株式交付制度④-株式交付に応じた株主の税務手続きと株式を取得し親会社となった会社の税務手続きについて見逃している点はないか?

Q弊社は株式交付により他の会社を子会社化しようと考えています。対価として弊社株式のみを交付する場合、当該他の会社の株主に課税は生じないと思いますが、株主側で税務手続きの必要はありますか?また、弊社において税務手続きは必要ですか?

A本ケースでは株主側で特別な税務手続きはありません。一方で、貴社は法人税の確定申告書に添付して、株式交付に関する書類を提出する必要があります。

解説
株式交付対価の総額の80%以上が株式交付親会社株式である場合には、譲渡に応じた株主の譲渡損益について、株式対価部分の課税が繰り延べられます(租税特別措置法第66条の2の2、租税特別措置法施行令第39条の10の3)。株式交付の対価が株式のみである本件のように課税所得が生じない場合には、株主側で特別な税務手続きはありません(課税所得が生じる場合には所得税の確定申告が必要となります)。
一方で、株式交付により親会社となった会社においては、法人税の申告書に、株式交付計画書及び株式交付子会社の株主に対して交付した株式その他の資産の数又は価額の算定の根拠を明らかにする事項を記載した書類を添付して提出する必要があります(法人税法施行規則第35条第5項、第6項)。

 

租税特別措置法第66条の2の2(株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例)
法人が、その有する株式(以下この項において「所有株式」という。)を発行した他の法人を会社法第七百七十四条の三第一項第一号に規定する株式交付子会社とする株式交付により当該所有株式を譲渡し、当該株式交付に係る株式交付親会社(同号に規定する株式交付親会社をいう。以下この条において同じ。)の株式の交付を受けた場合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が百分の八十に満たない場合を除く。)における法人税法第六十一条の二第一項の規定の適用については、同項第一号に掲げる金額は、当該所有株式の当該株式交付の直前の帳簿価額に相当する金額に株式交付割合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(剰余金の配当として交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)のうちに占める割合をいう。)を乗じて計算した金額と当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(当該株式交付親会社の株式の価額並びに剰余金の配当として交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)とを合計した金額とする。

2 前項の法人が外国法人である場合における同項の規定の適用に関する事項、同項の交付を受けた株式交付親会社の株式の取得価額その他同項の規定の適用がある場合における法人税に関する法令の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

租税特別措置法施行令第39条の10の3(特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例)

法第六十六条の二の二第一項の規定の適用がある場合におけるその適用に係る法人に対する法人税法その他法人税に関する法令の規定の適用については、次に定めるところによる。一 法第六十六条の二の二第一項に規定する特別事業再編(以下この条において「特別事業再編」という。)により交付を受けた同項に規定する認定特別事業再編事業者の株式(以下この条において「交付株式」という。)の取得価額は、法人税法施行令第百十九条第一項の規定にかかわらず、当該特別事業再編に係る法第六十六条の二の二第一項に規定する譲渡した株式等(以下この条において「譲渡株式等」という。)のその譲渡の直前の帳簿価額に相当する金額(当該交付株式の交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)とする。

