組織再編税制㊵-会社分割の適格要件(共同事業要件)において特定役員従事要件にかかる合併との相違点を見逃していないか?

Q 子会社に対する会社分割を予定していますが、適格要件のうち、特定役員従事要件について教えてくれますか?

A分割前の分割法人の役員等のいずれかと分割承継法人のいずれかとが、分割後に分割承継法人の特定役員となることが見込まれている必要があります。

解説
会社分割における特定役員従事要件においては、分割法人の「役員等(※1)」のいずれか1人以上と、分割承継法人の「特定役員(※2)」のいずれか1人以上とが、分割後に分割承継法人の「特定役員」となることが見込まれている必要があります。この点、分割法人の「役員等」が分割承継法人の「特定役員」を兼務することでも要件を充足できると考えられます。
合併の場合には、被合併法人の「特定役員」のいずれかと合併法人の「特定役員」のいずれかとが、合併後に合併法人の「特定役員」になることが見込まれている必要がありました。一方で、分割の場合には、分割前の分割法人の役員については「特定役員」ではなく、「役員等」とされていることから、分割法人の平取締役が、分割後に分割承継法人の「特定役員」に就任する場合にも、要件を充足することになります。

(※1)「役員等」とは、法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者をいいます(法人税法第2条15、法人税法施行令第7条)。

(※2)「特定役員」とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます(法人税法施行令第4条の3第8項第2号、法人税法施行令第4条の3第4項第2号)。

 

法人税法施行令第4条の3第8項第2号

 

二 分割に係る分割法人の分割事業と当該分割に係る分割承継法人の分割承継事業(当該分割事業と関連する事業に限る。)のそれぞれの売上金額、当該分割事業と分割承継事業のそれぞれの従業者の数若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと又は当該分割前の当該分割法人の役員等(役員及び第四項第二号に規定するこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この号及び次項第二号において同じ。)のいずれかと当該分割承継法人の特定役員(当該分割が複数新設分割である場合にあつては、他の分割法人の役員等)のいずれかとが当該分割後に当該分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。

 

法人税法施行令第4条の3第4項第2号

 

二 合併に係る被合併法人の被合併事業と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該被合併事業と関連する事業に限る。)のそれぞれの売上金額、当該被合併事業と合併事業のそれぞれの従業者の数、当該被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと又は当該合併前の当該被合併法人の特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この条において同じ。)のいずれかと当該合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、他の被合併法人)の特定役員のいずれかとが当該合併後に当該合併に係る合併法人の特定役員となることが見込まれていること。

 

法人税法2号15

十五 役員 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものをいう。

 

法人税法施行令第7条(役員の範囲)
法第二条第十五号(役員の意義)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの
二 同族会社の使用人のうち、第七十一条第一項第五号イからハまで(使用人兼務役員とされない役員)の規定中「役員」とあるのを「使用人」と読み替えた場合に同号イからハまでに掲げる要件のすべてを満たしている者で、その会社の経営に従事しているもの