非上場株式の評価㉘-個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者(法人税法施行令第4条第6項)の規定を、評価対象会社の株主の議決権判定に適用していないか?

Q評価対象会社(A社)は、形式的な議決権判定においては同族株主のいない会社に該当します。創業家の議決権割合は14%であり、配当還元方式の適用が可能となっています。気になるのは、創業家が株式を保有していない別会社(B社)がA社の議決権の20%を保有しており、B社の取締役の過半数が創業家の親族で占められていることです。法人税法施行令第4条第6項の(個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者)にB社が該当し、創業家がA社の同族株主に該当して原則評価の適用となる可能性はありますか?

A法人税法施行令第4条第6項により、B社の保有するA社の議決権が創業家の保有するA社の議決権に合算されて、同族株主と判断されることはないと考えます。ただし、創業家が実質的にA社を支配している場合には、創業家の株式評価において、原則評価が適用となる可能性は十分にあります。

解説
財産評価基本通達188(1)で定められた「同族関係者」の定義として、法人税法施行令第4条第6項(個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合には、当該者が有する議決権は当該個人又は法人が有するものとみなす)が規定されています。したがって、同条6項は、同族関係者に含まれるかどうかの判断(議決権総数の50%超を保有しているか等)においては適用されますが、評価対象会社における株主の議決権割合の判定そのものに適用されるわけではないと判示されています。

参考判例
平成29年8月30日東京地裁判決

 

財産評価基本通達188(1)(同族株主以外の株主等が取得した株式)
178≪取引相場のない株式の評価上の区分≫の「同族株主以外の株主等が取得した株式」は、次のいずれかに該当する株式をいい、その株式の価額は、次項の定めによる。(昭47直資3-16・昭53直評5外・昭58直評5外・平15課評2-15外・平18課評2-27外改正)

(1) 同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式
 この場合における「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令第4条((同族関係者の範囲))に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。以下同じ。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。

 

 

法人税法施行令第4条第6項(同族関係者の範囲)
法第二条第十号(同族会社の意義)に規定する政令で定める特殊の関係のある個人は、次に掲げる者とする。
 一 株主等の親族
 二 株主等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
 三 株主等(個人である株主等に限る。次号において同じ。)の使用人
 四 前三号に掲げる者以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
 五 前三号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

2 法第二条第十号に規定する政令で定める特殊の関係のある法人は、次に掲げる会社とする。
 一 同族会社であるかどうかを判定しようとする会社(投資法人を含む。以下この条において同じ。)の株主等(当該会社が自己の株式(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十四項(定義)に規定する投資口を含む。以下同じ。)又は出資を有する場合の当該会社を除く。以下この項及び第四項において「判定会社株主等」という。)の一人(個人である判定会社株主等については、その一人及びこれと前項に規定する特殊の関係のある個人。以下この項において同じ。)が他の会社を支配している場合における当該他の会社
 二 判定会社株主等の一人及びこれと前号に規定する特殊の関係のある会社が他の会社を支配している場合における当該他の会社
 三 判定会社株主等の一人及びこれと前二号に規定する特殊の関係のある会社が他の会社を支配している場合における当該他の会社

3 前項各号に規定する他の会社を支配している場合とは、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合をいう。
 一 他の会社の発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合
 二 他の会社の次に掲げる議決権のいずれかにつき、その総数(当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除く。)の百分の五十を超える数を有する場合
  イ 事業の全部若しくは重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転又は現物出資に関する決議に係る議決権
  ロ 役員の選任及び解任に関する決議に係る議決権
  ハ 役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社が供与する財産上の利益に関する事項についての決議に係る議決権
  ニ 剰余金の配当又は利益の配当に関する決議に係る議決権
 三 他の会社の株主等(合名会社、合資会社又は合同会社の社員(当該他の会社が業務を執行する社員を定めた場合にあつては、業務を執行する社員)に限る。)の総数の半数を超える数を占める場合

4 同一の個人又は法人(人格のない社団等を含む。以下同じ。)と第二項に規定する特殊の関係のある二以上の会社が、判定会社株主等である場合には、その二以上の会社は、相互に同項に規定する特殊の関係のある会社であるものとみなす。

5 法第二条第十号に規定する政令で定める場合は、同号の会社の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)の三人以下並びにこれらと同号に規定する政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の第三項第二号イからニまでに掲げる議決権のいずれかにつきその総数(当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除く。)の百分の五十を超える数を有する場合又はその会社の株主等(合名会社、合資会社又は合同会社の社員(その会社が業務を執行する社員を定めた場合にあつては、業務を執行する社員)に限る。)の総数の半数を超える数を占める場合とする。

6 個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合には、当該者が有する議決権は当該個人又は法人が有するものとみなし、かつ、当該個人又は法人(当該議決権に係る会社の株主等であるものを除く。)は当該議決権に係る会社の株主等であるものとみなして、第三項及び前項の規定を適用する。