グループ法人税制①-帳簿価額が1,000万円未満である資産の譲渡損益は繰延対象外である点を見逃していないか?
Q100%グループ内の法人間で株式の持ち合いが生じていたため、株式譲渡により解消することにしました。完全支配関係者間の取引であり、譲渡損益は繰り延べられると考えていますが留意点はありますか?
A株式の帳簿価額が1,000万円未満である場合には、譲渡損益が実現します。
解説
グループ法人税制の適用により、譲渡損益が繰り延べられる資産(譲渡損益調整資産)は、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券(売買目的有価証券は除く)、金銭債権及び繰延資産で、帳簿価額が1,000万円未満の資産は除かれます(法人税法第61条の13、法人税法施行令第122条の14)。
グループ法人税制の適用により譲渡益が繰り延べられることを想定していたにも関わらず、実際にはグループ法人税制の適用外であることが後に判明した場合には、多額の課税が生じる可能性があるため、留意が必要です。特に非上場株式については、簿価と時価との乖離が大きく、多額の含み益となっていることも多いので、特に留意する必要があります。
法人税法第61条の13(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額(その譲渡に係る収益の額が原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)又は譲渡損失額(その譲渡に係る原価の額が収益の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額は、その譲渡した事業年度(その譲渡が適格合併に該当しない合併による合併法人への移転である場合には、次条第二項に規定する最後事業年度)の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。
内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額(その譲渡に係る収益の額が原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)又は譲渡損失額(その譲渡に係る原価の額が収益の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額は、その譲渡した事業年度(その譲渡が適格合併に該当しない合併による合併法人への移転である場合には、次条第二項に規定する最後事業年度)の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。
法人税法施行令第122条の14(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
法第六十一条の十三第一項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
一 法第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券(次号及び第四項第六号において「売買目的有価証券」という。)
二 その譲渡を受けた他の内国法人(法第六十一条の十三第一項の内国法人との間に完全支配関係があるものに限る。以下この条において同じ。)において売買目的有価証券とされる有価証券(前号又は次号に掲げるものを除く。)
三 その譲渡の直前の帳簿価額(その譲渡した資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。)が千万円に満たない資産(第一号に掲げるものを除く。)