株式交付制度⑥-親会社が非支配株主から取得する子会社株式の会計上の取得価額は必ず時価となる点を見逃していないか?

Q株式会社である弊社は、他の会社の議決権を40%保有し、弊社の代表取締役が30%、残り30%を少数株主が保有しています。既に当該会社は実質的に弊社の子会社ですが、株式交付制度により少数株主が保有する30%を取得しました。親会社が取得した子会社株式は、子会社財産の帳簿価額に基づいて算定すればよいですか?

A時価で算定します。

解説
株式交付は他の会社を子会社化する組織再編ですので、原則は支配取得(会社計算規則第2条第3項第35号)に該当すると考えられ、親会社が取得する子会社株式の取得価額は時価で算定します(会社計算規則第39条の2第1項第1号)。
一方で、他の会社に対して議決権は50%以下であっても、実質支配による子会社に該当している場合には、共通支配下関係(会社計算規則第2条第3項第36号)における取引となり、他の会社財産の株式交付直前の帳簿価額で算定します(会社計算規則第39条の2第1項第2号)。ただし、本件のように共通支配下関係にあっても、非支配株主である少数株主から取得する子会社株式の取得価額は時価で算定すると考えられます(会社計算規則第39条の2第1項第2号括弧書き、企業会計基準適用指針第10号第236項)。

 

会社計算規則第2条第3項第35号、36号

三十五 支配取得 会社が他の会社(当該会社と当該他の会社が共通支配下関係にある場合における当該他の会社を除く。以下この号において同じ。)又は当該他の会社の事業に対する支配を得ることをいう。
三十六 共通支配下関係 二以上の者(人格のないものを含む。以下この号において同じ。)が同一の者に支配(一時的な支配を除く。以下この号において同じ。)をされている場合又は二以上の者のうちの一の者が他の全ての者を支配している場合における当該二以上の者に係る関係をいう。

 

会社計算規則第39条の2(株式交付)
株式交付に際し、株式交付親会社において変動する株主資本等の総額(以下この条において「株主資本等変動額」という。)は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法に従い定まる額とする。
一 当該株式交付が支配取得に該当する場合(株式交付子会社による支配取得に該当する場合を除く。) 吸収型再編対価時価又は株式交付子会社の株式及び新株予約権等の時価を基礎として算定する方法
二 株式交付親会社と株式交付子会社が共通支配下関係にある場合 株式交付子会社の財産の株式交付の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法(前号に定める方法によるべき部分にあっては、当該方法)
三 前二号に掲げる場合以外の場合 前号に定める方法
2 前項の場合には、株式交付親会社の資本金及び資本剰余金の増加額は、株主資本等変動額の範囲内で、株式交付親会社が株式交付計画の定めに従い定めた額とし、利益剰余金の額は変動しないものとする。ただし、法第八百十六条の八の規定による手続をとっている場合以外の場合にあっては、株式交付親会社の資本金及び資本準備金の増加額は、株主資本等変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えて得た額に株式発行割合(当該株式交付に際して発行する株式の数を当該株式の数及び対価自己株式の数の合計数で除して得た割合をいう。)を乗じて得た額から株主資本等変動額まで(株主資本等変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えて得た額に株式発行割合を乗じて得た額が株主資本等変動額を上回る場合にあっては、株主資本等変動額)の範囲内で、株式交付親会社が株式交付計画の定めに従いそれぞれ定めた額とし、当該額の合計額を株主資本等変動額から減じて得た額をその他資本剰余金の変動額とする。
3 前項の規定にかかわらず、株主資本等変動額が零未満の場合には、当該株主資本等変動額のうち、対価自己株式の処分により生ずる差損の額をその他資本剰余金の減少額とし、その余の額をその他利益剰余金の減少額とし、資本金、資本準備金及び利益準備金の額は変動しないものとする。

 

企業会計基準適用指針第10号第236項(親会社が子会社を株式交換完全子会社とする場合の会計処理/個別財務諸表上の会計処理/親会社(株式交換完全親会社)の会計処理)

236. 親会社の個別財務諸表上の会計処理は次のように行う。[設例 27]
(1) 株式交換完全子会社株式の取得原価の算定
親会社が追加取得する株式交換完全子会社株式の取得原価は、企業結合会計基準 (注11)により、取得の対価(非支配株主に交付した株式交換完全親会社株式の時価)に付随費用を加算して算定する。付随費用の取扱いについては、金融商品会計実務指針に従う。