二 交付株式で、その交付の基因となつた特別事業再編に係る譲渡株式等が法人税法施行令第百十九条の十二第一号から第三号までに掲げる有価証券とされていたもの(同令第百十九条の二第二項第二号に掲げる株式及び出資に該当するものを除く。)は、法人税法第六十一条の三第一項第一号に規定する売買目的有価証券とする。
三 特別事業再編による譲渡株式等の譲渡に係る法人税法第六十一条の十三第一項の規定の適用については、法第六十六条の二の二第一項の規定により当該譲渡に係る法人税法第六十一条の二第一項第一号に掲げる金額とされる金額を当該譲渡に係る同法第六十一条の十三第一項に規定する収益の額とする。
2 法第六十六条の二の二第一項に規定する認定特別事業再編事業者に該当する法人が同項に規定する認定に係る特別事業再編計画に係る特別事業再編により譲渡株式等を取得し、交付株式を交付した場合における法人税法その他法人税に関する法令の規定の適用については、次に定めるところによる。
一 当該特別事業再編により取得した譲渡株式等の取得価額は、法人税法施行令第百十九条第一項の規定にかかわらず、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額とする。
イ 当該特別事業再編計画に係る法第六十六条の二の二第一項に規定する認定(ロにおいて「認定」という。)の日において法人税法第二条第十四号に規定する株主等(イ及びロにおいて「株主等」という。)の数が五十人未満である同項に規定する他の法人(以下この号及び次号において「特別事業再編対象法人」という。)の譲渡株式等の取得をした場合 当該特別事業再編対象法人の株主等が有していた当該譲渡株式等の当該取得の直前における帳簿価額(当該株主等が公益法人等又は人格のない社団等であり、かつ、当該譲渡株式等がその収益事業以外の事業に属するものであつた場合には当該譲渡株式等の価額として当該法人の帳簿に記載された金額とし、当該株主等が個人である場合には当該個人が有していた当該譲渡株式等の当該取得の直前における取得価額とする。)に相当する金額(当該譲渡株式等の取得をするために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該特別事業再編計画に係る認定の日において株主等の数が五十人以上である特別事業再編対象法人の譲渡株式等の取得をした場合 当該特別事業再編対象法人の前期期末時(当該特別事業再編対象法人の当該取得の日を含む事業年度の前事業年度(同日以前六月以内に法人税法第七十二条第一項又は第八十一条の二十第一項に規定する期間についてこれらの規定に掲げる事項を記載した同法第二条第三十号に規定する中間申告書又は同条第三十一号の二に規定する連結中間申告書を提出し、かつ、その提出の日から当該取得の日までの間に同条第三十一号に規定する確定申告書又は同条第三十二号に規定する連結確定申告書を提出していなかつた場合には、当該中間申告書又は連結中間申告書に係る同法第七十二条第一項又は第八十一条の二十第一項に規定する期間)終了の時をいう。)の資産の帳簿価額から負債(新株予約権に係る義務を含む。)の帳簿価額を減算した金額(当該前期期末時から当該取得の日までの間に同法第二条第十六号に規定する資本金等の額若しくは同条第十七号の二に規定する連結個別資本金等の額又は利益積立金額若しくは連結個別利益積立金額(法人税法施行令第九条第一項第一号若しくは第六号又は第九条の二第一項第一号若しくは第四号に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合には、その増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算した金額)に相当する金額に当該特別事業再編対象法人の当該取得の日における発行済株式又は出資(当該特別事業再編対象法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに当該取得をした当該譲渡株式等の数又は金額の占める割合を乗ずる方法その他財務省令で定める方法により計算した金額(当該譲渡株式等の取得をするために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
二 当該交付株式の交付に係る法人税法施行令第八条第一項第一号に掲げる金額は、当該特別事業再編により移転を受けた特別事業再編対象法人の譲渡株式等の取得価額(当該譲渡株式等の取得をするために要した費用の額が含まれている場合には、その費用の額を控除した金額)から当該交付株式の交付により増加した資本金の額を減算した金額とする。
三 当該法人が当該交付株式の交付の直後に二以上の種類の株式を発行している場合には、当該交付株式の交付に係る増加した資本金の額及び前号に規定する減算した金額の合計額を当該交付株式の交付の直後の価額の合計額で除し、これに当該交付株式のうち当該種類の株式の当該交付の直後の価額の合計額を乗じて計算した金額を、当該種類の株式に係る法人税法施行令第八条第二項の種類資本金額に加算する。

 

法人税法施行規則第35条第5項、第6項(確定申告書の添付書類)
法第七十四条第三項(確定申告)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げるもの(当該各号に掲げるものが電磁的記録で作成され、又は当該各号に掲げるものの作成に代えて当該各号に掲げるものに記載すべき情報を記録した電磁的記録の作成がされている場合には、これらの電磁的記録に記録された情報の内容を記載した書類)とする。
五 組織再編成(合併、分割、現物出資(新株予約権付社債に付された新株予約権の行使に伴う当該新株予約権付社債についての社債の給付を除く。)、法第二条第十二号の五の二(定義)に規定する現物分配(次号において「現物分配」という。)、株式交換又は株式移転をいう。次号において同じ。)に係る合併契約書、分割契約書、分割計画書、株式交換契約書、株式移転計画書、株式交付計画書その他これらに類するものの写し
六 組織再編成(株式交換、株式移転及び株式交付を除く。)により当該組織再編成に係る合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被現物分配法人その他の株主等に移転した資産若しくは負債の種類その他当該組織再編成に係る主要な事項又は組織再編成(現物分配にあつては、適格現物分配に限る。)により当該組織再編成に係る被合併法人、分割法人、現物出資法人、現物分配法人、株式交換完全子法人の株主、株式移転完全子法人の株主若しくは株式交付子会社(会社法第七百七十四条の三第一項第一号(株式交付計画)に規定する株式交付子会社をいう。以下この号において同じ。)の株主から移転を受けた資産若しくは負債の種類その他当該組織再編成に係る主要な事項に関する明細書(株式交付に係る株式交付子会社の株主から資産の移転を受けた場合には、当該株式交付子会社の株主に対して交付した株式その他の資産の数又は価額の算定の根拠を明らかにする事項を記載した書類を含む。)