個人税務での勘違い防止⑦-国外転出時課税で国外転出の日から5年以内に帰国予定の場合には、還付手続きを必ず行うべきであると考えていないか?

Qシンガポールに移住する際に上場株式を1億円以上保有していたため、国外転出時課税の申告を行い、納税しています。国外転出の日から5年以内に帰国予定であり、帰国した際には還付手続を行うつもりです。国外転出時よりも当該上場株式の株価が上昇しているため、売却することも検討していますが、留意事項があれば教えてくれますか?

A国外転出時課税においては、住民税が課税されておらず、シンガポールではキャピタルゲインに課税がなされないため、日本に帰国する前に上場株式を売却する方が税負担が少なくなります。

解説
国外転出時課税で所得税を納付した場合、翌年1月1日に非居住者であれば住民税は課税されません(地方税法第32条第1項、第2項、同法第39条)。また、シンガポールはキャピタルゲインに課税がないため、シンガポール在住中に上場株式を売却しておけば、国外転出時に支払った所得税のみで課税は完了となります。
一方で、日本に帰国して還付手続きを行った場合には、国外転出時の課税がリセットされることになります。その後日本にて上場株式を売却した場合には、国外転出時点で計算された所得税と併せて住民税も課税されることになり、さらに国外転出時からの値上がり分についても、所得税及び住民税が課税されることになります。

 

地方税法第32条(所得割の課税標準)
所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。
2 前項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額は、この法律又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、それぞれ所得税法その他の所得税に関する法令の規定による所得税法第二十二条第二項又は第三項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算の例によつて算定するものとする。ただし、同法第六十条の二から第六十条の四までの規定の例によらないものとする。

 

地方税法第39条(個人の道府県民税の賦課期日)
個人の道府県民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。