組織再編税制㊻-現物分配の適格要件における留意点を見逃していないか?

Q 現物分配の適格要件に関して留意事項はありますか?

A完全支配関係がある内国法人間の適格現物分配、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフの場合の適格株式分配の2種類のみが適格要件として定められています。

解説
現物分配の適格要件は、他の組織再編と異なり、完全支配関係がある内国法人間の適格現物分配、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフの場合の適格株式分配の2パターンのみに整理できます。
完全支配関係がある内国法人間の適格現物分配においては、現物分配の直前において内国法人間に完全支配関係があることのみが要件とされています(法人税法第2条12の15)。内国法人間の現物分配に限定されているため、外国法人への現物分配は非適格現物分配となります。また、個人に対する適格現物分配の規定はなく、所得税法上にも規定がないことから、個人株主への現物分配は、時価による移転となる点に留意が必要です。
特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフの場合の適格株式分配においては、以下の①〜④の要件を全て充足する場合に適格現物分配(適格株式分配)となります(法人税法第2条12の15の2、15の3、法人税法施行令第4条の3第16項)。そもそも株式分配とは、現物分配法人が保有する100%子会社株式の全部を現物分配することをいいますので、この前提にも留意が必要です。

①株式分配の直前に現物分配法人と他の者との間にその他の者による支配関係がなく、かつ、その株式分配後に完全子法人と他の者との間にその他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないこと。

②株式分配前の完全子法人の特定役員の全てがその株式分配に伴って退任をするものでないこと。

③完全子法人のその株式分配の直前の従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者がその完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること。

④完全子法人のその株式分配前に行う主要な事業がその完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること。

 

法人税法第2条12の15(適格現物分配)

十二の十五 適格現物分配 内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものをいう。
十二の十五の二 株式分配 現物分配(剰余金の配当又は利益の配当に限る。)のうち、その現物分配の直前において現物分配法人により発行済株式等の全部を保有されていた法人(次号において「完全子法人」という。)の当該発行済株式等の全部が移転するもの(その現物分配により当該発行済株式等の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該現物分配法人との間に完全支配関係がある者のみである場合における当該現物分配を除く。)をいう。
十二の十五の三 適格株式分配 完全子法人の株式のみが移転する株式分配のうち、完全子法人と現物分配法人とが独立して事業を行うための株式分配として政令で定めるもの(当該株式が現物分配法人の発行済株式等の総数又は総額のうちに占める当該現物分配法人の各株主等の有する当該現物分配法人の株式の数(出資にあつては、金額)の割合に応じて交付されるものに限る。)をいう。

 

法人税法施行令第4条の3第16項

16 法第二条第十二号の十五の三に規定する政令で定めるものは、次に掲げる要件の全てに該当する株式分配とする。
一 株式分配の直前に当該株式分配に係る現物分配法人と他の者(その者(その者が個人である場合には、その個人との間に第四条第一項に規定する特殊の関係のある者を含む。イにおいて同じ。)が締結している組合契約(第九項第一号に規定する組合契約をいう。以下この号において同じ。)及び次に掲げる組合契約に係る他の組合員である者を含む。以下この号において同じ。)との間に当該他の者による支配関係がなく、かつ、当該株式分配後に当該株式分配に係る完全子法人と他の者との間に当該他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないこと。
イ その者が締結している組合契約による組合(これに類するものを含む。以下この号において同じ。)が締結している組合契約
ロ イ又はハに掲げる組合契約による組合が締結している組合契約
ハ ロに掲げる組合契約による組合が締結している組合契約
二 株式分配前の当該株式分配に係る完全子法人の特定役員の全てが当該株式分配に伴つて退任をするものでないこと。
三 株式分配に係る完全子法人の当該株式分配の直前の従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること。
四 株式分配に係る完全子法人の当該株式分配前に行う主要な事業が当該完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること。