非上場株式の評価㉓-評価対象会社が直前期に合併を行っていて、合併前後で会社規模や主たる業種目に変化がある場合に、類似業種比準方式(純資産要素のみを使用する比準要素数1の会社とする)を適用していないか?

Q評価対象会社は直前期に合併を行っており、合併の前後で会社規模や主たる業種目が変化しています。類似業種比準方式を適用し、直前期の純資産要素(D)のみを反映した比準要素数1の会社として評価することで「類似業種比準価額<純資産価額」となりますが、類似業種比準方式の適用はできますか?

A類似業種比準方式の適用はできず、純資産価額による評価が妥当であると考えます。

解説
合併前後で会社規模や主たる業種目が変化している以上、類似業種比準方式の適用は妥当ではないと考えます。直前期末の会社純資産のみを評価に反映させるという前提であれば、比準1の会社として類似業種比準方式に無理に当てはめるよりも、純資産価額方式により計算することが、会社実態を反映した株式評価につながると考えます。

参考
「国税速報5528号(平成15年7月)では、課税時期の前事業年度に合併を行っていた場合の類似業種比準方式の適用について、単体方式(合併法人の比準要素のみを用いる方式)及び合併の前後で会社実態に変化がある場合の合算方式(合併法人と被合併法人の比準要素を合算する方式)に依拠する場合は、比準要素のうち1株当たりの純資産価額は合理的な数値を取りうるものとして、比準要素数1の会社として財産評価基本通達189−2ただし書による併用方式(L=0.25)を適用することも認められる可能性が示唆されていました。ただし、平成28年7月作成の東京国税局資産税審理研修資料では、当該記載は削除されています。

 

財産評価基本通達189−2(比準要素数1の会社の株式の評価)
189((特定の評価会社の株式))の(1)の「比準要素数1の会社の株式」の価額は、185((純資産価額))の本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する(この場合における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)は、当該株式の取得者とその同族関係者の有する当該株式に係る議決権の合計数が比準要素数1の会社の185((純資産価額))のただし書に定める議決権総数の50%以下であるときには、同項の本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を基に同項のただし書の定めにより計算した金額とする。)。ただし、上記の比準要素数1の会社の株式の価額は、納税義務者の選択により、Lを0.25 として、179((取引相場のない株式の評価の原則))の(2)の算式により計算した金額によって評価することができる(この場合における当該算式中の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)は、本項本文かっこ書と同様とする。)。
 なお、当該株式が188((同族株主以外の株主等が取得した株式))に定める同族株主以外の株主等が取得した株式に該当する場合には、その株式の価額は、188-2((同族株主以外の株主等が取得した株式の評価))の本文の定めにより計算した金額(この金額が本項本文又はただし書の定めによって評価するものとして計算した金額を超える場合には、本項本文又はただし書(納税義務者が選択した場合に限る。)の定めにより計算した金額)によって評価する。(平12課評2-4外追加、平15課評2-15外・平29課評2-46外改正) 

(注) 上記の「議決権の合計数」には、188-5((種類株式がある場合の議決権総数等))の「株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数」を含めるものとする。189-3((株式等保有特定会社の株式の評価))及び189-4((土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価))においても同様とする。

関連記事
非上場株式の評価-評価対象会社が直前期に合併を行っていて、合併前後で会社規模や主たる業種目に変化がある場合に、純資産価額方式における営業権の計算上、平均利益金額を合併法人の直前期の利益で計算していないか?