非上場株式の評価⑱-オーナーによる第三者割当増資時の割当株式数を、安易に所得税法上の時価に基づいて計算していないか?

Qオーナーと家族が株主となっている同族会社で、オーナー単独での追加出資を考えています。「所得税法上の時価>相続税法上の時価」となっていますが、割当株式数をいずれの時価に基づいて計算すればよいでしょうか?

A同族株主支配下では、相続税法上の時価に基づいて割当株式数を計算することにより、課税リスクを低減できるケースもあります。

解説
原則的に考えると、個人と法人の取引であるため、適用される税法時価は、個人側は所得税法上の時価、法人側は法人税法上の時価となります。所得税法上の時価よりも低い株価で割当株式数を計算した場合には有利発行となり、割当株式数が多くなることから、オーナーへの給与課税の問題が生じます(所得税基本通達発23〜35共–6)。
ただし、所得税法上の時価で割当株式数を計算した場合、相続税評価の観点からはオーナーへの割当株式数が少なくなります。結果として、オーナー保有分の相続税評価額が引き下がり、家族保有分に経済的価値が移転することから、みなし贈与と指摘される可能性があります(相続税法基本通達9−4)。
この点、同族株主の支配下のもとで行われる増資については、事業目的よりも経済的価値の移転を目的としているケースが多いため、所得税法上の時価に基づいて割当株式数を計算することにより、株主間で多額の経済的価値の移転が生じる場合には、贈与認定されるリスクは高いと考えます。
一方、同条件のもとでは、相続税法上の時価に基づいて割当株式数を計算した場合のオーナーへの給与認定リスクは、相対的に低いと考えます。

留意事項
株主の属性、増資の目的、所得税法上の時価と相続税法上の時価との乖離の状況など、個別事情によりリスクの度合いは異なります。事案によっては国税照会を行った上で判断することも考えられます。

 

参考資料
有利発行有価証券に係る受贈益を得た個人に対する課税関係
税務大学校論叢第92号 平成30年6月
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/92/04/index.htm

 

所得税基本通達発23〜35共–6(株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分)
発行法人から令第84条第3項各号に掲げる権利を与えられた場合(同条項の規定の適用を受ける場合に限る。以下23~35共-6の2において同じ。)の当該権利の行使による株式(これに準ずるものを含む。 以下23~35共-9までにおいて同じ。)の取得に係る所得区分は、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。(昭49直所2-23、平8課法8-2、課所4-5、平10課法8-2、課所4-5、平14課個2-5、課資3-3、課法8-3、課審3-118、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平28課個2-22、課審5-18、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12、令2課個2-12、課法11-3、課審5-6改正)

(1) 令第84条第3項第1号又は第2号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合発行法人(外国法人を含む。)と当該権利を与えられた者との関係等に応じ、それぞれ次による。

イ 発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して当該権利が与えられたと認められるとき
給与所得とする。ただし、退職後に当該権利の行使が行われた場合において、例えば、権利付与後短期間のうちに退職を予定している者に付与され、かつ、退職後長期間にわたって生じた株式の値上り益に相当するものが主として供与されているなど、主として職務の遂行に関連を有しない利益が供与されていると認められるときは、雑所得とする。(注) 例えば、措置法第29条の2第1項((特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等))に規定する「取締役等」の関係については、雇用契約又はこれに類する関係に該当することに留意する。

ロ 権利を与えられた者の営む業務に関連して当該権利が与えられたと認められるとき
事業所得又は雑所得とする。(注) 例えば、措置法第29条の2第1項に規定する「特定従事者」にその者の営む業務に関連して同項に規定する特定新株予約権が与えられた場合(雇用契約又はこれに類する関係にない場合に限る。)において同項の適用がないときは、上記に該当することに留意する。

ハ イ及びロ以外のとき
原則として雑所得とする。

(2) 令第84条第3項第3号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合
一時所得とする。 ただし、当該発行法人の役員又は使用人に対しその地位又は職務等に関連して株式を取得する権利が与えられたと認められるときは給与所得とし、これらの者の退職に基因して当該株式を取得する権利が与えられたと認められるときは退職所得とする。

 

相続税法基本通達9−4(同族会社の募集株式引受権)
同族会社が新株の発行(当該同族会社の有する自己株式の処分を含む。以下9-7までにおいて同じ。)をする場合において、当該新株に係る引受権(以下9-5までにおいて「募集株式引受権」という。)の全部又は一部が会社法(平成17年法律第86号)第206条各号((募集株式の引受け))に掲げる者(当該同族会社の株主の親族等(親族その他法施行令第31条に定める特別の関係がある者をいう。以下同じ。)に限る。)に与えられ、当該募集株式引受権に基づき新株を取得したときは、原則として、当該株主の親族等が、当該募集株式引受権を当該株主から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。ただし、当該募集株式引受権が給与所得又は退職所得として所得税の課税対象となる場合を除くものとする。(昭57直資2-177、平18課資2-2改正)