事業承継税制⑦-納税猶予適用後に合併を行った場合の適用継続要件を見逃していないか?
Q 自社株の納税猶予制度適用後に、適用会社が合併により消滅した場合には取消し事由となりますか?
A 継続要件を充足すれば、納税猶予の適用が継続されます。
解説
合併後も納税猶予の適用を継続するための主な要件は以下の通りです(円滑化法規則第10条第1項及び第2項第1号、2号、3号)。
- 後継者が吸収合併存続会社の代表者(代表権を制限されている者を除く。)となること
- 吸収合併存続会社の株式等以外の財産が交付されていないこと(合併比率を調整するために交付する金銭(合併交付金)や後継者以外の株主の反対者の株式買取請求を受けて交付する金銭は、株式等以外の財産から除外されます。)
- 後継者及び同族関係者と合わせて吸収合併存続会社の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、後継者が有する吸収合併存続会社の議決権の数が、いずれの同族関係者の議決権の数も下回らない者であること
上記のほか、吸収合併存続会社が上場会社、風俗営業会社、資産保有型会社に該当しないこと。吸収合併存続会社において、合併効力発生日の直前の事業年度において、資産運用型会社に該当しないこと。吸収合併存続会社の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないことが、適用継続要件として規定されています(円滑化法規則第10条第1項及び第2項第4号、5号、6号)。
吸収合併後の雇用継続要件における従業員の数の計算においては、事業継続期間の残存期間に応じた調整計算を行った後の人数の合計の8割を下回ることと読み替えて適用されます(施行規則第10条第10項、11項、12 項、13項)。
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第10条(合併があった場合の認定の承継)
第十条 第一種特別贈与認定中小企業者が合併により消滅したときは、当該認定は、その効力を失う。ただし、吸収合併存続会社等が、吸収合併がその効力を生ずる日又は新設合併設立会社の成立の日(以下「合併効力発生日等」という。)に次に掲げるいずれにも該当することについて第十二条第三十七項の確認を受けたときは、吸収合併存続会社等は、合併効力発生日等に、第一種特別贈与認定中小企業者たる地位を承継したものとみなす。
一 当該第一種特別贈与認定中小企業者の第一種経営承継受贈者が当該吸収合併存続会社等の代表者(代表権を制限されている者を除く。次項第一号並びに次条第一項第一号及び第二項第一号において同じ。)であること。
二 当該吸収合併存続会社等の株式等以外の財産(当該第一種特別贈与認定中小企業者の株主又は社員に対する剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産及び当該第一種経営承継受贈者以外の株主であって合併に反対するものに対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されていないこと。
三 当該第一種特別贈与認定中小企業者の第一種経営承継受贈者が、当該第一種経営承継受贈者に係る同族関係者と合わせて当該吸収合併存続会社等の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、当該第一種経営承継受贈者が有する当該吸収合併存続会社等の株式等に係る議決権の数がいずれの当該同族関係者が有する当該株式等に係る議決権の数も下回らない者であること。
四 当該吸収合併存続会社等が上場会社等、風俗営業会社又は資産保有型会社のいずれにも該当しないこと。
五 吸収合併の場合にあっては、当該合併効力発生日等の翌日の属する事業年度の直前の事業年度において、当該吸収合併存続会社等が資産運用型会社に該当しないこと。
六 当該吸収合併存続会社等の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないこと。
2 第一種特別相続認定中小企業者が合併により消滅したときは、当該認定は、その効力を失う。ただし、吸収合併存続会社等が、合併効力発生日等に次に掲げるいずれにも該当することについて第十二条第三十七項の確認を受けたときは、吸収合併存続会社等は、合併効力発生日等に、第一種特別相続認定中小企業者たる地位を承継したものとみなす。
一 当該第一種特別相続認定中小企業者の第一種経営承継相続人が当該吸収合併存続会社等の代表者であること。
二 当該吸収合併存続会社等の株式等以外の財産(当該第一種特別相続認定中小企業者の株主又は社員に対する剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産及び当該第一種経営承継相続人以外の株主であって合併に反対するものに対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されていないこと。
