組織再編税制㊲-会社分割の適格要件(完全支配関係以外)において分割法人の主要な資産及び負債の引継要件にかかる留意点を見逃していないか?
Q 子会社に対する会社分割を予定していますが、分割対象事業と分割対象外の事業とで共同で使用している建物があります。いずれの事業においても主要な建物となるのですが、分割事業における主要な資産及び負債の移転をしないと適格要件を充足しませんか?
A主要な資産及び負債を移転しないことに事業上の合理的な理由がある場合には、適格要件を充足できる可能性があります。
解説
完全支配関係以外の会社分割における適格要件については、分割法人の主要な資産及び負債の分割承継法人への引継要件が課されます(法人税法第2条第12号の11ロ(1)、法人税法施行令第4条の3第8項第5号)。しかし、主要な資産及び負債の判定においては、その重要性だけでなく、事業再編計画の内容等を総合的に勘案して判定するものとされています(法人税基本通達1−4−8)。したがって、分割事業の主要な資産及び負債を移転しないことに、事業上の合理的な理由が認められれば、分割後に分割承継法人が分割法人から建物を賃貸することでも、適格要件を充足できる可能性はあります。
法人税基本通達1-4-8(主要な資産及び負債の判定)
法第2条第12号の11ロ(1)若しくは令第4条の3第8項第3号若しくは第9項第3号《適格分割の要件》又は法第2条第12号の14ロ(1)若しくは令第4条の3第15項第3号《適格現物出資の要件》の規定の適用上、分割事業又は現物出資事業に係る資産及び負債が主要なものであるかどうかは、分割法人又は現物出資法人が当該事業を行う上での当該資産及び負債の重要性のほか、当該資産及び負債の種類、規模、事業再編計画の内容等を総合的に勘案して判定するものとする。(平14年課法2-1「三」により追加、平19年課法2-17「二」、平22年課法2-1「五」、平28年課法2-11「一」、平29年課法2-17「四」により改正)