グループ法人税制⑰-完全支配関係者グループで譲渡損益調整資産を転売した場合にも、繰延譲渡損益の戻入事由となることを見逃していないか?
Q A社とB社とC社は100%グループの関係です。過去にA社からB社に譲渡損益調整資産の譲渡取引を行いましたが、今度は当該資産をB社からC社に転売することになりました。A社で繰り延べている譲渡損益はどうなりますか?
A A社は繰延譲渡損益を戻し入れ、B社が譲渡損益の繰延処理を行います。
解説
譲渡損益調整資産の譲受法人が、グループ外へ当該資産を譲渡した場合には、グループ法人税制の適用を受けていた譲渡法人において、繰延譲渡損益を戻し入れることになりますが、完全支配関係者グループの別法人に転売した場合にも、繰延譲渡損益を戻し入れることになります(法人税法施行令第122条の14第4項第1号イ)。なお、譲渡法人が当該資産の買い戻しを行った場合も、繰延譲渡損益は戻し入れることになります。
グループ法人税制における譲渡損益調整資産の繰延制度は、完全支配関係のあるグループ内取引においては譲渡損益を実現させないとものと考えがちですが、転売が続いた場合、各譲渡法人が繰延譲渡損益を管理し続けることは困難です。したがって、2回目の譲渡(転売又は買い戻し)が行われると、必ず1回目の譲渡取引で適用された繰延譲渡損益を戻し入れることになります。
法人税法施行令第122条の14第4項第1号イ
4 法第六十一条の十三第二項に規定する政令で定める事由は、次の各号に掲げる事由(同条第六項の規定の適用があるものを除く。)とし、内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額(同条第一項に規定する譲渡損失額をいう。以下この条において同じ。)につき法第六十一条の十三第一項の規定の適用を受けた場合において、当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人(同条第二項に規定する譲受法人をいう。以下この条において同じ。)において当該事由が生じたときは、当該各号に掲げる事由の区分に応じ当該各号に定める金額(当該各号に定める金額と当該譲渡利益額又は譲渡損失額に係る調整済額とを合計した金額が当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)は、当該事由が生じた日の属する当該譲受法人の事業年度又は連結事業年度終了の日の属する当該内国法人の事業年度(当該譲渡損益調整資産につき法第六十一条の十三第三項又は第四項の規定の適用を受ける事業年度以後の事業年度を除く。)の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 次に掲げる事由 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額
イ 当該譲渡損益調整資産の譲渡、貸倒れ、除却その他これらに類する事由(次号から第八号までに掲げる事由を除く。)
ロ 当該譲渡損益調整資産の適格分割型分割による分割承継法人への移転
ハ 普通法人又は協同組合等である当該譲受法人が公益法人等に該当することとなつたこと。
二 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において、法第二十五条第二項(資産の評価益の益金不算入等)に規定する評価換えによりその帳簿価額を増額され、その増額された部分の金額が益金の額に算入されたこと又は同条第三項に規定する資産に該当し、当該譲渡損益調整資産の同項に規定する評価益の額として政令で定める金額が益金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額
三 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において減価償却資産に該当し、その償却費が損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額に、当該譲受法人における当該譲渡損益調整資産の取得価額のうちに当該損金の額に算入された金額の占める割合を乗じて計算した金額
四 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において繰延資産に該当し、その償却費が損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額に、当該譲受法人における当該譲渡損益調整資産の額のうちに当該損金の額に算入された金額の占める割合を乗じて計算した金額
五 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において、法第三十三条第二項(資産の評価損の損金不算入等)に規定する評価換えによりその帳簿価額を減額され、当該譲渡損益調整資産の同項に規定する差額に達するまでの金額が損金の額に算入されたこと、同条第三項に規定する評価換えによりその帳簿価額を減額され、その減額された部分の金額が損金の額に算入されたこと又は同条第四項に規定する資産に該当し、当該譲渡損益調整資産の同項に規定する評価損の額として政令で定める金額が損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額
六 有価証券である当該譲渡損益調整資産と銘柄を同じくする有価証券(売買目的有価証券を除く。)の譲渡(当該譲受法人が取得した当該銘柄を同じくする有価証券である譲渡損益調整資産の数に達するまでの譲渡に限る。) 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額のうちその譲渡をした数に対応する部分の金額
七 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において第百十九条の十四(償還有価証券の帳簿価額の調整)に規定する償還有価証券(以下この号において「償還有価証券」という。)に該当し、当該譲渡損益調整資産につき第百三十九条の二第一項(償還有価証券の調整差益又は調整差損の益金又は損金算入)に規定する調整差益又は調整差損が益金の額又は損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(既にこの号に掲げる事由が生じたことによる調整済額がある場合には、当該調整済額を控除した金額)に、当該内国法人の当該事業年度開始の日から当該償還有価証券の償還日までの期間の日数のうちに当該内国法人の当該事業年度の日数の占める割合を乗じて計算した金額
八 当該譲渡損益調整資産が譲受法人において法第六十一条の十一第一項(連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益)に規定する時価評価資産に該当し、当該譲渡損益調整資産につき同項に規定する評価益又は評価損が益金の額又は損金の額に算入されたこと 当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額