三 当該第一種特別相続認定中小企業者の第一種経営承継相続人が、当該第一種経営承継相続人に係る同族関係者と合わせて当該吸収合併存続会社等の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、当該第一種経営承継相続人が有する当該吸収合併存続会社等の株式等に係る議決権の数がいずれの当該同族関係者が有する当該株式等に係る議決権の数も下回らない者であること。
四 当該吸収合併存続会社等が上場会社等、風俗営業会社又は資産保有型会社のいずれにも該当しないこと。
五 吸収合併の場合にあっては、当該合併効力発生日等の翌日の属する事業年度の直前の事業年度において、当該吸収合併存続会社等が資産運用型会社に該当しないこと。
六 当該吸収合併存続会社等の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないこと。
3 第一項の規定は、第二種特別贈与認定中小企業者が合併により消滅したときについて準用する。この場合において「第一種経営承継受贈者」とあるのは「第二種経営承継受贈者」と読み替えるものとする。
4 第二項の規定は、第二種特別相続認定中小企業者が合併により消滅したときについて準用する。この場合において「第一種経営承継相続人」とあるのは「第二種経営承継相続人」と読み替えるものとする。
5 第一項の規定は、第一種特例贈与認定中小企業者が合併により消滅したときについて準用する。この場合において「第一種経営承継受贈者」とあるのは「第一種特例経営承継受贈者」と読み替えるものとする。
6 第二項の規定は、第一種特例相続認定中小企業者が合併により消滅したときについて準用する。この場合において「第一種経営承継相続人」とあるのは「第一種特例経営承継相続人」と読み替えるものとする。
7 第一項の規定は、第二種特例贈与認定中小企業者が合併により消滅したときについて準用する。この場合において「第一種経営承継受贈者」とあるのは「第二種特例経営承継受贈者」と読み替えるものとする。
8 第二項の規定は、第二種特例相続認定中小企業者が合併により消滅したときについて準用する。この場合において「第一種経営承継相続人」とあるのは「第二種特例経営承継相続人」と読み替えるものとする。
9 第一種特別贈与認定中小企業者、第一種特別相続認定中小企業者、第二種特別贈与認定中小企業者、第二種特別相続認定中小企業者、第一種特例贈与認定中小企業者、第一種特例相続認定中小企業者、第二種特例贈与認定中小企業者又は第二種特例相続認定中小企業者が法第十二条第一項の認定(第六条第一項第七号から第十四号までの事由に係るものに限る。)を受けた後、その第一種経営承継受贈者、第一種経営承継相続人、第二種経営承継受贈者、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継受贈者、第一種特例経営承継相続人、第二種特例経営承継受贈者又は第二種特例経営承継相続人が前条第十項各号(前条第十一項から第十三項までの規定により準用される場合を含む。)のいずれかに該当していた場合であって、その旨を証する書類を都道府県知事に提出したときは、当該第一種経営承継受贈者、当該第一種経営承継相続人、当該第二種経営承継受贈者、当該第二種経営承継相続人、当該第一種特例経営承継受贈者、当該第一種特例経営承継相続人、当該第二種特例経営承継受贈者又は当該第二種特例経営承継相続人が吸収合併存続会社等の代表者でない場合(その代表権を制限されている者である場合を含む。)であっても、第一項第一号又は第二項第一号(第三項から前項までの規定により準用される場合を含む。)に該当するものとみなす。
10 吸収合併存続会社等が第一項ただし書の規定により第一種特別贈与認定中小企業者たる地位を承継したものとみなされた場合における前条第二項第三号の規定の適用については、「贈与の時における常時使用する従業員の数」とあるのは「贈与の時における常時使用する従業員の数に、吸収合併の場合にあっては、当該第一種特別贈与認定中小企業者及び吸収合併消滅会社(会社法第七百四十九条第一項第一号に規定する吸収合併消滅会社をいい、合併前第一種特別贈与認定中小企業者(次条第一項ただし書の規定による地位の承継前の第一種特別贈与認定中小企業者をいう。以下この条において同じ。)を除く。)の吸収合併がその効力を生ずる日の直前における常時使用する従業員の数に当該吸収合併がその効力を生ずる日から第一種贈与雇用判定期間の末日までの期間内又は第一種臨時贈与雇用判定期間の末日までの期間内に存する第一種贈与報告基準日の数を乗じてこれを第一種贈与雇用判定期間内又は第一種臨時贈与雇用判定期間内に存する第一種贈与報告基準日の数で除して計算した数を、新設合併の場合にあっては、新設合併消滅会社(会社法第七百五十三条第一項第一号に規定する新設合併消滅会社をいい、合併前第一種特別贈与認定中小企業者を除く。)の新設合併設立会社の成立の日の直前における常時使用する従業員の数に当該新設合併設立会社の成立の日から第一種贈与雇用判定期間の末日までの期間内又は第一種臨時贈与雇用判定期間の末日までの期間内に存する第一種贈与報告基準日の数を乗じてこれを第一種贈与雇用判定期間内又は第一種臨時贈与雇用判定期間内に存する第一種贈与報告基準日の数で除して計算した数を、それぞれ加えた数」と読み替えるものとする。
