組織再編税制㊴-会社分割の適格要件(完全支配関係以外)において従業者引継要件にかかる合併との相違点を見逃していないか?

Q 子会社に対する会社分割を予定していますが、適格要件のうち、従業者引継要件について教えてくれますか?

A分割直前に分割事業に従事する者のおおむね100分の80以上が、分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれる必要がありますが、分割後に従事する事業は分割事業以外でもよく、また、分割後に出向により従事するのでも構いません。

解説
会社分割の適格要件の一つである従業者引継要件については、分割直前の分割事業に従事する従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する者が、分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれている必要があります(法人税法第2条12の11ロ(2)、法人税法施行令第4条の3第8項第4号)。
合併の場合は包括承継であるため、被合併法人全体の100分の80以上と規定されているのに対して、会社分割の場合には、分割事業の従業者の100分の80以上と規定されてます。したがって、分割の場合には、分割事業に従事しない従業者を引き継ぐ必要はありません。

分割事業とその他の事業のいずれにも従事している従業者について、分割事業に係る従業者に含めるかどうかは、主として当該分割事業に従事しているかどうかにより判定することになります(法人税基本通達1−4−4(注)3)。
なお、引き継がれた従業者が会社分割後に分割承継法人で従事する業務は、分割事業以外でも問題はありません(法人税基本通達1−4−9)。
また、分割法人に在籍したまま、分割承継法人に出向して分割承継法人の事業に従事するのでも構いません(法人税基本通達1−4−10)。

 

法人税法第2条12の11ロ(2)

 

(2) 当該分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該分割後に当該分割承継法人の業務(当該分割承継法人との間に完全支配関係がある法人の業務並びに当該分割後に行われる適格合併により当該分割事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該合併法人及び当該合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。

 

法人税法施行令第4条の3第8項第4号

 

四 分割に係る分割法人の当該分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該分割後に当該分割に係る分割承継法人の業務(当該分割承継法人との間に完全支配関係がある法人の業務並びに当該分割後に行われる適格合併により当該分割事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該合併法人及び当該合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。

 

法人税基本通達1−4−4(従業者の範囲)
法第2条第12号の8ロ(1)若しくは令第4条の3第4項第3号《適格合併の要件》、法第2条第12号の11ロ(2)若しくは令第4条の3第8項第4号若しくは第9項第4号《適格分割の要件》、法第2条第12号の14ロ(2)若しくは令第4条の3第15項第4号《適格現物出資の要件》、同条第16項第3号《適格株式分配の要件》、法第2条第12号の17ロ(1)若しくは令第4条の3第20項第3号《適格株式交換等の要件》又は法第2条第12号の18ロ(1)若しくは令第4条の3第24項第3号《適格株式移転の要件》に規定する「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併、分割、現物出資、株式分配、株式交換等又は株式移転の直前において被合併法人の合併前に行う事業、分割事業(同条第8項第1号に規定する分割事業をいう。以下この節において同じ。)、現物出資事業(同条第15項第1号に規定する現物出資事業をいう。以下この節において同じ。)、完全子法人(法第2条第12号の15の2《株式分配》に規定する完全子法人をいう。以下1-4-4において同じ。)の事業、株式交換等完全子法人の事業又はそれぞれの株式移転完全子法人の事業に現に従事する者をいうものとする。ただし、これらの事業に従事する者であっても、例えば、日々雇い入れられる者で従事した日ごとに給与等の支払を受ける者について、法人が従業者の数に含めないこととしている場合は、これを認める。
令第4条の3第4項第2号、第8項第2号、第15項第2号、第20項第2号又は第24項第2号《共同事業要件》の従業者の範囲についても、同様とする。(平14年課法2-1「三」により追加、平19年課法2-3「五」、平19年課法2-17「二」、平22年課法2-1「五」、平28年課法2-11「一」、平29年課法2-17「四」、平30年課法2-12「一」により改正)

(注)
1 出向により受け入れている者等であっても、被合併法人の合併前に行う事業、分割事業、現物出資事業、完全子法人の事業、株式交換等完全子法人の事業又はそれぞれの株式移転完全子法人の事業に現に従事する者であれば従業者に含まれることに留意する。

2 下請先の従業員は、例えば自己の工場内でその業務の特定部分を継続的に請け負っている企業の従業員であっても、従業者には該当しない。

3 分割事業又は現物出資事業とその他の事業とのいずれにも従事している者については、主として当該分割事業又は現物出資事業に従事しているかどうかにより判定する。

 

法人税基本通達1−4−9(従業者が従事することが見込まれる業務)
法第2条第12号の8ロ(1)《適格合併》に規定する「合併法人の業務」、同条第12号の11ロ(2)《適格分割》に規定する「分割承継法人の業務」又は同条第12号の14ロ(2)《適格現物出資》に規定する「被現物出資法人の業務」は、合併により移転した事業、分割事業又は現物出資事業に限らないことに留意する。
令第4条の3第4項第3号《適格合併の要件》、第8項第4号若しくは第9項第4号《適格分割の要件》又は第15項第4号《適格現物出資の要件》の判定についても、同様とする。(平14年課法2-1「三」により追加、平19年課法2-17「二」、平22年課法2-1「五」、平28年課法2-11「一」、平29年課法2-17「四」により改正)

 

法人税基本通達1−4−10(出向により分割承継法人等の業務に従事する場合)
法第2条第12号の11ロ(2)又は令第4条の3第8項第4号若しくは第9項第4号《適格分割の要件》に規定する「分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること」には、分割法人の分割の直前の従業者が出向により分割承継法人の業務に従事する場合が含まれることに留意する。
法第2条第12号の14ロ(2)又は令第4条の3第15項第4号《適格現物出資の要件》の判定についても、同様とする。(平14年課法2-1「三」により追加、平19年課法2-17「二」、平22年課法2-1「五」、平28年課法2-11「一」、平29年課法2-17「四」により改正)