個人税務での勘違い防止⑱-特別支配株主による株式売渡請求を行う際の90%判定は発行済株式割合と考えていないか?

Q特別支配株主による株式売渡請求を行うため、株式集約を行っています。当該制度のメリットや留意点はありますか?

A特別支配株主から売渡請求通知を受けた対象会社が、取締役会決議によりスクイーズアウトを実行できる点が最大のメリットです。留意点としては、特別支配株主となるためには議決権ベースで90%以上必要である点と、スクイーズアウトされる少数株主が、裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができる点です。

解説
特別支配株主(議決権の90%以上保有)は、他の株主全員に対して保有株式を売り渡すことを請求することができます(会社法第179条)。また、特別支配株主から売渡請求を受けた対象会社は、取締役会にて承認決議を行うことになります(会社法第179条の3)。当該手続きを行ったとしても、スクイーズアウトされる少数株主は裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができるため(会社法第179条の8)、設定価格で買い取れるかは分かりません。

 

会社法第179条(株式等売渡請求)
株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第一項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
2 特別支配株主は、前項の規定による請求(以下この章及び第八百四十六条の二第二項第一号において「株式売渡請求」という。)をするときは、併せて、その株式売渡請求に係る株式を発行している株式会社(以下「対象会社」という。)の新株予約権の新株予約権者(対象会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
3 特別支配株主は、新株予約権付社債に付された新株予約権について前項の規定による請求(以下「新株予約権売渡請求」という。)をするときは、併せて、新株予約権付社債についての社債の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は、この限りでない。

 

会社法第179条の2(株式等売渡請求の方法)
株式売渡請求は、次に掲げる事項を定めてしなければならない。
一 特別支配株主完全子法人に対して株式売渡請求をしないこととするときは、その旨及び当該特別支配株主完全子法人の名称
二 株式売渡請求によりその有する対象会社の株式を売り渡す株主(以下「売渡株主」という。)に対して当該株式(以下この章において「売渡株式」という。)の対価として交付する金銭の額又はその算定方法
三 売渡株主に対する前号の金銭の割当てに関する事項
四 株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求(その新株予約権売渡請求に係る新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合における前条第三項の規定による請求を含む。以下同じ。)をするときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 特別支配株主完全子法人に対して新株予約権売渡請求をしないこととするときは、その旨及び当該特別支配株主完全子法人の名称
ロ 新株予約権売渡請求によりその有する対象会社の新株予約権を売り渡す新株予約権者(以下「売渡新株予約権者」という。)に対して当該新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合において、前条第三項の規定による請求をするときは、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この編において「売渡新株予約権」という。)の対価として交付する金銭の額又はその算定方法
ハ 売渡新株予約権者に対するロの金銭の割当てに関する事項
五 特別支配株主が売渡株式(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、売渡株式及び売渡新株予約権。以下「売渡株式等」という。)を取得する日(以下この節において「取得日」という。)
六 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 対象会社が種類株式発行会社である場合には、特別支配株主は、対象会社の発行する種類の株式の内容に応じ、前項第三号に掲げる事項として、同項第二号の金銭の割当てについて売渡株式の種類ごとに異なる取扱いを行う旨及び当該異なる取扱いの内容を定めることができる。
3 第一項第三号に掲げる事項についての定めは、売渡株主の有する売渡株式の数(前項に規定する定めがある場合にあっては、各種類の売渡株式の数)に応じて金銭を交付することを内容とするものでなければならない。

 

会社法第179条の3(対象会社の承認)
特別支配株主は、株式売渡請求(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、株式売渡請求及び新株予約権売渡請求。以下「株式等売渡請求」という。)をしようとするときは、対象会社に対し、その旨及び前条第一項各号に掲げる事項を通知し、その承認を受けなければならない。
2 対象会社は、特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をしようとするときは、新株予約権売渡請求のみを承認することはできない。
3 取締役会設置会社が第一項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。
4 対象会社は、第一項の承認をするか否かの決定をしたときは、特別支配株主に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。

 

会社法第179条の8(売買価格の決定の申立て)
株式等売渡請求があった場合には、売渡株主等は、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができる。
2 特別支配株主は、裁判所の決定した売買価格に対する取得日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
3 特別支配株主は、売渡株式等の売買価格の決定があるまでは、売渡株主等に対し、当該特別支配株主が公正な売買価格と認める額を支払うことができる。