組織再編税制㉒-適格合併におけるみなし共同事業要件の一つである特定役員引継要件につき、見逃していることはないか?
Q適格合併における共同事業要件の一つである特定役員引継要件を教えてくれますか?
A合併法人又は被合併法人のいずれかの特定役員が合併後に勤務すればよく、また、通常の任期満了まで勤めることで要件を充足できます。なお、特定役員とは法人の経営に従事している者をいいます。
解説
特定役員引継要件を充足するためには、合併前の被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかが、合併後に合併法人の特定役員になることが見込まれている必要があります(法人税法施行令第112条第3項第5号、第10項)。特定役員が合併後にいつまで就任している必要があるのかですが、通常の任期満了まで勤めればよいと考えます。
特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役またはこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます。
法人税法施行令第112条第3項第5号
3 法第五十七条第三項に規定する政令で定めるものは、適格合併のうち、第一号から第四号までに掲げる要件又は第一号及び第五号に掲げる要件に該当するものとする。
一 適格合併に係る被合併法人の被合併事業(当該被合併法人の当該適格合併の前に行う主要な事業のうちのいずれかの事業をいう。以下第三号までにおいて同じ。)と当該適格合併に係る合併法人(当該合併法人が当該適格合併により設立された法人である場合にあつては、当該適格合併に係る他の被合併法人。以下この項において同じ。)の合併事業(当該合併法人の当該適格合併の前に行う事業(当該合併法人が当該適格合併により設立された法人である場合にあつては、当該適格合併に係る他の被合併法人の被合併事業)のうちのいずれかの事業をいう。次号及び第四号において同じ。)とが相互に関連するものであること。
二 被合併事業と合併事業(当該被合併事業と関連する事業に限る。以下この号及び第四号において同じ。)のそれぞれの売上金額、当該被合併事業と当該合併事業のそれぞれの従業者の数、適格合併に係る被合併法人と合併法人のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額又はこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと。
三 被合併事業が当該適格合併に係る被合併法人と合併法人との間に最後に支配関係があることとなつた時(当該被合併法人がその時から当該適格合併の直前の時までの間に当該被合併法人を合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人(次号において「合併法人等」という。)とする適格合併、適格分割又は適格現物出資(以下この号及び次号において「適格合併等」という。)により被合併事業の全部又は一部の移転を受けている場合には、当該適格合併等の時。以下この号において「被合併法人支配関係発生時」という。)から当該適格合併の直前の時まで継続して行われており、かつ、当該被合併法人支配関係発生時と当該適格合併の直前の時における当該被合併事業の規模(前号に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね二倍を超えないこと。
四 合併事業が当該適格合併に係る合併法人と被合併法人との間に最後に支配関係があることとなつた時(当該合併法人がその時から当該適格合併の直前の時までの間に当該合併法人を合併法人等とする適格合併等により合併事業の全部又は一部の移転を受けている場合には、当該適格合併等の時。以下この号において「合併法人支配関係発生時」という。)から当該適格合併の直前の時まで継続して行われており、かつ、当該合併法人支配関係発生時と当該適格合併の直前の時における当該合併事業の規模(第二号に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね二倍を超えないこと。
五 適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の前における特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この号において同じ。)である者のいずれかの者(当該被合併法人が当該適格合併に係る合併法人と最後に支配関係があることとなつた日前(当該支配関係が当該被合併法人となる法人又は当該合併法人となる法人の設立により生じたものである場合には、同日。以下この号において同じ。)において当該被合併法人の役員又は当該これらに準ずる者(同日において当該被合併法人の経営に従事していた者に限る。)であつた者に限る。)と当該合併法人の当該適格合併の前における特定役員である者のいずれかの者(当該最後に支配関係があることとなつた日前において当該合併法人の役員又は当該これらに準ずる者(同日において当該合併法人の経営に従事していた者に限る。)であつた者に限る。)とが当該適格合併の後に当該合併法人(当該適格合併が法人を設立するものである場合には、当該適格合併により設立された法人)の特定役員となることが見込まれていること。
法人税法施行令第112条第10項
10 第三項の規定は、法第五十七条第四項に規定する政令で定める適格組織再編成等について準用する。この場合において、第三項中「適格合併のうち」とあるのは「同条第四項に規定する適格組織再編成等(適格現物分配を除く。以下この項において同じ。)のうち」と、同項第一号中「適格合併に係る被合併法人」とあるのは「適格合併(当該適格組織再編成等が適格合併に該当しない合併、適格分割又は適格現物出資である場合には、当該合併、適格分割又は適格現物出資。以下この項において同じ。)に係る被合併法人(当該適格組織再編成等が適格分割又は適格現物出資である場合には、分割法人又は現物出資法人。以下この項において同じ。)」と、「事業をいう。以下」とあるのは「事業をいい、当該適格組織再編成等が適格分割又は適格現物出資である場合には当該分割法人の当該適格組織再編成等に係る法第二条第十二号の十一ロ(1)(定義)に規定する分割事業又は当該現物出資法人の当該適格組織再編成等に係る同条第十二号の十四ロ(1)に規定する現物出資事業とする。以下」と、「合併法人(当該合併法人」とあるのは「合併法人(当該適格組織再編成等が適格分割又は適格現物出資である場合には分割承継法人又は被現物出資法人とし、当該合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人」と、同項第二号中「規模」とあるのは「規模(適格分割又は適格現物出資にあつては、被合併事業と合併事業のそれぞれの売上金額、当該被合併事業と当該合併事業のそれぞれの従業者の数又はこれらに準ずるものの規模)」と、同項第五号中「特定役員(社長」とあるのは「特定役員等(合併にあつては社長」と、「者をいう。以下この号において同じ。)」とあるのは「者(以下この号において「特定役員」という。)をいい、適格分割又は適格現物出資にあつては役員又は当該これらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。)」と読み替えるものとする。
法人税基本通達逐条解説
1-4-7 令第4条の2第3項第2号《適格合併に係る共同事業要件》に規定する「これらに準ずる者」とは、役員又は役員以外の者で、社長、副社長、代表取締役、専務取締役又は常務取締役と同等に法人の経営の中枢に参画している者をいう。
(注) 専務取締役及び常務取締役の意義については9-2-1の3による。
【解説】
(1) 共同で事業を営むための合併として適格合併に該当するかどうかの要件として、事業規模が5倍を超えないこと又は被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが合併後に合併法人の特定役員となることが見込まれていることという要件がある。
特定役員とは、法令上、「社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者」をいうが、本通達では、この場合の「これらに準ずる者」について明らかにしている。
すなわち、「これらに準ずる者」とは常務取締役以上に準ずることとされていることから、これらの者と同等に法人の経営の中枢に参画している者をいう。
最近、企業においていわゆるCEOやCOO(一般的には最高経営責任者、最高執行責任者と訳される)と称される者で会長や社長と同等に経営に従事している者が見受けられる。これらの者が商事法上の役員とされている場合には特定役員に該当することに特段の疑問は生じないと思われるが、 商事法上の役員とされていない場合であっても、本通達でいう「これらに準ずる者」に該当し特定役員となる。
なお、特定役員は、法令上、役員に限らないこととされているが、法人の経営の中枢に参画していることから、 通常は、法人税法施行令第7条に規定するみなし役員に該当するものと考えられる。
また、この要件を満たすことのみを目的として形式的に短期間だけ常務取締役に就任するようなことは許されないことはいうまでもない。
(2) なお、特定役員に該当する専務取締役又は常務取締役とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により専務取締役等として職制上の地位が付与された役員をいう。このことを、本通達の(注)で明らかにしている。