組織再編税制㉗-完全支配関係にある非適格合併において資産調整勘定の計算の留意事項を見逃していないか?
Q完全支配関係にある2社の合併ですが、合併対価として金銭等を交付することから非適格合併となります。資産調整勘定の計算について留意点はありますか?
A完全支配関係にある2社の合併では、被合併法人の譲渡損益調整資産は帳簿価額により受け入れますが、資産調整勘定の計算においては、時価で取得したものとして計算されます。
解説
非適格合併の場合には、合併対価が、被合併法人から移転を受けた資産・負債の時価純資産価額を超える場合には、合併法人で資産調整勘定を計上します(法人税法第62条の8第1項)。一方で、移転を受けた資産・負債の時価純資産価額が、合併対価を超える場合には、負債調整勘定を計上します(法人税法第62条の8第3項)。
ここで、完全支配関係がある法人間の非適格合併については、被合併法人の譲渡損益調整資産について帳簿価額により受け入れます(法人税法第61条の13第7項)が、資産調整勘定の計上における時価純資産価額の計算においては、時価をもって取得価額とするものとされていますので留意が必要です。(法人税法第62条の8第1項括弧書き)。
法人税法第62条の8第1項(非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等)
内国法人が非適格合併等(適格合併に該当しない合併又は適格分割に該当しない分割、適格現物出資に該当しない現物出資若しくは事業の譲受けのうち、政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により当該非適格合併等に係る被合併法人、分割法人、現物出資法人その他政令で定める法人(以下この条において「被合併法人等」という。)から資産又は負債の移転を受けた場合において、当該内国法人が当該非適格合併等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産(適格合併に該当しない合併にあつては、第六十二条第一項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)に規定する新株等)の価額の合計額(当該非適格合併等において当該被合併法人等から支出を受けた第三十七条第七項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額に相当する金額を含み、当該被合併法人等に対して支出をした同項に規定する寄附金の額に相当する金額を除く。第三項において「非適格合併等対価額」という。)が当該移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額(当該資産(営業権にあつては、政令で定めるものに限る。以下この項において同じ。)の取得価額(第六十一条の十三第七項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)の規定の適用がある場合には、同項の規定の適用がないものとした場合の取得価額。以下この項において同じ。)の合計額から当該負債の額(次項に規定する負債調整勘定の金額を含む。以下この項において同じ。)の合計額を控除した金額をいう。第三項において同じ。)を超えるときは、その超える部分の金額(当該資産の取得価額の合計額が当該負債の額の合計額に満たない場合には、その満たない部分の金額を加算した金額)のうち政令で定める部分の金額は、資産調整勘定の金額とする。
3 内国法人が非適格合併等により当該非適格合併等に係る被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、当該非適格合併等に係る非適格合併等対価額が当該被合併法人等から移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額に満たないときは、その満たない部分の金額は、負債調整勘定の金額とする。
法人税法第61条の13第7項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
7 適格合併に該当しない合併に係る被合併法人が当該合併による譲渡損益調整資産の移転につき第一項の規定の適用を受けた場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額に相当する金額は当該合併に係る合併法人の当該譲渡損益調整資産の取得価額に算入しないものとし、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡損失額に相当する金額は当該合併法人の当該譲渡損益調整資産の取得価額に算入するものとする。
法人税法施行令第9条第1項第1号ヲ(利益積立金額)
ヲ 法第六十一条の十三第七項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)の規定により譲渡損益調整資産(同条第一項に規定する譲渡損益調整資産をいう。ヲにおいて同じ。)の取得価額に算入しない金額から同条第七項の規定により譲渡損益調整資産の取得価額に算入する金額を減算した金額