グループ法人税制⑦-完全支配関係者間での寄附による子会社株式の帳簿価額の修正による影響を見逃していないか?

Q  ①P社がA社とB社の株式を100%保有する場合(A社とB社は P社を親会社とする兄弟会社)と、②P社がA社株式を100%、A社がB社株式を 100%保有する場合( P社が親、A社が子、B社が孫)とで、A社からB社に寄附を行なった場合の P社が保有する子会社株式の帳簿価額の修正における違いを教えてくれますか?

A ①の場合にはA社株式の減額、B社株式の増額となりますが、②の場合にはA社株式の減額のみです。

解説
法人による完全支配関係がある場合において、完全支配関係者間で行われた寄附取引について、子会社株式に寄附修正事由が生じる場合には、親会社の保有する子会社株式の帳簿価額を増減させる必要があります(法人税法施行令第9条第1項第7号)。親会社が保有する子会社株式の帳簿価額を修正する規定であるため、①のように親会社(P社)が直接子会社株式(A社株式/B社株式)を保有する場合には、A社株式の減額分がB社株式の増額分となり、寄附前後でA社株式とB社株式の帳簿価額の合計は変わりません。しかし、②のように親会社(P社)が子会社(A社)を介して、孫会社株式(B社株式)を保有する場合には、親会社(P社)においては、子会社であるA社株式の減額分のみの修正となり、孫会社であるB社株式の増加分は修正しません(※)。
P社が2社(A社/B社)の外部売却を検討する場合には、帳簿価額の増減が譲渡損益に影響するため、留意が必要です。

(※)A社において、保有するB社株式の帳簿価額を修正します。

 

法人税法施行令第9条第1項第7号(利益積立金額)

七 当該法人が有する当該法人との間に完全支配関係(連結完全支配関係を除く。)がある法人(以下この号において「子法人」という。)の株式又は出資について寄附修正事由(子法人が他の内国法人から法第二十五条の二第二項に規定する受贈益の額で同条第一項若しくは法第八十一条の三第一項(個別益金額又は個別損金額)(法第二十五条の二第一項に係る部分に限る。)の規定の適用があるものを受け、又は子法人が他の内国法人に対して法第三十七条第七項(寄附金の損金不算入)(法第八十一条の六第六項(連結事業年度における寄附金の損金不算入)において準用する場合を含む。)に規定する寄附金の額で法第三十七条第二項若しくは第八十一条の六第二項の規定の適用があるものを支出したことをいう。以下この号において同じ。)が生ずる場合の当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式又は出資(当該子法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに当該法人が当該直前に有する当該子法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合をいう。以下この号において同じ。)を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額