グループ法人税制⑬- 親子間の取引で生じた繰延譲渡損益について、親子間の合併/子会社の清算で戻し入れる事業年度を見逃していないか?

Q 100%グループ内の子会社の合併又は清算を検討しています。以前親子間での不動産取引時に、親会社側で繰延譲渡益を計上しています。繰延譲渡益を戻し入れる事業年度について教えてくれますか?

A 合併の場合は、合併の日の前日の属する事業年度に、清算の場合は、残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度に、親会社は繰延譲渡益を戻し入れます。

解説
繰延譲渡損益については、譲渡法人が譲渡損益調整資産の譲受法人との間に「完全支配関係を有しないこととなったとき」は、完全支配関係を有しないこととなった日の前日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされています(法人税法第61の13第3項)。

被合併法人においては、合併の日の前日で事業年度が区切られるため(法人税法第14条第1項第2号)、「完全支配関係を有しないこととなったとき」は合併の日の前日となり、譲渡法人(合併法人)は当該日の属する事業年度に、繰延譲渡損益の戻入処理を行います。

清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定した場合には、事業年度開始の日から残余財産の確定の日までが事業年度となりますが(法人税法第14条第1項第21号)、残余財産が実際に分配されるのはその先の日となります。ここで「完全支配関係を有しないこととなったとき」を残余財産の確定日とするか、残余財産の分配日とするかは条文に規定されていません。国税庁の質疑応答事例によると、清算中の法人においては、「完全支配関係を有しないこととなったとき」を残余財産の確定の日の翌日と解して、譲渡法人は当該日の属する事業年度に繰延譲渡損益の戻入処理を行うこととされています。

 

法人税法第61条の13第3項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
 
3 内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき第一項の規定の適用を受けた場合(当該譲渡損益調整資産の適格合併に該当しない合併による合併法人への移転により同項の規定の適用を受けた場合を除く。)において、当該内国法人が当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなつたとき(次に掲げる事由に基因して完全支配関係を有しないこととなつた場合を除く。)は、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(その有しないこととなつた日の前日の属する事業年度前の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額を除く。)は、当該内国法人の当該前日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 当該内国法人の適格合併(合併法人(法人を設立する適格合併にあつては、他の被合併法人の全て。次号において同じ。)が当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る。)による解散
二 当該譲受法人の適格合併(合併法人が当該譲受法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る。)による解散

 

法人税法第14条第1項第2号、第21号(みなし事業年度)
 
二 法人が事業年度の中途において合併により解散した場合(第十号に掲げる場合を除く。) その事業年度開始の日から合併の日の前日までの期間
 
二十一 清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定した場合(第十号に掲げる場合を除く。) その事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間

 

国税庁 質疑応答事例(清算結了する場合におけるグループ法人税制で繰り延べた譲渡損益の取扱いについて)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/04/17.htm