組織再編税制⑩-譲渡損益調整資産の対象となった株式について、当該株式の発行会社が合併により消滅する場合の留意点を見逃していないか?

Q 100%子会社株式をグループ会社へ譲渡しました。グループ法人税制の適用により、株式にかかる譲渡損益は繰り延べとなりました。当該株式の発行会社が合併により消滅することになりましたが、繰延譲渡損益は実現しますか?

A 実現します。

解説
譲渡損益調整資産が株式の場合において、当該株式の発行会社を被合併法人とする合併が行われた場合には、適格組織再編であっても、非適格組織再編であっても、株式の発行法人が消滅するため、譲渡法人において繰り延べられた譲渡損益は取り崩されて譲渡損益が実現します。本ケースは法人税法上、繰り延べられた譲渡損益の実現事由となってはいませんが(法人税法第61条の13第2項、同条第3項、法人税法施行令第122条の14第4項第2号、第5号、第8号)、適格組織再編の場合における繰り延べ規定が存在しないため、譲渡損益は実現することになります。

 

国税庁HP 文書解答事例 グループ法人税制における譲渡損益の実現事由について
https://www.nta.go.jp/about/organization/sapporo/bunshokaito/hojin/120803/besshi.htm

 

第六目 完全支配関係がある法人の間の取引の損益
法人税法第61条の13第2項、同条第3項
2 内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき前項の規定の適用を受けた場合において、その譲渡を受けた法人(以下この条において「譲受法人」という。)において当該譲渡損益調整資産の譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却その他の政令で定める事由が生じたときは、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該内国法人の各事業年度(当該譲渡利益額又は譲渡損失額につき次項又は第四項の規定の適用を受ける事業年度以後の事業年度を除く。)の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
3 内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき第一項の規定の適用を受けた場合(当該譲渡損益調整資産の適格合併に該当しない合併による合併法人への移転により同項の規定の適用を受けた場合を除く。)において、当該内国法人が当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなつたとき(次に掲げる事由に基因して完全支配関係を有しないこととなつた場合を除く。)は、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(その有しないこととなつた日の前日の属する事業年度前の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額を除く。)は、当該内国法人の当該前日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 当該内国法人の適格合併(合併法人(法人を設立する適格合併にあつては、他の被合併法人の全て。次号において同じ。)が当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る。)による解散
二 当該譲受法人の適格合併(合併法人が当該譲受法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る。)による解散

 

第六目 完全支配関係がある法人の間の取引の損益
法人税法施行令第122条の14第4項第2号、第5号、第8号
4 法第六十一条の十三第二項に規定する政令で定める事由は、次の各号に掲げる事由(同条第六項の規定の適用があるものを除く。)とし、内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額(同条第一項に規定する譲渡損失額をいう。以下この条において同じ。)につき法第六十一条の十三第一項の規定の適用を受けた場合において、当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人(同条第二項に規定する譲受法人をいう。以下この条において同じ。)において当該事由が生じたときは、当該各号に掲げる事由の区分に応じ当該各号に定める金額(当該各号に定める金額と当該譲渡利益額又は譲渡損失額に係る調整済額とを合計した金額が当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)は、当該事由が生じた日の属する当該譲受法人の事業年度又は連結事業年度終了の日の属する当該内国法人の事業年度(当該譲渡損益調整資産につき法第六十一条の十三第三項又は第四項の規定の適用を受ける事業年度以後の事業年度を除く。)の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 次に掲げる事由 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額
イ 当該譲渡損益調整資産の譲渡、貸倒れ、除却その他これらに類する事由(次号から第八号までに掲げる事由を除く。)
ロ 当該譲渡損益調整資産の適格分割型分割による分割承継法人への移転
ハ 普通法人又は協同組合等である当該譲受法人が公益法人等に該当することとなつたこと。
二 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において、法第二十五条第二項(資産の評価益の益金不算入等)に規定する評価換えによりその帳簿価額を増額され、その増額された部分の金額が益金の額に算入されたこと又は同条第三項に規定する資産に該当し、当該譲渡損益調整資産の同項に規定する評価益の額として政令で定める金額が益金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額
三 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において減価償却資産に該当し、その償却費が損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額に、当該譲受法人における当該譲渡損益調整資産の取得価額のうちに当該損金の額に算入された金額の占める割合を乗じて計算した金額
四 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において繰延資産に該当し、その償却費が損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額に、当該譲受法人における当該譲渡損益調整資産の額のうちに当該損金の額に算入された金額の占める割合を乗じて計算した金額
五 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において、法第三十三条第二項(資産の評価損の損金不算入等)に規定する評価換えによりその帳簿価額を減額され、当該譲渡損益調整資産の同項に規定する差額に達するまでの金額が損金の額に算入されたこと、同条第三項に規定する評価換えによりその帳簿価額を減額され、その減額された部分の金額が損金の額に算入されたこと又は同条第四項に規定する資産に該当し、当該譲渡損益調整資産の同項に規定する評価損の額として政令で定める金額が損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額
六 有価証券である当該譲渡損益調整資産と銘柄を同じくする有価証券(売買目的有価証券を除く。)の譲渡(当該譲受法人が取得した当該銘柄を同じくする有価証券である譲渡損益調整資産の数に達するまでの譲渡に限る。) 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額のうちその譲渡をした数に対応する部分の金額
七 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において第百十九条の十四(償還有価証券の帳簿価額の調整)に規定する償還有価証券(以下この号において「償還有価証券」という。)に該当し、当該譲渡損益調整資産につき第百三十九条の二第一項(償還有価証券の調整差益又は調整差損の益金又は損金算入)に規定する調整差益又は調整差損が益金の額又は損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(既にこの号に掲げる事由が生じたことによる調整済額がある場合には、当該調整済額を控除した金額)に、当該内国法人の当該事業年度開始の日から当該償還有価証券の償還日までの期間の日数のうちに当該内国法人の当該事業年度の日数の占める割合を乗じて計算した金額
八 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において法第六十一条の十一第一項(連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益)に規定する時価評価資産に該当し、当該譲渡損益調整資産につき同項に規定する評価益又は評価損が益金の額又は損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額