組織再編税制㊹-現物出資の適格要件における留意点を見逃していないか?

Q 現物出資の適格要件に関して留意事項はありますか?

A基本的には分社型分割における適格要件と同様ですが、現物出資法人、被現物出資法人が外国法人である場合についても規定されており、国内資産が外国法人に移転されるものや国外資産が内国法人に移転されるものなど、一定のものは適格現物出資から除かれています。また、個人から法人への現物出資は規定されていないため、必ず時価による資産負債の移転となる点に留意が必要です。

解説
現物出資における適格要件は、基本的には分社型分割における適格要件と同様です(法人税法第2条12の14、法人税法施行令第4条の3第10項〜15項)が、現物出資法人、被現物出資法人が外国法人である場合について以下の①〜③の規定があります。また、個人から法人への現物出資は規定されておらず、所得税法でも規定がないため、当該出資は適格現物出資にはなりえず、必ず時価による資産負債の移転となる点に留意が必要です。

 

①内国法人から外国法人への現物出資
外国法人に国内にある資産又は負債として政令で定める一定の資産又は負債の移転を行うもの(外国法人の25%以上保有株式を除く)は、適格現物出資の対象より除かれています。ただし、外国法人に対する現物出資のうち日本の恒久的施設に対する現物出資については、適格要件を充足する場合には適格現物出資となります。

 

②外国法人から内国法人への現物出資
外国法人が内国法人又は他の外国法人に、国外にある資産又は負債として政令で定める一定の資産又は負債の移転を行うものは、適格現物出資の対象から除かれています。なお、外国法人が他の外国法人に国外資産等を現物出資する場合、他の外国法人のPE(恒久的施設)を通じて行う事業に属するものとなる現物出資については、適格現物出資の対象より除かれています。

 

③国外資産
内国法人が外国法人に国外資産等の移転を行うもので、当該国外資産等の全部又は一部が当該外国法人のPE(恒久的施設)に属しないものは、適格現物出資の対象より除かれています。なお、内国法人が外国法人に国外資産等を出資する場合において、当該国外資産等が現物出資の日以前1年以内に内国法人の本店等から内部取引により国外資産となったものであれば、同様に適格現物出資の対象より除かれています。

 

法人税法第2条12の14 適格現物出資
次のいずれかに該当する現物出資(外国法人に国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債(以下この号において「国内資産等」という。)の移転を行うもの(当該国内資産等の全部が当該外国法人の恒久的施設に属するものとして政令で定めるものを除く。)、外国法人が内国法人又は他の外国法人に国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債(以下この号において「国外資産等」という。)の移転を行うもの(当該他の外国法人に国外資産等の移転を行うものにあつては、当該国外資産等が当該他の外国法人の恒久的施設に属するものとして政令で定めるものに限る。)及び内国法人が外国法人に国外資産等の移転を行うもので当該国外資産等の全部又は一部が当該外国法人の恒久的施設に属しないもの(国内資産等の移転を行うものに準ずるものとして政令で定めるものに限る。)並びに新株予約権付社債に付された新株予約権の行使に伴う当該新株予約権付社債についての社債の給付を除き、現物出資法人に被現物出資法人の株式のみが交付されるものに限る。)をいう。
イ その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該現物出資
ロ その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人による支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該現物出資のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの
(1) 当該現物出資により現物出資事業(現物出資法人の現物出資前に行う事業のうち、当該現物出資により被現物出資法人において行われることとなるものをいう。ロにおいて同じ。)に係る主要な資産及び負債が当該被現物出資法人に移転していること。
(2) 当該現物出資の直前の現物出資事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該現物出資後に当該被現物出資法人の業務(当該被現物出資法人との間に完全支配関係がある法人の業務並びに当該現物出資後に行われる適格合併により当該現物出資事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該合併法人及び当該合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。
(3) 当該現物出資に係る現物出資事業が当該現物出資後に当該被現物出資法人(当該被現物出資法人との間に完全支配関係がある法人並びに当該現物出資後に行われる適格合併により当該現物出資事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該合併法人及び当該合併法人との間に完全支配関係がある法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。
ハ その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人(当該現物出資が法人を設立する現物出資である場合にあつては、当該現物出資法人と他の現物出資法人)とが共同で事業を行うための現物出資として政令で定めるもの

 

法人税法施行令第4条の3第10項
10 法第二条第十二号の十四に規定する国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は、国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)の規定による鉱業権及び採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)の規定による採石権その他国内にある事業所に属する資産(外国法人の発行済株式等の総数の百分の二十五以上の数の株式を有する場合におけるその外国法人の株式を除く。)又は負債とし、同条第十二号の十四に規定する当該外国法人の恒久的施設に属するものとして政令で定めるものは、外国法人に同号に規定する国内資産等の移転を行う現物出資のうち当該国内資産等の全部が当該移転により当該外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るものとなる現物出資(当該国内資産等に法第百三十八条第一項第三号又は第五号(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得を生ずべき資産が含まれている場合には、当該資産につき当該移転後に当該恒久的施設による譲渡に相当する同項第一号に規定する内部取引がないことが見込まれているものに限る。)とする。
11 法第二条第十二号の十四に規定する国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は、国外にある事業所に属する資産(国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法の規定による鉱業権及び採石法の規定による採石権を除く。)又は負債とし、同号に規定する当該他の外国法人の恒久的施設に属するものとして政令で定めるものは、外国法人が他の外国法人に同号に規定する国外資産等の移転を行う現物出資のうち当該国外資産等の全部又は一部が当該移転により当該他の外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るものとなる現物出資とする。
12 法第二条第十二号の十四に規定する国内資産等の移転を行うものに準ずるものとして政令で定めるものは、内国法人が外国法人に同号に規定する国外資産等(現金、預金、貯金、棚卸資産(不動産及び不動産の上に存する権利を除く。)及び有価証券以外の資産でその現物出資の日以前一年以内に法第六十九条第四項第一号(外国税額の控除)に規定する内部取引その他これに準ずるものにより法第二条第十二号の十四に規定する国外資産等となつたものに限る。以下この項において「特定国外資産等」という。)の移転を行う現物出資(当該特定国外資産等の全部が当該移転により当該外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るものとなる現物出資を除く。)とする。