事業承継税制⑫-納税猶予適用後に分割型分割を行った場合の取消し事由を見逃していないか?

Q 自社株の納税猶予制度適用後に、適用会社が分割型分割を行った場合で、猶予を継続するために気をつける点を教えてくれますか?

A 分割対価が分割承継法人株式である場合には、猶予税額の納付が生じます。

解説
経営承継期間中に分割型分割を行った場合は、納税猶予の取消し事由に該当し、猶予税額の全額を納付することになります(租税特別措置法第70条の7第3項第7号)。経営承継期間経過後に分割型分割を行った場合は、猶予税額のうち、分割対価として交付された分割承継会社の株式の価額に対応する猶予税額を納付することになります(租税特別措置法第70条の7第5項第5号)。
ただし、分割承継会社の株式以外のみを分割対価とする分割型分割の場合には、納税猶予の取消し事由とはなりません(措置法基本通達70の7-27)。

 

租税特別措置法第70条の7第3項第7号

3 経営贈与承継期間内に第一項の規定の適用を受ける経営承継受贈者又は同項の対象受贈非上場株式等(合併により当該対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が消滅した場合その他の財務省令で定める場合には、当該対象受贈非上場株式等に相当するものとして財務省令で定めるもの。以下この条において同じ。)に係る認定贈与承継会社について次の各号に掲げる場合のいずれかに該当することとなつた場合には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める日から二月を経過する日(当該各号に定める日から当該二月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。以下この条において同じ。)が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があつたことを知つた日の翌日から六月を経過する日)をもつて同項の規定による納税の猶予に係る期限とする。

七 第五項の表の第五号の上欄又は同表の第六号の上欄に掲げる場合 それぞれ同表の第五号の下欄又は同表の第六号の下欄に掲げる日

 

租税特別措置法第70条の7第5項第5号

5 経営贈与承継期間の末日の翌日から猶予中贈与税額に相当する贈与税の全部につき第一項、この項、第十一項、第十二項又は第十四項の規定による納税の猶予に係る期限が確定する日までの間において、第一項の規定の適用を受ける経営承継受贈者又は同項の対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について次の表の各号の上欄に掲げる場合に該当することとなつた場合には、当該各号の中欄に掲げる金額に相当する贈与税については、同項の規定にかかわらず、当該各号の下欄に掲げる日から二月を経過する日(当該各号の下欄に掲げる日から当該二月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があつたことを知つた日の翌日から六月を経過する日)をもつて同項の規定による納税の猶予に係る期限とする。

五 当該認定贈与承継会社が会社分割をした場合(当該会社分割に際して吸収分割承継会社等(会社法第七百五十七条に規定する吸収分割承継会社又は同法第七百六十三条第一項に規定する新設分割設立会社をいう。)の株式等を配当財産とする剰余金の配当があつた場合に限る。)
猶予中贈与税額のうち、当該会社分割に際して認定贈与承継会社から配当された当該吸収分割承継会社等の株式等の価額に対応する部分の額として政令で定めるところにより計算した金額
当該会社分割がその効力を生じた日

 

[措置法第70条の7((非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除))関係]

70の7-27(会社分割をした場合等の意義) 措置法第70条の7第5項の表の第5号上欄に掲げる場合には、株式等以外のみを配当財産とする剰余金の配当があった場合は含まれないことに留意する。
 また、同号下欄の「会社分割がその効力を生じた日」とは、吸収分割の場合には吸収分割契約において定めたその効力を生ずる日をいい、新設分割の場合には新設分割設立会社の成立の日(設立登記の日)をいうことに留意する。(平21課資2-7追加、平29課資2-14)