組織再編税制㉓-適格合併におけるみなし共同事業要件(共同事業要件)の一つである事業規模要件につき、見逃していることはないか?

Q適格合併における共同事業要件の一つである事業規模要件を教えてくれますか?

A売上金額、従業者の数、資本金の額及びこれらに準ずるもののうち、いずれか一つがおおむね5倍以内であれば要件を充足します。

解説
被合併事業とそれに関連する合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、被合併法人と合併法人のそれぞれの資本金の額、又はこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えない必要があります(法人税法施行令第112条第3項第2号、同条第10項)。
売上金額については、通常合併の直前期の売上金額により判定します(法人税基本通達1−4−6)。従業者の数は合併の直前における従業者の数により判定します。資本金の額も合併の直前における資本金の額で判定します。これらに準ずるものの規模としては、金融機関における預金量等が例示され(法人税基本通達1−4−6)、客観的・外形的にその事業の規模を表すものと認められる指標であれば認められることとされています(法人税基本通達1−4−6)

 

法人税法施行令第112条第3項第2号(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)

3 法第五十七条第三項に規定する政令で定めるものは、適格合併のうち、第一号から第四号までに掲げる要件又は第一号及び第五号に掲げる要件に該当するものとする。

二 被合併事業と合併事業(当該被合併事業と関連する事業に限る。以下この号及び第四号において同じ。)のそれぞれの売上金額、当該被合併事業と当該合併事業のそれぞれの従業者の数、適格合併に係る被合併法人と合併法人のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額又はこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと。

 

法人税法施行令第112条第10項(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)

10 第三項の規定は、法第五十七条第四項に規定する政令で定める適格組織再編成等について準用する。この場合において、第三項中「適格合併のうち」とあるのは「同条第四項に規定する適格組織再編成等(適格現物分配を除く。以下この項において同じ。)のうち」と、同項第一号中「適格合併に係る被合併法人」とあるのは「適格合併(当該適格組織再編成等が適格合併に該当しない合併、適格分割又は適格現物出資である場合には、当該合併、適格分割又は適格現物出資。以下この項において同じ。)に係る被合併法人(当該適格組織再編成等が適格分割又は適格現物出資である場合には、分割法人又は現物出資法人。以下この項において同じ。)」と、「事業をいう。以下」とあるのは「事業をいい、当該適格組織再編成等が適格分割又は適格現物出資である場合には当該分割法人の当該適格組織再編成等に係る法第二条第十二号の十一ロ(1)(定義)に規定する分割事業又は当該現物出資法人の当該適格組織再編成等に係る同条第十二号の十四ロ(1)に規定する現物出資事業とする。以下」と、「合併法人(当該合併法人」とあるのは「合併法人(当該適格組織再編成等が適格分割又は適格現物出資である場合には分割承継法人又は被現物出資法人とし、当該合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人」と、同項第二号中「規模」とあるのは「規模(適格分割又は適格現物出資にあつては、被合併事業と合併事業のそれぞれの売上金額、当該被合併事業と当該合併事業のそれぞれの従業者の数又はこれらに準ずるものの規模)」と、同項第五号中「特定役員(社長」とあるのは「特定役員等(合併にあつては社長」と、「者をいう。以下この号において同じ。)」とあるのは「者(以下この号において「特定役員」という。)をいい、適格分割又は適格現物出資にあつては役員又は当該これらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。)」と読み替えるものとする。

 

法人税基本通達1−4−6(事業規模を比較する場合の売上金額等に準ずるもの)
令第4条の2第3項第2号《適格合併に係る共同事業要件》、第6項第2号《適格分割に係る共同事業要件》又は第10項第2号《適格現物出資に係る共同事業要件》に規定する「これらに準ずるものの規模」とは、例えば、金融機関における預金量等、客観的・外形的にその事業の規模を表すものと認められる指標をいう。

(注) 事業の規模の割合がおおむね5倍を超えないかどうかは、これらの号に規定するいずれか一の指標が要件を満たすかどうかにより判定する。

【解説】

共同で事業を営むための合併として適格合併に該当するかどうかの要件として、被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、被合併法人と合併法人のそれぞれの資本の金額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合が5倍を超えないことが要件の一つとされている。
本通達では、この場合の「これらに準ずるものの規模」を表す指標を明らかにしている。
すなわち、事業規模を表す指標はその業種・業態により様々なものがあると考えられるが、例えば金融機関においては預金量等の客観的・外形的にその事業の規模を表すものとして認められる指標によるものとなろう。
また、事業規模の判定は、政令に列挙してある指標のすべてが5倍を超えないことが要件とされているのか、あるいはいずれか一の指標が5倍を超えなければよいのか、法令上若干読みにくいため、後者によることを本通達の(注)で念のため明らかにしている。
なお、事業規模を売上金額で比較する場合の比較期間については、法令上明記されていないが、合併の直近の事業年度の売上金額で比較すればよいものと考えられる(比較対象とする期間の長さは同一とすることは当然である。)。

 

国税庁HP 質疑応答事例 事業規模要件における「これらに準ずるもの」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/04.htm