事業承継税制⑯-外国子会社株式を保有する場合において、贈与税の納税猶予から相続税の納税猶予への切替時の留意点を見逃していないか?

Q 自社株の贈与税の納税猶予の適用を検討しています。対象会社は、今後大きな成長が見込まれている外国子会社の株式を保有しています。贈与税の納税猶予の適用を受けた後、相続税の納税猶予に切り替えることを検討していますが、留意事項があれば教えてくれますか?

A 贈与税の納税猶予の適用を受けて相続税の納税猶予の適用に切り替えるよりも、相続税の納税猶予から適用を受ける方が、納税猶予額が大きくなる可能性があります。

解説
贈与税及び相続税のいずれの納税猶予額を計算する際にも、外国子会社が対象会社の特別関係会社に該当する場合には、外国子会社株式の価値を除外して対象会社の株価を計算します。贈与税の納税猶予を適用し、相続税の納税猶予の適用へ切り替える場合には、相続税の納税猶予の対象となる株価を再計算することになりますが、この計算においては、贈与税の納税猶予適用時の株価(外国子会社株式価値を含む)を基礎として、相続時の対象会社の純資産割合(純資産価額に占める外国子会社株式価値を除いて計算した純資産割合)を乗じて、対象会社が保有する外国子会社株式の価値を除外した株価を算出することになります(※)(租税特別措置法第70条の7の4、租税特別措置法施行規則第23条の12第3項、措置法基本通達70の7の4ー6)。

※相続税の課税価格の計算の基礎に算入された株価(贈与税の納税猶予適用時に外国子会社の価値を除外して計算した株価)を上限とします。

したがって、贈与税の納税猶予時に除外して計算した外国子会社の価値が、相続税の納税猶予適用時(切替時)までに上昇した場合には、対象会社の純資産価額に占める外国子会社の価値の割合が増加することにより、贈与税の納税猶予額よりも、相続税の納税猶予額が減少することがあり得ます。また、贈与税の納税猶予の適用を受け、相続税の納税猶予の適用に切り替えるよりも、相続税の納税猶予から適用を受ける方が、納税猶予額が大きくなる可能性がある点にも留意が必要です。

 

租税特別措置法第70条の7の4(非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除)
 
四 納税猶予分の相続税額 イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した残額をいう。
イ 前項の規定の適用に係る対象相続非上場株式等の価額(当該対象相続非上場株式等に係る認定相続承継会社又は当該認定相続承継会社の特別関係会社であつて当該認定相続承継会社との間に支配関係がある法人(イにおいて「認定相続承継会社等」という。)が会社法第二条第二号に規定する外国会社(当該認定相続承継会社の特別関係会社に該当するものに限る。)その他政令で定める法人の株式等(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項に規定する投資口を含む。)を有する場合には、前項の対象受贈非上場株式等の第七十条の七第一項の規定の適用に係る贈与の時における当該認定相続承継会社の株式等の価額を基礎とし、当該認定相続承継会社等が当該外国会社その他政令で定める法人の株式等を有していなかつたものとして財務省令で定めるところにより計算した価額。ロにおいて同じ。)を前項の経営相続承継受贈者に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第十三条から第十九条までの規定を適用して政令で定めるところにより計算した当該経営相続承継受贈者の相続税の額
ロ 前項の規定の適用に係る対象相続非上場株式等の価額に百分の二十を乗じて計算した金額を同項の経営相続承継受贈者に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第十三条から第十九条までの規定を適用して政令で定めるところにより計算した当該経営相続承継受贈者の相続税の額

 

租税特別措置法施行規則第23条の12第3項(非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除)
 
