非上場株式の評価㉕-類似業種比準方式の適用会社(大会社)の同族会社が、株式を時価よりも低額で取得した場合の同族株主の保有する評価会社株式の価値の増加分の計算について、類似業種比準価額の純資産要素(D)の修正の際に、課されるべき法人税等相当額を控除せずに計算していないか?
Q評価対象会社である同族会社の株式評価方式は、類似業種比準方式(大会社)です。当該同族会社がグループ会社株式を集約して子会社化する際に、少数株主から配当還元価額で取得した場合、同族会社には受贈益課税が行われると思いますが、同族株主の保有する評価会社株式の価値の増加(類似業種比準価額の修正)はどのように計算しますか?
A直前期末において本件取引があったものとして計算した1株あたり類似業種比準価額から、本件取引がなかったものとして計算した1株あたり類似業種比準価額との差額により、1株あたり価値の増加を計算します。
解説
直前期末に本件取引があったものとして計算する場合の類似業種比準価額は、直前期末の数値を使用した類似業種比準価額の計算過程において、純資産要素(D)のみ修正します。具体的には、同族会社が取得した法人税法上の株式時価と配当還元価額との差額(課されるべき法人税等相当額を控除後)を、純資産要素(D)に加算するだけです。
同族会社が時価より著しく低い価額で財産を取得し、株主の保有する株式価値が増加した場合には、当該財産の譲渡をした者から株主が贈与を受けたものとされます(相続税法基本通達9−2)
判例及び裁決事例
平成26年10月29日東京地裁、平成27年4月22日東京高裁
平成24年11月13日裁決事例
相続税法基本通達9−2(株式又は出資の価額が増加した場合)
同族会社(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第10号に規定する同族会社をいう。以下同じ。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。(昭57直資7-177改正、平15課資2-1改正)
(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者
(2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者
(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者
(4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者