株式交付制度⑧-50人以上の株主から株式を取得した場合における税務上の資本金等の額の増加による影響を見逃していないか?

Q株式会社である弊社は、株式交付により他の会社の株主が保有する株式を取得しました。対価は自社株式のみで、株主50人以上から株式を取得しています。留意点はありますか?

A税務上の資本金等の額を課税標準とする住民税均等割、資本割が増加する可能性があります。また、株式評価上の配当還元価額が上昇する可能性があります。

解説
株式交付により子会社化する他の会社の株主から株式を取得する際に、売却に応じた株主数が50人未満か50人以上かで、親会社における税務上の子会社株式の取得価額の計算方法が異なります。売却に応じた株主が50人未満である場合には、当該株主が有していた取得の直前における株式帳簿価額となります(租税特別措置法施行令第39条の10の3第4項第1号イ)。一方で、50人以上である場合には、子会社化した会社の前期期末時の簿価純資産に、取得の日における発行済株式(自己の株式を除く。)の総数のうちに取得した株式の数の占める割合を乗じて計算します(租税特別措置法施行令第39条の10の3第4項第1号ロ)。
株主50人以上から株式を取得した場合には、子会社化した会社の簿価純資産をもとに計算することになるため、親会社において子会社株式の取得価額が大きくなり、併せて増加する資本金等の額も大きくなる可能性があります(租税特別措置法施行令第39条の10の3第4項第3号)。したがって、資本金等の額を課税標準とする住民税均等割、資本割の増加への影響を検討しておく必要があります。また、株式評価上の配当還元価額の上昇につながる可能性がありますので留意が必要です。

 

租税特別措置法第39条の10の3第4項(株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の 特例)

4 株式交付親会社が株式交付により当該株式交付に係る株式交付子会社 (法第六十六条の二の二第一項に規定する株式交付子会社をいう。以下 この項において同じ。)の株式を取得した場合(当該株式交付により当該株式交付子会社の株主に交付した自己の株式の価額が当該株式交付により当該株主に交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が百分の八十に満たない場合を除く。)における法人税法その他法人税に関する法令の規定の適用については、次に定めるところによる。


一 当該株式交付により当該株式交付子会社の株主から取得した当該株式交付子会社の株式の取得価額は、法人税法施行令第百十九条第一項の規定にかかわらず、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額(当該株式の取得をするために要した費用がある場合には、そ の費用の額を加算した金額)とする。
イ 当該株式交付により当該株式交付子会社の株式を五十人未満の当該株式交付子会社の株主から取得をした場合 当該株主が有していた当該株式の当該取得の直前における帳簿価額(当該株主が公益法 人等又は人格のない社団等であり、かつ、当該株式がその収益事業以外の事業に属するものであつた場合には当該株式の価額として当該株式交付親会社の帳簿に記載された金額とし、当該株主が個人である場合には当該個人が有していた当該株式の当該取得の直前における取得価額とする。)に相当する金額
ロ 当該株式交付により当該株式交付子会社の株式を五十人以上の当該株式交付子会社の株主から取得をした場合 当該株式交付子会社の前期期末時(当該株式交付子会社の当該取得の日を含む事業年度の前事業年度(同日以前六月以内に法人税法第七十二条第一項又は第八十一条の二十第一項に規定する期間についてこれらの規定に掲げる事項を記載した同法第二条第三十号に規定する中間申告書又は同条第三十一号の二に規定する連結中間申告書を提出し、かつ、その提出の日から当該取得の日までの間に同条第三十一号に規定する確定申告書又は同条第三十二号に規定する連結確定申告書を提出していなかつた場合には、当該中間申告書又は連結中間申告書に係る同法第七十二条第一項又は第八十一条の二十第一項に規定する期間 )終了の時をいう。)の資産の帳簿価額から負債(新株予約権及び株式引受権に係る義務を含む。)の帳簿価額を減算した金額(当該前期期末時から当該取得の日までの間に同法第二条第十六号に規定 する資本金等の額若しくは同条第十七号の二に規定する連結個別資本金等の額又は利益積立金額若しくは連結個別利益積立金額(法人税法施行令第九条第一項第一号若しくは第六号又は第九条の二第一 項第一号若しくは第四号に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減 少した場合には、その増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算した金額)に相当する金額に当該株式交付子会社の当該取得の日における発行済株式(当該株式交付子会社が有する自己の株式を除く。)の総数のうちに当該取得をした当該株式交付子会社の株式の数の占める割合を乗ずる方法その他財務省令で定める方法により計算した金額


二 当該株式交付により当該株式交付子会社の株主に当該株式交付親会社の株式以外の資産を交付した場合には、当該株式交付により当該株主から取得した当該株式交付子会社の株式の取得価額は、法人税法施行令第百十九条第一項及び前号の規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額(当該株式の取得をするために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)とする。
イ 前号イ又はロに掲げる場合の区分に応じそれぞれ同号イ又はロに定める金額に株式交付割合(当該株式交付により当該株主に交付した当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により当該株主 に交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(剰余金の配当として交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)のうちに占める割合をいう。)を乗じて計算した金額
ロ 当該株式交付により当該株主に交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(当該株式交付親会社の株式の価額並びに剰余金の配当として交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)


三 当該株式交付による当該株式交付親会社の株式の交付に係る法人税法施行令第八条第一項第一号に掲げる金額は、当該株式交付により移転を受けた当該株式交付子会社の株式の取得価額(当該株式の取得をするために要した費用の額が含まれている場合には、当該費用の額を 控除した金額)から当該株式交付に係る増加資本金額等(当該株式交付により増加した資本金の額及び前号ロに掲げる金額をいう。)を減算した金額とする。


四 当該株式交付親会社が当該株式交付の直後に二以上の種類の株式を発行している場合には、当該株式交付により増加した資本金の額及び当該株式交付に係る前号に規定する減算した金額の合計額を当該株式 交付により交付した当該株式交付親会社の株式のその交付の直後の価 額の合計額で除し、これにその交付した株式のうち当該種類の株式のその交付の直後の価額の合計額を乗じて計算した金額を、当該種類の株式に係る法人税法施行令第八条第二項の種類資本金額に加算する。

 

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