グループ法人税制⑪- 完全支配関係にある子会社を整理/再建する場合の留意点を見逃していないか?
Q 100%グループ内の子会社を支援するために、合理的な再建計画に基づく債権放棄を行う予定です。グループ法人税制に関する留意事項があれば教えてくれますか?
A 合理的な再建計画に基づく債権放棄損は寄附金に該当しないため、親会社側で損金に算入されるとともに、子会社側の債務消滅益は益金に算入されます。
解説
子会社の整理について、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることに相当な理由のある場合(法人税基本通達9−4−1)、子会社の再建について、倒産防止のための合理的な再建計画に基づくといった相当な理由がある場合(法人税基本通達9−4−2)については、その損失負担金や債権放棄損は寄附金に該当しないため、グループ法人税制における寄附金の損金不算入規定は適用されません(法人税法第37条第2項)。子会社側でも寄附金に対応する受贈益ではないため、益金不算入規定は適用されません(法人税法第25条の2第1項)。
内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額(第三十七条(寄附金の損金不算入)又は第八十一条の六(連結事業年度における寄附金の損金不算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入される第三十七条第七項(第八十一条の六第六項において準用する場合を含む。)に規定する寄附金の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
法人税基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)
法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下9-4-1において「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)
(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる(以下9-4-2において同じ。)。
法人税基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)
法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)
(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。
国税庁 質疑応答事例(完全支配関係にある内国法人間の支援損について)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/13/28.htm