事業承継税制⑨-納税猶予適用後に株式移転を行った場合の適用継続要件のうち、事業開始年度の留意点を見逃していないか?

Q 自社株の納税猶予制度適用後に、適用会社が株式移転を行った場合で、猶予を継続するために特に気をつける点を教えてくれますか?

A 新設された株式移転完全親法人の設立初年度から、従業員1人以上の雇用、売上の計上が必要です。

解説
株式移転後の新設法人である株式移転完全親会社で、従業員を1人以上雇用する必要があり、設立初年度から主たる事業による収入(営業外収益、特別利益以外)が1円以上必要となります(租税措置法第70条の7第2項第1号イへ、租税特別措置法施行規則第23条の9第21項第1号)。
主たる事業による収入として、子会社からの配当収入は含まれないと考えられます。税目は異なりますが、法人税法上、株式の保有のみでは固定施設を要する等の組織再編税制における事業としての要件を充足しません(法人税法施行規則第3条)。したがって、株式移転完全親法人が受け取る配当収入については、主たる事業による収入として認められない可能性が高いと考えます。

 

租税措置法第70条の7第2項第1号イへ(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例)
 
イ 当該会社の常時使用従業員(常時使用する従業員として財務省令で定めるものをいう。ホ、次項第二号及び第三十項において同じ。)の数が一人以上であること。
 
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、会社の円滑な事業の運営を確保するために必要とされる要件として政令で定めるものを備えているものであること。

 

租税特別措置法施行令第40条の8第10項第1号(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除)
 
10 法第七十条の七第二項第一号ヘに規定する政令で定める要件は、次に掲げる要件とする。
 
一 法第七十条の七第二項第一号に規定する円滑化法認定を受けた会社の同条第一項の規定の適用に係る贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度(当該贈与の日が当該贈与の日の属する事業年度の末日である場合には、当該贈与の日の属する事業年度及び当該事業年度の直前の事業年度)における総収入金額(主たる事業活動から生ずる収入の額とされるべきものとして財務省令で定めるものに限る。)が、零を超えること。

 

租税特別措置法施行規則第23条の9第6項(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除)
 
6 法第七十条の七第三項第十号及び施行令第四十条の八第十項第一号に規定する主たる事業活動から生ずる収入の額とされるべきものとして財務省令で定めるものは、認定贈与承継会社の総収入金額のうち会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)第八十八条第一項第四号に掲げる営業外収益及び同項第六号に掲げる特別利益以外のものとする。

 

租税特別措置法施行規則第23条の9第21項第1号(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除)
 
21 法第七十条の七第三項第十四号に規定する財務省令で定める場合は、同号の株式交換等がその効力を生ずる日において次に掲げる要件の全てを満たしている場合とする。
一 当該株式交換等に係る交換等承継会社が法第七十条の七第二項第一号イからヘまでに掲げる要件を満たしていること。
二 法第七十条の七第一項の規定の適用を受ける経営承継受贈者が前号の交換等承継会社及び同条第三項第十四号の認定贈与承継会社の代表権を有していること。
三 前号の経営承継受贈者及び当該経営承継受贈者と法第七十条の七第二項第三号ハに規定する特別の関係がある者の有する第一号の交換等承継会社の非上場株式等に係る議決権の数の合計が、当該交換等承継会社に係る総株主等議決権数の百分の五十を超える数であること。
四 第二号の経営承継受贈者が有する第一号の交換等承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が、当該経営承継受贈者と前号に規定する特別の関係がある者のうちいずれの者が有する当該交換等承継会社の非上場株式等に係る議決権の数をも下回らないこと。
五 当該株式交換等に際して第一号の交換等承継会社が交付しなければならない株式及び出資以外の金銭その他の資産(剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産を除く。)の交付がされていないこと。