組織再編税制⑰-支配関係にかかる適格合併の要件である従業者の継続につき、見逃していることはないか?
Q支配関係にかかる適格合併の要件である従業者の継続要件について教えてくれますか?
A従業者には役員も従業員も含まれ、合併後に合併法人の別事業に従事しても構いません。また、被合併法人で退職し、合併法人で再雇用する場合でも引継ぎが認められる可能性があります。
解説
支配関係にかかる適格合併要件の一つに、被合併法人の合併直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれている必要があります(法人税法第2条12の8ロ(1))。「従業者」とは、雇用契約があるかどうかといった雇用形態のいかんに関わらず、役員、使用人その他の者で、被合併法人の合併前に営む事業に現に従事する者のすべてが含まれます。ただし、日雇い者で従事した日ごとに給与等の支払を受ける者について、法人が従業者の数に含めないこととしている場合は除くことができます(法人税基本通達1−4−4)。なお、合併後に被合併法人で行なっていた事業に従事せずとも、合併法人の別の事業に従事するのでも構いません(法人税基本通達1−4−9)。被合併法人で退職し、合併法人で再雇用する場合でも認められるケースがあります。
法人税基本通達1-4-4(従業者の範囲)
法第2条第12号の8ロ(1)若しくは令第4条の3第4項第3号《適格合併の要件》、法第2条第12号の11ロ(2)若しくは令第4条の3第8項第4号若しくは第9項第4号《適格分割の要件》、法第2条第12号の14ロ(2)若しくは令第4条の3第15項第4号《適格現物出資の要件》、同条第16項第3号《適格株式分配の要件》、法第2条第12号の17ロ(1)若しくは令第4条の3第20項第3号《適格株式交換等の要件》又は法第2条第12号の18ロ(1)若しくは令第4条の3第24項第3号《適格株式移転の要件》に規定する「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併、分割、現物出資、株式分配、株式交換等又は株式移転の直前において被合併法人の合併前に行う事業、分割事業(同条第8項第1号に規定する分割事業をいう。以下この節において同じ。)、現物出資事業(同条第15項第1号に規定する現物出資事業をいう。以下この節において同じ。)、完全子法人(法第2条第12号の15の2《株式分配》に規定する完全子法人をいう。以下1-4-4において同じ。)の事業、株式交換等完全子法人の事業又はそれぞれの株式移転完全子法人の事業に現に従事する者をいうものとする。ただし、これらの事業に従事する者であっても、例えば、日々雇い入れられる者で従事した日ごとに給与等の支払を受ける者について、法人が従業者の数に含めないこととしている場合は、これを認める。
令第4条の3第4項第2号、第8項第2号、第15項第2号、第20項第2号又は第24項第2号《共同事業要件》の従業者の範囲についても、同様とする。(平14年課法2-1「三」により追加、平19年課法2-3「五」、平19年課法2-17「二」、平22年課法2-1「五」、平28年課法2-11「一」、平29年課法2-17「四」、平30年課法2-12「一」により改正)
(注)
1 出向により受け入れている者等であっても、被合併法人の合併前に行う事業、分割事業、現物出資事業、完全子法人の事業、株式交換等完全子法人の事業又はそれぞれの株式移転完全子法人の事業に現に従事する者であれば従業者に含まれることに留意する。
2 下請先の従業員は、例えば自己の工場内でその業務の特定部分を継続的に請け負っている企業の従業員であっても、従業者には該当しない。
3 分割事業又は現物出資事業とその他の事業とのいずれにも従事している者については、主として当該分割事業又は現物出資事業に従事しているかどうかにより判定する。
法人税基本通達1-4-9(従業者が従事することが見込まれる業務)
法第2条第12号の8ロ(1)《適格合併》に規定する「合併法人の業務」、同条第12号の11ロ(2)《適格分割》に規定する「分割承継法人の業務」又は同条第12号の14ロ(2)《適格現物出資》に規定する「被現物出資法人の業務」は、合併により移転した事業、分割事業又は現物出資事業に限らないことに留意する。
令第4条の3第4項第3号《適格合併の要件》、第8項第4号若しくは第9項第4号《適格分割の要件》又は第15項第4号《適格現物出資の要件》の判定についても、同様とする。(平14年課法2-1「三」により追加、平19年課法2-17「二」、平22年課法2-1「五」、平28年課法2-11「一」、平29年課法2-17「四」により改正)
十二の八 適格合併 次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人又は合併親法人(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係がある法人をいう。)のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当等(株式又は出資に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう。)として交付される金銭その他の資産、合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産及び合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等の総数又は総額の三分の二以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。