個人税務での勘違い防止⑰-特別支配株主による株式売渡請求が行われた場合に、手続き面の法令違反の指摘以外に対抗手段がないと考えていないか?

Q特別支配株主による株式売渡請求が行われました。手続きが法令に違反していない場合に、少数株主が対抗する手段はありますか?

A裁判所に対して売渡株式の売買価格の決定の申立てをして、価格の争いをすることができます。

解説
売渡請求を実施された側の少数株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合、対象会社が売渡株主に対する通知若しくは事前開示手続を行う義務に違反した場合、売渡株式等の売買価格等が著しく不当である場合には、売渡株式の全部の取得をやめることの請求ができます(会社法第179条の7)(※)。
ただし、法令等に違反していない場合には、売渡株式の売買価格に不服がある売渡株主等は、株式取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対してその有する売渡株式の売買価格の決定の申立てをする権利が認められています(会社法第179条の8)。

(※)売渡株式の全部取得の無効は,訴えによってのみ主張することができることとされており、提訴期間は取得日から6か月間(対象会社が公開会社でない場合には1年間)です(会社法第846条の2)。

会社法第179条の7(売渡株式等の取得をやめることの請求)
次に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる。
一 株式売渡請求が法令に違反する場合
二 対象会社が第百七十九条の四第一項第一号(売渡株主に対する通知に係る部分に限る。)又は第百七十九条の五の規定に違反した場合
三 第百七十九条の二第一項第二号又は第三号に掲げる事項が対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合
2 次に掲げる場合において、売渡新株予約権者が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡新株予約権者は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる。
一 新株予約権売渡請求が法令に違反する場合
二 対象会社が第百七十九条の四第一項第一号(売渡新株予約権者に対する通知に係る部分に限る。)又は第百七十九条の五の規定に違反した場合
三 第百七十九条の二第一項第四号ロ又はハに掲げる事項が対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合

 

会社法第179条の8(売買価格の決定の申立て)
株式等売渡請求があった場合には、売渡株主等は、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができる。
2 特別支配株主は、裁判所の決定した売買価格に対する取得日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
3 特別支配株主は、売渡株式等の売買価格の決定があるまでは、売渡株主等に対し、当該特別支配株主が公正な売買価格と認める額を支払うことができる。

 

会社法第846条の2(売渡株式等の取得の無効の訴え)
株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日(第百七十九条の二第一項第五号に規定する取得日をいう。以下この条において同じ。)から六箇月以内(対象会社が公開会社でない場合にあっては、当該取得日から一年以内)に、訴えをもってのみ主張することができる。
2 前項の訴え(以下この節において「売渡株式等の取得の無効の訴え」という。)は、次に掲げる者に限り、提起することができる。
一 取得日において売渡株主(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求がされた場合にあっては、売渡株主又は売渡新株予約権者。第八百四十六条の五第一項において同じ。)であった者
二 取得日において対象会社の取締役(監査役設置会社にあっては取締役又は監査役、指名委員会等設置会社にあっては取締役又は執行役。以下この号において同じ。)であった者又は対象会社の取締役若しくは清算人