個人税務での勘違い防止⑲-相続により取得した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合のみなし配当課税の特例適用について見逃している点はないか?

Q相続により取得した非上場株式を、相続税の申告期限から3年以内に発行会社へ譲渡すればみなし配当課税は行われず、譲渡益課税となると聞きました。留意事項はありますか?

A相続税が課税された人にのみ特例の適用があります。適用にあたり、譲渡者は発行法人へ届出書を提出する必要があり、発行法人は当該届出書の税務署への提出、及びその写しを作成して5年間保存する義務があります。

解説
個人が株式を発行会社に譲渡して、発行会社から対価を受けた場合、その交付を受けた金銭の額が発行会社の資本金等の額のうち、その交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当所得とみなされて所得税が課税されます。
しかし、相続又は遺贈により財産を取得して相続税を課税された人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税の対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合においては、発行会社から交付を受ける金銭の全額が株式の譲渡所得に係る収入金額とされます(租税特別措置法第9条の7)。

特例の適用を受ける場合には、譲渡者は非上場株式をその発行会社に譲渡する日までに届出書を作成のうえ、非上場株式の発行会社に提出する必要があります。当該発行会社は譲り受けた日の属する年の翌年1月31日までに本店又は主たる事務所の所轄税務署長に提出します(租税特別措置法施行令第5条の2)。なお、当該発行会社はこの届出書の写しを作成し、5年間保存しなければなりません(租税特別措置法施行規則第5条の5)。

 

租税特別措置法第9条の7
(相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例)
相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下この項において同じ。)による財産の取得(相続税法又は第七十条の七の三若しくは第七十条の七の七の規定により相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む。)をした個人で当該相続又は遺贈につき同法の規定により納付すべき相続税額があるものが、当該相続の開始があつた日の翌日から当該相続に係る同法第二十七条第一項又は第二十九条第一項の規定による申告書(これらの申告書の提出後において同法第四条第一項に規定する事由が生じたことにより取得した資産については、当該取得に係る同法第三十一条第二項の規定による申告書)の提出期限の翌日以後三年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格(同法第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により当該課税価格とみなされた金額)の計算の基礎に算入された金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式その他これに類するものとして政令で定める株式を発行した株式会社以外の株式会社(以下この項において「非上場会社」という。)の発行した株式をその発行した当該非上場会社に譲渡した場合において、当該譲渡をした個人が当該譲渡の対価として当該非上場会社から交付を受けた金銭の額が当該非上場会社の法人税法第二条第十六号に規定する資本金等の額又は同条第十七号の二に規定する連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となつた株式に係る所得税法第二十五条第一項に規定する株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額については、同項の規定は、適用しない。
2 前項の規定の適用がある場合における第三十七条の十第三項及び第三十七条の十二第二項の規定の適用については、これらの規定中「の金額」とあるのは、「の金額(第九条の七第一項の規定の適用を受ける金額を除く。)」とする。
3 第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

租税特別措置法施行令第5条の2(相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例)
法第九条の七第一項に規定する政令で定める株式は、店頭売買登録銘柄(株式で、金融商品取引法第二条第十三項に規定する認可金融商品取引業協会が、その定める規則に従い、その店頭売買につき、その売買価格を発表し、かつ、当該株式の発行法人に関する資料を公開するものとして登録したものをいう。)として登録された株式とする。
2 法第九条の七第一項の規定の適用を受けようとする個人は、同項に規定する非上場会社(以下この条において「非上場会社」という。)の発行した株式であつて同項に規定する相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入されたもの(以下この項及び次項において「課税価格算入株式」という。)を当該非上場会社に譲渡する時までに、その適用を受ける旨及び次に掲げる事項を記載した書面を、当該非上場会社を経由して当該非上場会社の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。
一 その適用を受けようとする者の氏名、住所又は居所及び個人番号(個人番号を有しない者にあつては、氏名及び住所又は居所)並びにその者の被相続人の氏名及び死亡の時における住所又は居所並びに死亡年月日
二 法第九条の七第一項の納付すべき相続税額又はその見積額
三 課税価格算入株式の数及び当該課税価格算入株式のうち当該非上場会社に譲渡をしようとするものの数
四 その他参考となるべき事項
3 前項の書面の提出を受けた非上場会社は、課税価格算入株式を譲り受けた場合には、当該譲り受けた課税価格算入株式の数及び一株当たりの譲受けの対価の額並びに当該課税価格算入株式を譲り受けた年月日を記載した書類を、当該譲り受けた日の属する年の翌年一月三十一日までに、同項の書面とあわせて同項の税務署長に提出しなければならない。
4 第二項の非上場会社は、財務省令で定めるところにより、同項の書面及び前項の書類の写しを作成し、これを保存しなければならない。
5 第二項の場合において、同項の書面が同項の非上場会社に受理されたときは、当該書面は、その受理された時に同項の税務署長に提出されたものとみなす。

 

租税特別措置法施行規則第5条の5(非上場会社における書面等の写しの作成及び保存)
法第九条の七第一項に規定する非上場会社(次項において「非上場会社」という。)は、同条第一項の規定の適用を受けようとする個人から提出された施行令第五条の二第二項に規定する書面を受理した場合又は同条第三項に規定する書類を提出する場合には、当該書面又は書類の写しを作成しなければならない。
2 非上場会社は、前項の規定により作成した同項の書面又は書類の写しを各人別に整理し、施行令第五条の二第三項の規定により当該書面又は書類を提出した日の属する年の翌年から五年間保存しなければならない。