Q株式会社である弊社は、株式交付により他の会社の株主が保有する株式を取得しました。交付対価は自社株式100%です。親会社の資本準備金が10億円増加したため、決算日までにその他資本剰余金に振り替える必要があると聞きましたが、理由を教えていただけますか?(株式交付後の親会社の資本金は3,000万円、資本準備金は10億円、税務上の資本金等の額は5,000万円となる予定)
A住民税均等割の上昇を抑えるためです。
解説
住民税均等割の課税標準は、法人税額の課税標準の算定期間の末日(決算日)における税務上の資本金等の額が、会計上の資本金と資本準備金の合算額に満たない場合には、会計上の資本金と資本準備金の合算額が課税標準となります(地方税法第52条第2項、第4項〜第6項)。
株式交付の実施により、親会社が子会社株式を取得しますが、原則として(※)、資本金又は資本準備金が大幅に増加します(会社法計算規則第39条の2第2項)。
本件では、株式交付実施年度の決算日までに、増加した資本準備金10億円をその他資本剰余金に振り替えることで、住民税均等割の課税標準が税務上の資本金等の額5,000万円となるため、住民税均等割の大幅な上昇を抑制することができます。決算日直前に株式交付を行なった場合には、その他資本剰余金への振替手続きが間に合わない可能性がありますので、留意が必要です。
(※)交付する自社株式以外の対価が、対価総額の5%以上である場合には債権者保護手続きが必要となります(会社法第816条の8、会社法施行規則第213条の7)ので、株式交付による純資産の増加を、その他資本剰余金の増加とすることも可能です。
会社計算規則第39条の2(株式交付)
株式交付に際し、株式交付親会社において変動する株主資本等の総額(以下この条において「株主資本等変動額」という。)は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法に従い定まる額とする。
一 当該株式交付が支配取得に該当する場合(株式交付子会社による支配取得に該当する場合を除く。) 吸収型再編対価時価又は株式交付子会社の株式及び新株予約権等の時価を基礎として算定する方法
二 株式交付親会社と株式交付子会社が共通支配下関係にある場合 株式交付子会社の財産の株式交付の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法(前号に定める方法によるべき部分にあっては、当該方法)
三 前二号に掲げる場合以外の場合 前号に定める方法
2 前項の場合には、株式交付親会社の資本金及び資本剰余金の増加額は、株主資本等変動額の範囲内で、株式交付親会社が株式交付計画の定めに従い定めた額とし、利益剰余金の額は変動しないものとする。ただし、法第八百十六条の八の規定による手続をとっている場合以外の場合にあっては、株式交付親会社の資本金及び資本準備金の増加額は、株主資本等変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えて得た額に株式発行割合(当該株式交付に際して発行する株式の数を当該株式の数及び対価自己株式の数の合計数で除して得た割合をいう。)を乗じて得た額から株主資本等変動額まで(株主資本等変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えて得た額に株式発行割合を乗じて得た額が株主資本等変動額を上回る場合にあっては、株主資本等変動額)の範囲内で、株式交付親会社が株式交付計画の定めに従いそれぞれ定めた額とし、当該額の合計額を株主資本等変動額から減じて得た額をその他資本剰余金の変動額とする。
3 前項の規定にかかわらず、株主資本等変動額が零未満の場合には、当該株主資本等変動額のうち、対価自己株式の処分により生ずる差損の額をその他資本剰余金の減少額とし、その余の額をその他利益剰余金の減少額とし、資本金、資本準備金及び利益準備金の額は変動しないものとする。
会社法第816条の8(債権者の異議)
株式交付に際して株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)が株式交付親会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合には、株式交付親会社の債権者は、株式交付親会社に対し、株式交付について異議を述べることができる。
2 前項の規定により株式交付親会社の債権者が異議を述べることができる場合には、株式交付親会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 株式交付をする旨
二 株式交付子会社の商号及び住所
三 株式交付親会社及び株式交付子会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
3 前項の規定にかかわらず、株式交付親会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
4 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該株式交付について承認をしたものとみなす。
5 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、株式交付親会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該株式交付をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
会社法施行規則第213条の7(株式交付親会社の株式に準ずるもの)
法第八百十六条の八第一項に規定する法務省令で定めるものは、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を減じて得た額が第三号に掲げる額よりも小さい場合における法第七百七十四条の三第一項第五号、第六号、第八号及び第九号の定めに従い交付する株式交付親会社の株式以外の金銭等とする。
一 株式交付子会社の株式、新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)及び新株予約権付社債の譲渡人に対して交付する金銭等の合計額
二 前号に規定する金銭等のうち株式交付親会社の株式の価額の合計額
三 第一号に規定する金銭等の合計額に二十分の一を乗じて得た額
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