事業承継税制⑱-形式的に資産保有型会社に該当する場合で、事業実態要件を充足するために見逃している点はないか?

Q 自社株の納税猶予の適用について、対象会社が資産保有型会社に該当している場合でも、事業実態要件を充足して入れば、制度の適用が可能であると聞きましたが、要件を充足するための留意点があれば教えてくれますか?

A 従業員判定で、生計を一にする親族は除かれます。また、事業判定で同族関係者への貸付事業は除かれます。

解説
対象会社が事業実態の要件を充足する場合には、形式的な判定では資産保有型会社及び資産運用型会社に該当していても、納税猶予の適用が可能となります。また、対象会社の特定資産の判定においても、特別関係会社(※)が事業実態要件を充足する場合には、特定資産に該当しません(租税特別措置法施行令第40条の8第6項、円滑化法規則第6条第2項)。

事業実態要件は以下の3つからなります。常時使用従業員から後継者と生計を一にする親族が除かれ、同族関係者に対する資産の貸付けが除かれている点に留意が必要です。

  1. 常時使用従業員(後継者と生計を一にする親族を除く)の数が5人以上であること。
  2. 3年以上にわたり、商品の販売、資産の貸付け(同族関係者に対する貸付けを除く。)又は役務の提供で、継続して対価を得て行われる業務を行なっていること(その商品の開発若しくは生産又は役務の開発を含む。)(租税特別措置法施行規則第23条の9第5項)。
  3. 従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。

※特別関係会社とは、対象会社、対象会社の代表者、その親族等で議決権の過半数を保有される会社をいいます(租税特別措置法第70条の7第2項第1号ハ、租税特別措置法施行令第40条の8第7項)。具体的には、対象会社が支配する子会社、孫会社等が該当します。

 

租税特別措置法施行令第40条の8第6項

6 法第七十条の七第二項第一号ロに規定する資産保有型会社又は資産運用型会社のうち政令で定めるものは、同項第八号に規定する資産保有型会社又は同項第九号に規定する資産運用型会社(以下この項、第十二項及び第二十四項において「資産保有型会社等」という。)のうち、同条第一項の規定の適用に係る贈与の時において、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
一 当該資産保有型会社等の法第七十条の七第二項第八号ロに規定する特定資産(第二十二項、第二十四項第一号及び第五十項において「特定資産」という。)から当該資産保有型会社等が有する当該資産保有型会社等の同条第二項第一号ハに規定する特別関係会社(以下この号及び第二十四項第一号において「特別関係会社」という。)で次に掲げる要件の全てを満たすものの株式等を除いた場合であつても、当該資産保有型会社等が同条第二項第八号に規定する資産保有型会社又は同項第九号に規定する資産運用型会社に該当すること。
 イ 当該特別関係会社が、法第七十条の七第一項の規定の適用に係る贈与の日まで引き続き三年以上にわたり、商品の販売その他の業務で財務省令で定めるものを行つていること。
 ロ イの贈与の時において、当該特別関係会社の法第七十条の七第二項第一号イに規定する常時使用従業員(経営承継受贈者及び当該経営承継受贈者と生計を一にする親族を除く。以下この項及び第二十四項において「親族外従業員」という。)の数が五人以上であること。
 ハ イの贈与の時において、当該特別関係会社が、ロの親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。
二 当該資産保有型会社等が、次に掲げる要件の全てを満たす法第七十条の七第二項第八号に規定する資産保有型会社又は同項第九号に規定する資産運用型会社でないこと。
 イ 当該資産保有型会社等が、法第七十条の七第一項の規定の適用に係る贈与の日まで引き続き三年以上にわたり、商品の販売その他の業務で財務省令で定めるものを行つていること。
 ロ イの贈与の時において、当該資産保有型会社等の親族外従業員の数が五人以上であること。
 ハ イの贈与の時において、当該資産保有型会社等が、ロの親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。

 

租税特別措置法施行規則第23条の9第5項
 
5 施行令第四十条の八第六項第一号イ及び第二号イ並びに第二十四項第一号イ及び第二号イに規定する財務省令で定める業務は、次に掲げるいずれかのものとする。
一 商品販売等(商品の販売、資産の貸付け(経営承継受贈者及び当該経営承継受贈者と施行令第四十条の八第十一項に規定する特別の関係がある者に対する貸付けを除く。)又は役務の提供で、継続して対価を得て行われるものをいい、その商品の開発若しくは生産又は役務の開発を含む。次号において同じ。)
二 商品販売等を行うために必要となる資産(施行令第四十条の八第六項第一号ハ及び第二号ハの事務所、店舗、工場その他これらに類するものを除く。)の所有又は賃借
三 前二号に掲げる業務に類するもの

 

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第6条第2項
 
2 前項第七号から第十四号までの規定の適用については、中小企業者の第一種経営承継贈与者、第二種経営承継贈与者、第一種特例経営承継贈与者若しくは第二種特例経営承継贈与者からの贈与の時又は中小企業者の第一種経営承継相続人、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継相続人若しくは第二種特例経営承継相続人の被相続人の相続の開始の時において、当該中小企業者が次に掲げるいずれにも該当するときは当該中小企業者は資産保有型会社及び資産運用型会社に該当しないものとみなし、当該中小企業者の特別子会社が次に掲げるいずれにも該当するときは当該特別子会社は資産保有型子会社及び資産運用型子会社に該当しないものとみなす。
一 当該中小企業者の常時使用する従業員(第一種経営承継受贈者、第一種経営承継相続人、第二種経営承継受贈者、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継受贈者、第一種特例経営承継相続人、第二種特例経営承継受贈者又は第二種特例経営承継相続人及びこれらの者と生計を一にする親族を除く。以下この項において「親族外従業員」という。)の数が五人以上であること。
二 当該中小企業者が、親族外従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。
三 当該贈与の日又は当該相続の開始の日まで引き続き三年以上にわたり、次に掲げるいずれかの業務をしていること。
イ 商品販売等(商品の販売、資産の貸付け(第一種経営承継受贈者、第一種経営承継相続人、第二種経営承継受贈者、第二種経営承継相続人、第一種特例経営承継受贈者、第一種特例経営承継相続人、第二種特例経営承継受贈者又は第二種特例経営承継相続人に対するもの及びこれらの者に係る同族関係者に対するものを除く。)又は役務の提供で、継続して対価を得て行われるものをいい、その商品の開発若しくは生産又は役務の開発を含む。以下同じ。)
ロ 商品販売等を行うために必要となる資産(前号の事務所、店舗、工場その他これらに類するものを除く。)の所有又は賃借
ハ イ及びロに掲げる業務に類するもの