非上場株式の評価㉖-類似業種比準価額と純資産価額との併用方式(小会社)の同族会社が、不動産を時価よりも著しく低額で取得した場合の株式価値の増加分の計算について、純資産価額における不動産の評価を、安易に課税時期前3年内の取得として通常の取引価額で計算していないか?
Q評価対象会社である同族会社の株式評価方式は、類似業種比準価額と純資産価額との併用方式(小会社)です。当該同族会社が親族から時価よりも著しく低額で取得した場合、同族会社には受贈益課税が行われると思いますが、同族株主の保有する評価対象会社の株式価値の増加(類似業種比準価額及び純資産価額の修正)はどのように計算しますか?
A類似業種比準価額においては、直前期末において本件取引があったものとして計算した1株あたり類似業種比準価額から、本件取引がなかったものとして計算した1株あたり類似業種比準価額との差額により、1株あたり価値の増加を計算します。純資産価額については、本件取引の前後で、1株あたり純資産価額がいくら増加しているか(差額)を計算します。
解説
直前期末に本件取引があったものとして計算する場合の類似業種比準価額は、直前期末の数値を使用した類似業種比準価額の計算過程において、純資産要素(D)のみ修正します。具体的には、同族会社が取得した不動産時価(通常の取引価格)と支払対価との差額(課されるべき法人税等相当額を控除後)を、純資産要素(D)に加算するだけです。
一方で、本件取引後の純資産価額は、同族会社が取得した不動産評価を反映することになりますが、課税時期前3年以内取得不動産であることを理由に(財産評価基本通達185)、「通常の取引価額」とするという考え方と、課税時期前ではなく課税時期(課税時期前ではなく課税時点)に取得しているため、当該通達規定は適用されず、「相続税評価額」とするという考え方があります。この点、平成24年11月13日の裁決事例で、当局は前者を主張しましたが、国税不服審判所の判断は後者となっています。不動産時価(通常の取引価格)と支払対価との差額について、課されるべき法人税等相当額は控除することになります。
財産評価基本通達185 (純資産価額)
179((取引相場のない株式の評価の原則))の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2((評価差額に対する法人税額等に相当する金額))により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。ただし、179((取引相場のない株式の評価の原則))の(2)の算式及び(3)の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)については、株式の取得者とその同族関係者(188((同族株主以外の株主等が取得した株式))の(1)に定める同族関係者をいう。)の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合においては、上記により計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)に100 分の80を乗じて計算した金額とする。(昭47直資3-16・昭53直評5外・昭58直評5外・平2直評12外・平12課評2-4外・平15課評2-15外・平18課評2-27外改正)
(注)
1 1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算を行う場合の「発行済株式数」は、直前期末ではなく、課税時期における発行済株式数であることに留意する。
2 上記の「議決権の合計数」及び「議決権総数」には、188-5((種類株式がある場合の議決権総数等))の「株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数」を含めるものとする。