組織再編税制②-株式移転直後に株式移転完全子法人から株式移転完全親法人に剰余金の配当をする場合の受取配当等の益金不算入制度の留意点を見逃していないか?

Q株式移転直後に株式移転完全子法人から株式移転完全親法人に剰余金の配当を実施するつもりです。株式移転前に株式移転完全子法人とその株主との間に完全支配関係がない場合に、配当課税に関する留意点はありますか?

A受取配当等の益金不算入割合が50%となり課税が生じます。

解説
受取配当等の益金不算入制度の適用において、配当の計算期間の中途で株式移転を行なった場合には、原則として完全子法人株式に該当しません(法人税法施行令第22条の2)。したがって、株式移転直後に株式移転完全子法人から剰余金の配当を実施する場合には、完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等に該当するため、益金不算入割合は50%となります(法人税法第23条第1項)。
例えば、株式移転完全子法人が保有する子会社株式を適格現物分配により株式移転完全親法人の直下(株式移転完全子法人の兄弟会社)にするグループ体系を検討している場合には、当該適格現物分配に課税は生じず、当該適格現物分配の支払に係る基準日の翌日を完全子法人株式の判定に係る起算日とすることができるため(法人税法施行令第22条の2第2項)、その後に行う株式移転完全子法人から株式移転完全親法人への剰余金の配当は完全子法人株式に該当するため、全額益金不算入となります。

 

法人税法施行令第22条の2(完全子法人株式等の範囲)
法第二十三条第五項(受取配当等の益金不算入)に規定する政令で定めるものは、同条第一項に規定する配当等の額(以下この条において「配当等の額」という。)の計算期間の初日から当該計算期間の末日まで継続して法第二十三条第五項の内国法人とその支払を受ける配当等の額を支払う他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)との間に完全支配関係があつた場合(当該内国法人が当該計算期間の中途において当該他の内国法人との間に完全支配関係を有することとなつた場合において、当該計算期間の初日から当該完全支配関係を有することとなつた日まで継続して当該他の内国法人と他の者との間に当該他の者による完全支配関係があり、かつ、同日から当該計算期間の末日まで継続して当該内国法人と当該他の者との間及び当該他の内国法人と当該他の者との間に当該他の者による完全支配関係があつたときを含む。)の当該他の内国法人の株式等(その支払を受ける配当等の額が法第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額であるときは、当該金額の支払に係る効力が生ずる日(法第二十四条第三項の規定により交付を受けたものとみなされる同項の株式の価額のうち同条第一項の規定により法第二十三条第一項第一号に掲げる金額とみなされる金額にあつては、法第二十四条第三項の合併又は分割型分割の日。以下第二十二条の三の二までにおいて同じ。)の前日において当該内国法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があつた場合の当該他の内国法人の株式等)とする。
2 前項に規定する計算期間とは、その配当等の額の支払を受ける直前に当該配当等の額を支払う他の内国法人により支払われた配当等の額(適格現物分配に係るものを含む。)の支払に係る基準日(法第二十四条第三項の規定により交付を受けたものとみなされる同項の株式の価額のうち同条第一項の規定により法第二十三条第一項第一号に掲げる金額とみなされる金額にあつては、法第二十四条第三項の合併又は分割型分割の日。以下第二十三条までにおいて同じ。)の翌日(次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日)からその支払を受ける配当等の額の支払に係る基準日までの期間をいう。
一 当該翌日がその支払を受ける配当等の額の支払に係る基準日から起算して一年前の日以前の日である場合又はその支払を受ける配当等の額が当該一年前の日以前に設立された他の内国法人からその設立の日以後最初に支払われる配当等の額である場合(第三号に掲げる場合を除く。) 当該一年前の日の翌日
二 その支払を受ける配当等の額がその支払に係る基準日以前一年以内に設立された他の内国法人からその設立の日以後最初に支払われる配当等の額である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該設立の日
三 その支払を受ける配当等の額がその配当等の額の元本である株式等を発行した他の内国法人からその支払に係る基準日以前一年以内に取得したその元本である株式等につきその取得の日以後最初に支払われる配当等の額である場合 当該取得の日
3 内国法人が当該内国法人を合併法人とする適格合併(当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を被合併法人とするものを除く。)により当該適格合併に係る被合併法人から配当等の額の元本である当該被合併法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の株式等の移転を受けた場合において、当該適格合併が当該配当等の額の前項に規定する計算期間の末日の翌日から当該配当等の額の支払に係る効力が生ずる日までの間に行われたものであるときは、第一項の規定の適用については、当該被合併法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があつた期間は、当該内国法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があつたものとみなす。

 

法人税法第23条(受取配当等の益金不算入)
内国法人が次に掲げる金額(第一号に掲げる金額にあつては、外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるもの及び適格現物分配に係るものを除く。以下この条において「配当等の額」という。)を受けるときは、その配当等の額(完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の五十に相当する金額とし、非支配目的株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の二十に相当する金額とする。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
一 剰余金の配当(株式等に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額
二 投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として財務省令で定めるもの(第二十四条第一項第四号(配当等の額とみなす金額)において「出資等減少分配」という。)を除く。)の額
三 資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配の額
2 前項の規定は、内国法人がその受ける配当等の額(第二十四条第一項の規定により、その内国法人が受ける配当等の額とみなされる金額を除く。以下この項において同じ。)の元本である株式等をその配当等の額の支払に係る基準日以前一月以内に取得し、かつ、当該株式等又は当該株式等と銘柄を同じくする株式等を当該基準日後二月以内に譲渡した場合におけるその譲渡した株式等のうち政令で定めるものの配当等の額については、適用しない。
3 第一項の規定は、内国法人がその受ける配当等の額(第二十四条第一項(第五号に係る部分に限る。)の規定により、その内国法人が受ける配当等の額とみなされる金額に限る。以下この項において同じ。)の元本である株式等でその配当等の額の生ずる基因となる同号に掲げる事由が生ずることが予定されているものの取得(適格合併又は適格分割型分割による引継ぎを含む。)をした場合におけるその取得をした株式等に係る配当等の額(その予定されていた事由(第六十一条の二第十七項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)の規定の適用があるものを除く。)に基因するものとして政令で定めるものに限る。)については、適用しない。
4 第一項の場合において、同項の内国法人が当該事業年度において支払う負債の利子(これに準ずるものとして政令で定めるものを含むものとし、当該内国法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に支払うものを除く。)があるときは、当該内国法人が受ける関連法人株式等に係る配当等の額について同項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入しない金額は、同項の規定にかかわらず、その保有する関連法人株式等につき当該事業年度において受ける配当等の額の合計額から当該負債の利子の額のうち当該関連法人株式等に係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額とする。
5 第一項に規定する完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係があつた他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の株式等として政令で定めるものをいう。
6 第一項及び第四項に規定する関連法人株式等とは、内国法人が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(前項に規定する完全子法人株式等を除く。)をいう。
7 第一項に規定する非支配目的株式等とは、内国法人が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の百分の五以下に相当する数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(第五項に規定する完全子法人株式等を除く。)をいう。
8 第一項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。
9 適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により株式等の移転が行われた場合における第一項及び第二項の規定の適用その他第一項から第七項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。