株式交付制度②-株式交付は子会社となる他の会社における手続きは不要で、各株主に対する強制力もない点を見逃していないか?

Q弊社は株式交付により他の会社を子会社化しようと考えています。当該他の会社に実施してもらう手続きはありますか?

A株式交付制度に関する手続きはありません(譲渡制限付株式の場合、譲渡承認手続きは必要です)。

解説
株式交付においては、株式交付親会社が株式交付計画を作成し、株式交付親会社の株主総会特別決議(反対株主による買取請求手続き有)により行いますので(会社法第774条の2、第816条の3、第816条の6)、子会社となる他の会社における法定手続きは必要ありません。ただし、他の会社が発行する株式が譲渡制限付株式である場合には、株主の譲渡承認申請に基づく、譲渡承認手続きは必要となります(会社法第139条)。
株式交付に応じるかどうかは子会社となる他の会社の各株主の自由であり、強制力はありません(会社法第774条の4第2項、3項)。

 

会社法第774条の2(株式交付計画の作成)
株式会社は、株式交付をすることができる。この場合においては、株式交付計画を作成しなければならない。

 

会社法第816条の3(株式交付計画の承認等)
株式交付親会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、株式交付計画の承認を受けなければならない。
2 株式交付親会社が株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式等を除く。)の帳簿価額が株式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式及び新株予約権等の額として法務省令で定める額を超える場合には、取締役は、前項の株主総会において、その旨を説明しなければならない。
3 株式交付親会社が種類株式発行会社である場合において、次の各号に掲げるときは、株式交付は、当該各号に定める種類の株式(譲渡制限株式であって、第百九十九条第四項の定款の定めがないものに限る。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。
一 株式交付子会社の株式の譲渡人に対して交付する金銭等が株式交付親会社の株式であるとき 第七百七十四条の三第一項第三号の種類の株式
二 株式交付子会社の新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等が株式交付親会社の株式であるとき 第七百七十四条の三第一項第八号イの種類の株式

 

会社法第816条の6(反対株主の株式買取請求)
株式交付をする場合には、反対株主は、株式交付親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。ただし、第八百十六条の四第一項本文に規定する場合(同項ただし書又は同条第二項に規定する場合を除く。)は、この限りでない。
2 前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。
一 株式交付をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主
イ 当該株主総会に先立って当該株式交付に反対する旨を当該株式交付親会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式交付に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
二 前号に掲げる場合以外の場合 全ての株主
3 株式交付親会社は、効力発生日の二十日前までに、その株主に対し、株式交付をする旨並びに株式交付子会社の商号及び住所を通知しなければならない。
4 次に掲げる場合には、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
一 株式交付親会社が公開会社である場合
二 株式交付親会社が第八百十六条の三第一項の株主総会の決議によって株式交付計画の承認を受けた場合
5 第一項の規定による請求(以下この節において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
6 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式交付親会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。
7 株式買取請求をした株主は、株式交付親会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。
8 株式交付を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。
9 第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。

 

会社法第774条の4第2項、3項(株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み)

2 株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをする者は、前条第一項第十号の期日までに、次に掲げる事項を記載した書面を株式交付親会社に交付しなければならない。
一 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二 譲り渡そうとする株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
3 前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式交付親会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。

 

会社法第139条(譲渡等の承認の決定等)
株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。