3 法第七十条の七の四第二項第四号イに規定する財務省令で定めるところにより計算した価額は、第一号に掲げる金額に第二号に掲げる割合を乗じて計算した金額(当該金額が法第七十条の七の三第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により相続税の課税価格の計算の基礎に算入された同条第一項前段の対象受贈非上場株式等の価額を超える場合には、当該対象受贈非上場株式等の価額)とする。
一 法第七十条の七の三第一項の規定により相続税の課税価格の計算の基礎に算入された当該対象受贈非上場株式等の一単位当たりの価額に法第七十条の七の四第一項に規定する対象相続非上場株式等(以下この条において「対象相続非上場株式等」という。)の数又は金額を乗じて得た金額
二 法第七十条の七の四第一項の規定の適用に係る相続の開始の時における、同条第二項第一号に規定する認定相続承継会社(以下この条において「認定相続承継会社」という。)の純資産額(会社の資産の額から負債の額を控除した残額をいう。以下この号において同じ。)から次に掲げる額の合計額を控除した残額が当該純資産額に占める割合
イ 当該認定相続承継会社が有する法第七十条の七の四第二項第四号イの外国会社その他政令で定める法人(ロにおいて「外国会社等」という。)の株式等(株式、出資又は投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項に規定する投資口をいう。ロにおいて同じ。)の価額
ロ 当該認定相続承継会社が有する当該認定相続承継会社の特別支配関係法人(法第七十条の七の四第二項第一号ハに規定する特別関係会社であつて当該認定相続承継会社との間に同項第四号イに規定する支配関係がある法人をいい、イの株式等に係る外国会社等を除く。)の株式等の価額に(1)に掲げる金額が(2)に掲げる金額に占める割合を乗じて得た金額
(1) 当該特別支配関係法人が直接又は他の特別支配関係法人を通じて間接に有する外国会社等(当該外国会社等との間に支配関係がある他の外国会社等を除く。)の株式等の価額((2)に掲げる金額を限度とする。)
(2) 当該特別支配関係法人の純資産額

 

[措置法第70条の7の4((非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除))関係]

70の7の4−6(認定相続承継会社等が外国会社、上場会社又は医療法人の株式等を有する場合の納税猶予分の相続税額の計算の基となる対象相続非上場株式等の価額)

対象相続非上場株式等について措置法第70条の7の4第1項の規定の適用を受ける場合において、相続の開始の時に、対象相続非上場株式等に係る認定相続承継会社又は当該認定相続承継会社の特別関係会社(措置法令第40条の8の4第4項において準用する措置法令第40条の8の2第8項の特別の関係がある会社をいう。以下70の7の4-6の2までにおいて同じ。)であって当該認定相続承継会社との間に支配関係がある法人(以下70の7の4-6の2までにおいて「特別支配関係法人」という。)が会社法第2条第2号に規定する外国会社(当該認定相続承継会社の特別関係会社に該当するものに限る。)、措置法令第40条の8の4第8項において準用する措置法令第40条の8の2第12項第1号に掲げる法人(当該認定相続承継会社が資産保有型会社等に該当する場合に限る。)又は同項第2号に掲げる医療法人(以下70の7の4-6の2までにおいて「外国会社等」という。)の株式等(投資信託及び投資法人に関する法律第2条第14項に規定する投資口を含む。)を有するときにおける措置法第70条の7の4第2項第4号に規定する納税猶予分の相続税額(以下70の7の4-6の2までにおいて「納税猶予分の相続税額」という。)の計算の基となる当該対象相続非上場株式等の価額は、措置法規則第23条の12第3項の規定に基づき計算した価額となることに留意する。
 この場合において、措置法規則第23条の12第3項第2号ロ(1)に規定する「当該特別支配関係法人が直接又は他の特別支配関係法人を通じて間接に有する外国会社等の株式等の価額」とは、次に掲げる区分により計算した価額となることに留意する。(平22課資2-14追加、平23課資2-8、平26課資2-12、課審7-17、徴管6-25、平30課資2-9改正)

(1) 特別支配関係法人が直接に有する外国会社等の株式等の価額
 当該外国会社等の株式等の価額

(2) 特別支配関係法人が他の特別支配関係法人を通じて間接に有する外国会社等の株式等の価額
 次の算式により計算した価額
(算式)
特別支配関係法人が有する他の特別支配関係法人の株式等の数又は金額×(他の特別支配関係法人の株式等の1単位当たりの価額-他の特別支配関係法人が外国会社等の株式等を有していなかったものとして計算した場合の当該他の特別支配関係法人の株式等の1単位当たりの価額)

(注)

1 措置法規則第23条の12第3項第2号の純資産額を算定する場合における各資産及び各負債の価額は、評価基本通達の定めにより算定した価額となることに留意する。

2 上記(2)の算式中、「他の特別支配関係法人が外国会社等の株式等を有していなかったものとして計算した場合の当該他の特別支配関係法人の株式等の1単位当たりの価額」とは、他の特別支配関係法人の株式等の価額を評価基本通達の定めにより計算した価額を基礎とし、当該他の特別支配関係法人が有している外国会社等の株式等の価額及び当該外国会社等から受けた配当金に相当する金額を除外したところで計算した場合の当該株式等の価額とする。