非上場株式の評価㉗-従業員持株会に対する第三者割当増資時の割当株数を純資産価額で計算していないか?
Qオーナーが株式を100%保有する事業会社において、従業員持株会を設立しようと考えています。発行済株式総数の10%程度を目処に、第三者割当増資により新株を発行します。増資払込時に割り当てる1株あたり株価を配当還元価額とすることは可能でしょうか?
A可能です。
解説
少数株主である従業員にとっては、株式投資による回収手段は配当のみとなります(出資額=退会時の払戻価額)。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る1年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方式であるため、価額の合理性はあると考えます(有利発行にかかる法人税法上、所得税法上における規定は以下を参照)。
有利発行にかかる法人税法上の規定
法人税法施行令第119条第1項第4号(有価証券の取得価額)
内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
四 有価証券と引換えに払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額が払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額である場合における当該払込み又は当該給付(以下この号において「払込み等」という。)により取得をした有価証券(新たな払込み等をせずに取得をした有価証券を含むものとし、法人の株主等が当該株主等として金銭その他の資産の払込み等又は株式等無償交付により取得をした当該法人の株式又は新株予約権(当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式又は新株予約権に限る。)、第二十号に掲げる有価証券に該当するもの及び適格現物出資により取得をしたものを除く。) その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額
法人税基本通達2-3-7(通常要する価額に比して有利な金額)
令第119条第1項第4号《有利発行により取得した有価証券の取得価額》に規定する「払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額」とは、当該株式の払込み又は給付の金額(以下2-3-7において「払込金額等」という。)を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいうものとする。(平12年課法2-7「四」により追加、平19年課法2-3「十」、平19年課法2-17「五」により改正)
(注)
1 社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかは、当該株式の価額と払込金額等の差額が当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるかどうかにより判定する。
2 払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額とは、決定日の価額のみをいうのではなく、決定日前1月間の平均株価等、払込金額等を決定するための基礎として相当と認められる価額をいう。
法人税基本通達2-3-8(他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認めれらる場合)
令第119条第1項第4号《有利発行により取得した有価証券の取得価額》に規定する「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは、株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ、かつ、その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいうことに留意する。(平12年課法2-7「四」により追加、平14年課法2-1「九」、平19年課法2-3「十」により改正)
(注) 他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に該当するか否かについては、例えば、新株予約権無償割当てにつき会社法第322条《ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会》の種類株主総会の決議があったか否かのみをもって判定するのではなく、その発行法人の各種類の株式の内容、当該新株予約権無償割当ての状況などを総合的に勘案して判定する必要がある。
法人税基本通達2-3-9(通常要する価額に比して有利な金額で新株等が発行された場合における有価証券の価額)
令第119条第1項第4号《有利発行により取得した有価証券の取得価額》に規定する有価証券の取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次による。(平12年課法2-7「四」により追加、平17年課法2-14「四」、平19年課法2-3「十」、令2年課法2-17「三」により改正)
(1) 新株が令第119条の13第1項第1号から第3号まで《市場有価証券の時価評価金額》に掲げる有価証券(以下2-3-9において「市場有価証券」という。)である場合 その新株の払込み又は給付に係る期日(払込み又は給付の期間を定めたものにあっては、その払込み又は給付をした日。以下2-3-9において「払込期日」という。)における当該新株の4-1-4《市場有価証券等の価額》に定める価額
(2) 旧株は市場有価証券であるが、新株は市場有価証券でない場合 新株の払込期日における旧株の4-1-4に定める価額を基準として当該新株につき合理的に計算される価額
(3) (1)及び(2)以外の場合 その新株又は出資の払込期日において当該新株につき4-1-5及び4-1-6《市場有価証券等以外の株式の価額》に準じて合理的に計算される当該払込期日の価額
有利発行にかかる所得税法上の規定
所得税法施行令第84条第3項第3号(譲渡制限付株式の価額等)
3 発行法人から次の各号に掲げる権利で当該権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されているものを与えられた場合(株主等として与えられた場合(当該発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)を除く。)における当該権利に係る法第三十六条第二項の価額は、当該権利の行使により取得した株式のその行使の日(第三号に掲げる権利にあつては、当該権利に基づく払込み又は給付の期日(払込み又は給付の期間の定めがある場合には、当該払込み又は給付をした日))における価額から次の各号に掲げる権利の区分に応じ当該各号に定める金額を控除した金額による。
三 株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合における当該株式を取得する権利(前二号に掲げるものを除く。) 当該権利の行使に係る当該権利の取得価額にその行使に際し払い込むべき額を加算した金額
所得税法基本通達23~35共-7(株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合)
令第84条第3項第3号に規定する「株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合」とは、その株式と引換えに払い込むべき額を決定する日の現況におけるその発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下る金額である場合をいうものとする。(昭49直所2-23追加、平10課法8-2、課所4-5、平14課個2-5、課資3-3、課法8-3、課審3-118、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平28課個2-22、課審5-18、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12、令2課個2-11、課法11-3、課審5-6改正)
(注)
1 社会通念上相当と認められる価額を下る金額であるかどうかは、当該株式の価額と当該株式と引換えに払い込むべき額との差額が当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるかどうかにより判定する。
2 株式と引換えに払い込むべき額を決定する日の現況における株式の価額とは、決定日の価額のみをいうのではなく、決定日前1月間の平均株価等、当該株式と引換えに払い込むべき額を決定するための基礎として相当と認められる価額をいう。