非上場株式の評価㉑-分社型分割により高収益事業を子会社に切り出す場合に、分割法人の業種変更による類似業種比準方式の不適用、分割承継法人の純資産価額の計算で営業権が生じる可能性を見落としていないか?

Q評価対象会社である事業会社は、大会社で類似業種比準方式を適用している会社です。今後も業績アップが見込まれることから、分社型分割により中核となる高収益事業を子会社に切り出すことを想定しています。分割対象とする資産負債は、子会社の資本金等の額の増加と不動産流通税負担を抑えるために、事業用の流動資産負債のみとしています。子会社は開業後3年は類似業種比準方式を適用できませんが、評価対象会社が大会社を維持できる場合には、子会社の影響を受けないと考えてよいでしょうか?

A評価対象会社である分割法人が分割前と同業種のまま大会社を維持できるかがポイントです。

解説
分社型分割により主要な事業を分割承継法人に移転することにより、分割前後で分割法人の類似業種が変更となる場合には、分割後に類似業種比準方式が一時的に不適用となる可能性があります。分割をきっかけに分割承継法人への事業用不動産の賃貸を新しい主要な事業として始めるようなケースでは、分割法人は開業3年未満の会社に該当し、開業後3年は類似業種比準方式の適用ができなくなり、純資産価額による評価となります。
一方で、分割承継法人は確実に開業後3年未満の会社に該当し、開業後3年は類似業種比準方式の適用はできなくなり、純資産価額による評価となります。この点につき、分割後の総資産が小さい割に高い収益力を有する会社となる場合には、営業権が生じることも考えられます。営業権の発生により分割承継法人の純資産価額が高額となる場合には、分割法人が株式等保有特定会社に該当する可能性があります。
分割会社が類似業種比準方式(大会社)を維持できない場合には、分割前の株価よりも上昇する可能性があることに留意する必要があります。

財産評価基本通達189-4(土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価)
189((特定の評価会社の株式))の(3)の「土地保有特定会社の株式」又は同項の(4)の「開業後3年未満の会社等の株式」の価額は、185((純資産価額))の本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。この場合における当該各株式の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)については、それぞれ、当該株式の取得者とその同族関係者の有する当該株式に係る議決権の合計数が土地保有特定会社又は開業後3年未満の会社等の185((純資産価額))のただし書に定める議決権総数の50%以下であるときは、上記により計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を基に同項のただし書の定めにより計算した金額とする。
 なお、当該各株式が188((同族株主以外の株主等が取得した株式))に定める同族株主以外の株主等が取得した株式に該当する場合には、その株式の価額は、188-2((同族株主以外の株主等が取得した株式の評価))の本文の定めにより計算した金額(この金額が本項本文の定めによって評価するものとして計算した金額を超える場合には、本項本文の定めにより計算した金額)によって評価する。(平2直評12外追加、平12課評2-4外・平15課評2-15外改正)

 

財産評価基本通達165(営業権の評価)
営業権の価額は、次の算式によって計算した金額によって評価する。(平11課評2-12外・平16課評2-7外・平20課評2-5外改正)

平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額 × 0.05 =超過利益金額
超過利益金額×営業権の持続年数(原則として10年とする。)に応ずる基準年利率による複利年金現価率=営業権の価額

(注) 医師、弁護士等のようにその者の技術、手腕又は才能等を主とする事業に係る営業権で、その事業者の死亡と共に消滅するものは、評価しない。

 

財産評価基本通達166(平均利益金額等の計算)
前項の「平均利益金額」等については、次による。(昭41直資3-19・平16課評2-7外・平20課評2-5外改正)

(1) 平均利益金額
 平均利益金額は、課税時期の属する年の前年以前3年間(法人にあっては、課税時期の直前期末以前3年間とする。)における所得の金額の合計額の3分の1に相当する金額(その金額が、課税時期の属する年の前年(法人にあっては、課税時期の直前期末以前1年間とする。)の所得の金額を超える場合には、課税時期の属する年の前年の所得の金額とする。)とする。この場合における所得の金額は、所得税法第27条((事業所得))第2項に規定する事業所得の金額(法人にあっては、法人税法第22条第1項に規定する所得の金額に損金に算入された繰越欠損金の控除額を加算した金額とする。)とし、その所得の金額の計算の基礎に次に掲げる金額が含まれているときは、これらの金額は、いずれもなかったものとみなして計算した場合の所得の金額とする。

イ 非経常的な損益の額

ロ 借入金等に対する支払利子の額及び社債発行差金の償却費の額

ハ 青色事業専従者給与額又は事業専従者控除額(法人にあっては、損金に算入された役員給与の額)

(2) 標準企業者報酬額
 標準企業者報酬額は、次に掲げる平均利益金額の区分に応じ、次に掲げる算式により計算した金額とする。

  平均利益金額の区分   標準企業者報酬額
1億円以下
1億円超 3億円以下
3億円超 5億円以下
5億円超
平均利益金額 x 0.3 + 1,000万円
平均利益金額 x 0.2 + 2,000万円
平均利益金額 x 0.1 + 5,000万円
平均利益金額 x 0.05 + 7,500万円

(注) 平均利益金額が5,000万円以下の場合は、標準企業者報酬額が平均利益金額の2分の1以上の金額となるので、165((営業権の評価))に掲げる算式によると、営業権の価額は算出されないことに留意する。

(3) 総資産価額
 総資産価額は、この通達に定めるところにより評価した課税時期(法人にあっては、課税時期直前に終了した事業年度の末日とする。)における企業の総資産の価額とする。

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