対して交付する金銭等の合計額
二 前号に規定する金銭等のうち株式交付親会社の株式の価額の合計額
三 第一号に規定する金銭等の合計額に二十分の一を乗じて得た額