グループ法人税制⑮-完全支配関係者間で行われた適格合併においては、繰延譲渡損益の繰延処理が継続される点を見逃していないか?

Q 5年前に100%グループ内の法人間で不動産の譲渡を行い、譲渡法人側で繰延譲渡損益が生じており、譲受法人は現在も不動産を保有しています。譲渡法人、譲受法人のいずれかを完全支配関係にある別のグループ会社と合併することを検討していますが、繰延譲渡損益の戻入事由となりますか?

A いずれの会社を合併した場合も、戻入事由にはなりません。

解説
過去の譲渡損益調整資産の譲渡取引により、繰延処理の適用を受けている会社が、完全支配関係にある別のグループ会社と合併した場合、繰延譲渡損益については、別のグループ会社(合併法人)が繰延処理の適用を受けた法人とみなしてその処理を引継ぎます。譲渡法人、譲受法人のいずれが合併により消滅した場合でも、繰延処理を継続します(法人税法第61条の13第5項、第6項)。ただし、あくまでも完全支配関係にあるグループ会社との適格合併に限られ、完全支配関係にない会社との適格合併においては、繰延譲渡損益の戻入処理を行うことになります。

 

法人税法第61条の13第5項、第6項

5 内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき第一項の規定の適用を受けた場合において、当該内国法人が適格合併(合併法人(法人を設立する適格合併にあつては、他の被合併法人の全て)が当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る。)により解散したときは、当該適格合併に係る合併法人の当該適格合併の日の属する事業年度以後の各事業年度においては、当該合併法人を当該譲渡利益額又は譲渡損失額につき同項の規定の適用を受けた法人とみなして、この条の規定を適用する。
 
6 内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき第一項の規定の適用を受けた場合において、当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(法人を設立する適格合併、適格分割又は適格現物出資にあつては、他の被合併法人、他の分割法人又は他の現物出資法人の全て)が当該譲受法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る。)により合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(以下この項において「合併法人等」という。)に当該譲渡損益調整資産を移転したときは、その移転した日以後に終了する当該内国法人の各事業年度においては、当該合併法人等を当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人とみなして、この条の規定を適用する。