11 吸収合併存続会社等が第二項ただし書の規定により第一種特別相続認定中小企業者たる地位を承継したものとみなされた場合における前条第三項第三号の規定の適用については「相続の開始の時における常時使用する従業員の数」とあるのは「相続の開始の時における常時使用する従業員の数に、吸収合併の場合にあっては当該第一種特別相続認定中小企業者及び吸収合併消滅会社(会社法第七百四十九条第一項第一号に規定する吸収合併消滅会社をいい、合併前第一種特別相続認定中小企業者(次条第二項ただし書の規定による地位の承継前の第一種特別相続認定中小企業者をいう。第二十条第四項及び第五項において同じ。)を除く。)の吸収合併がその効力を生ずる日の直前における常時使用する従業員の数に当該吸収合併がその効力を生ずる日から第一種相続雇用判定期間の末日までの期間内に存する第一種相続報告基準日の数を乗じてこれを第一種相続雇用判定期間内に存する第一種相続報告基準日の数で除して計算した数を、新設合併の場合にあっては新設合併消滅会社(会社法第七百五十三条第一項第一号に規定する新設合併消滅会社をいい、合併前第一種特別相続認定中小企業者を除く。)の新設合併設立会社の成立の日の直前における常時使用する従業員の数に当該新設合併設立会社の成立の日から第一種相続雇用判定期間の末日までの期間内に存する第一種相続報告基準日の数を乗じてこれを第一種相続雇用判定期間内に存する第一種相続報告基準日の数で除して計算した数を、それぞれ加えた数」と、第六条第三項の規定による読替え後の前条第三項第三号の規定の適用については「被相続人からの贈与の時における常時使用する従業員の数」とあるのは「被相続人からの贈与の時における常時使用する従業員の数に、吸収合併の場合にあっては当該第一種特別相続認定中小企業者及び吸収合併消滅会社(会社法第七百四十九条第一項第一号に規定する吸収合併消滅会社をいい、合併前第一種特別相続認定中小企業者(次条第二項ただし書の規定による地位の承継前の第一種特別相続認定中小企業者をいう。以下この条において同じ。)を除く。)の吸収合併がその効力を生ずる日の直前における常時使用する従業員の数に当該吸収合併がその効力を生ずる日から第一種相続雇用判定期間の末日までの期間内に存する第一種相続報告基準日の数を乗じてこれを第一種相続雇用判定期間内に存する第一種相続報告基準日の数で除して計算した数を、新設合併の場合にあっては新設合併消滅会社(会社法第七百五十三条第一項第一号に規定する新設合併消滅会社をいい、合併前第一種特別相続認定中小企業者を除く。)の新設合併設立会社の成立の日の直前における常時使用する従業員の数に当該新設合併設立会社の成立の日から第一種相続雇用判定期間の末日までの期間内に存する第一種相続報告基準日の数を乗じてこれを第一種相続雇用判定期間内に存する第一種相続報告基準日の数で除して計算した数を、それぞれ加えた数」と読み替えるものとする。
12 第十項の規定は、吸収合併存続会社等が第三項の規定により読み替えられた第一項ただし書の規定により第二種特別贈与認定中小企業者たる地位を承継したものとみなされた場合において準用する。この場合において、「前条第二項第三号の規定」とあるのは「前条第四項の規定により読み替えられた同条第二項第三号の規定」と、「贈与の時における常時使用する従業員の数」とあるのは「第一種経営承継贈与の時又は第一種経営承継相続の開始の時における常時使用する従業員の数」と、「合併前第一種特別贈与認定中小企業者」とあるのは「合併前第二種特別贈与認定中小企業者」と、「次条第一項ただし書の規定」とあるのは「次条第三項の規定により読み替えられた同条第一項ただし書の規定」と、「第一種贈与雇用判定期間」とあるのは「第二種贈与雇用判定期間」と、「第一種臨時贈与雇用判定期間」とあるのは「第二種臨時贈与雇用判定期間」と、「第一種贈与報告基準日」とあるのは「当該認定に係る第一種贈与報告基準日又は第一種相続報告基準日」と読み替えるものとする。
13 第十一項の規定(第六条第六項及び前条第三項第三号に係る部分を除く。)は、吸収合併存続会社等が第四項の規定により読み替えられた第二項ただし書の規定により第二種特別相続認定中小企業者たる地位を承継したものとみなされた場合において準用する。この場合において、「前条第三項第三号」とあるのは「前条第五項の規定により読み替えられた同条第三項第三号」と、「合併前第一種特別相続認定中小企業者」とあるのは「合併前第二種特別相続認定中小企業者」と、「次条第二項ただし書の規定」とあるのは「次条第四項の規定により読み替えられた同条第二項ただし書の規定」と、「第一種相続雇用判定期間」とあるのは「第二種相続雇用判定期間」と、「第一種相続報告基準日」とあるのは「当該認定に係る第一種贈与報告基準日又は第一種相続報告基準日」と読み替えるものとする。