事業承継税制②-自社株の低額譲受の場合にも贈与税の納税猶予の適用が受けられると考えていないか?
Q 後継者が自社株を時価よりも低額で買い受けた場合でも、贈与税の納税猶予の適用は受けられますか?
A 受けられないと考えられます。
解説
贈与税の納税猶予の適用を受けるためには、後継者が贈与による自社株の取得について、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(円滑化法)の認定を受ける必要があります。円滑化法は遺留分に関する民法の特例が定められている法律です。民法における贈与とは、財産を無償で相手に与える行為で(民法第549条)、有償で財産権が移転する売買(民法第555条)とは異なる行為です。納税猶予の適用が受けられるのは、贈与、相続、遺贈による取得の場合とされているため、売買の場合には、納税猶予の適用は受けられないと考えられます。
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 第1条(目的)
第一条 この法律は、多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、多様な就業の機会を提供すること等により我が国の経済の基盤を形成している中小企業について、代表者の死亡等に起因する経営の承継がその事業活動の継続に影響を及ぼすことにかんがみ、遺留分に関し民法(明治二十九年法律第八十九号)の特例を定めるとともに、中小企業者が必要とする資金の供給の円滑化等の支援措置を講ずることにより、中小企業における経営の承継の円滑化を図り、もって中小企業の事業活動の継続に資することを目的とする。
民法第549条(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
民法第555条(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。