事業承継税制⑳-納税猶予適用後の組織再編時における担保提供のみなし充足の留意点を見逃していないか?

Q 自社株の納税猶予制度適用後に、適用会社が合併により消滅した場合で、猶予を継続するための担保提供における留意点を教えてくれますか?(※対象会社株式の全てを担保提供している前提です。)

A 対象会社が合併により消滅した場合に、1ヶ月以内に税務署に申請書を提出すれば、納税猶予適用株式による担保が継続されます。

解説
対象会社が合併により消滅した場合には、提供された担保の全部につき変更があった場合に該当しますが(租税特別措置法第70条の7第6項、 租税特別措置法施行令第40条の8第33項第1号)、特定事由に該当するため(租税特別措置法施行令第40条の8第34項)、特定事由が生じた日から1ヶ月を経過する日までに、税務署に申請書及び合併契約書等の添付書類を提出することで、適用対象株式の担保提供が継続されます(租税特別措置法施行令第40条の8第35項、租税特別措置法施行規則第29条の3第22項、第23項、措置法基本通達70の7-30、70の7−31、70の7−33)。

 

租税特別措置法第70条の7第6項

6 第一項の規定の適用を受けようとする経営承継受贈者が納税猶予分の贈与税額につき対象受贈非上場株式等の全てを担保として提供した場合には、当該対象受贈非上場株式等の価額の合計額が当該納税猶予分の贈与税額に満たないときであつても、同項の規定の適用については、当該納税猶予分の贈与税額に相当する担保が提供されたものとみなす。ただし、その後において、その提供された担保の全部又は一部につき変更があつた場合その他の政令で定める場合に該当することとなつた場合は、この限りでない。  

 

租税特別措置法施行令第40条の8第33項、第34項、第35項
 
33 法第七十条の七第六項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 法第七十条の七第六項本文の規定により提供された担保の全部又は一部につき変更があつた場合
二 法第七十条の七第六項本文の規定により担保として提供された対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が、当該対象受贈非上場株式等に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合(税務署長に対し書面によりその旨の通知があつた場合において、当該定款の変更がその効力を生ずる日までに第三項に規定する方法により担保の提供が行われたときを除く。)
三 法第七十条の七第六項本文の規定により担保として提供された対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社(株券不発行会社であるものに限る。)が、当該対象受贈非上場株式等に係る株券を発行する旨の定款の定めを設ける定款の変更をした場合(税務署長に対し書面によりその旨の通知があつた場合において、当該定款の変更がその効力を生ずる日までに国税通則法施行令第十六条に定める手続により担保の提供が行われたときを除く。)

 

34 対象受贈非上場株式等(法第七十条の七第六項本文の規定により担保として提供されたものに限る。)に係る認定贈与承継会社について合併(合併により当該認定贈与承継会社が消滅する場合に限る。)、株式交換その他の事由(以下この項及び次項において「特定事由」という。)が生じ、又は生ずることが確実であると認められ、かつ、その提供された担保の全部又は一部を解除することがやむを得ないと認められる場合において、当該対象受贈非上場株式等に係る経営承継受贈者が当該特定事由が生じた後遅滞なく対象受贈非上場株式等の全部又は一部を再び担保として提供することが確実であると見込まれるときは、税務署長は、当該経営承継受贈者の申請に基づき、その提供された担保の全部又は一部を解除することができる。この場合において、同条第六項ただし書の規定の適用については、次に定めるところによる。
一 当該担保の解除は、なかつたものとみなす。
二 当該経営承継受贈者が、対象受贈非上場株式等の全部又は一部について、当該特定事由が生じた日から二月を経過する日(当該経営承継受贈者が同日までに再び担保として提供することができないことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合には、税務署長の指定する日)までに再び担保として提供しなかつた場合には、同日において国税通則法第五十一条第一項の規定による命令に応じなかつたものとみなす。

 

35 前項の申請は、特定事由が生じた日から一月を経過する日までに、同項の対象受贈非上場株式等について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した申請書に財務省令で定める書類を添付したものをもつてしなければならない。

 

租税特別措置法施行規則第29条の3第22項、第23項

22 施行令第四十条の八第三十五項に規定する財務省令で定める事項は、同条第三十四項の規定により担保の解除を受けようとする理由、当該担保の解除を受けようとする対象受贈非上場株式等の数又は金額及び同項の特定事由が生じた日又は生ずると見込まれる日とする。
 
23 施行令第四十条の八第三十五項に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
一 施行令第四十条の八第三十四項の規定の適用を受けようとする経営承継受贈者が同項に規定する特定事由が生じた日から二月を経過する日までに対象受贈非上場株式等を再び担保として提供することを約する書類
二 合併契約書、株式交換契約書若しくは株式移転計画書の写し又は登記事項証明書その他の書類で前号の特定事由が生じた日又は生ずると見込まれる日を明らかにする書類
三 その他参考となるべき書類

 

[措置法第70条の7((非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除))関係]

70の7-30(みなす充足に該当しないこととなる事由)
措置法令第40条の8第33項第1号の「担保の全部又は一部につき変更があった場合」とは、例えば、次のようなものをいうことに留意する。(平21課資2-7追加、平22課資2-14、平23課資2-8、平26課資2-12、課審7-17、徴管6-25、平27課資2-9、平30課資2-9、令元課資2-10改正)

(1) 担保として提供された対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が合併により消滅した場合

(2) 担保として提供された対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等になった場合

(3) 担保として提供された対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が組織変更した場合

(4) 担保として提供された対象受贈非上場株式等である株式の併合又は分割があった場合

(5) 担保として提供された対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が会社法第185条((株式無償割当て))に規定する株式無償割当てをした場合

(6) 担保として提供された対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の名称変更があったことその他の事由により担保として提供された当該対象受贈非上場株式等に係る株券の差替えの手続が必要となった場合

(7) 担保財産の変更等が行われたため、対象受贈非上場株式等の全てが担保として提供されていないこととなった場合

(8) 担保として提供された対象受贈非上場株式等について、措置法規則第23条の9第29項に掲げる要件に該当しないこととなった場合

 

70の7-31(担保財産の変更等が行われた場合のみなす充足)
措置法第70条の7第6項本文の規定は、同条第1項の規定の適用を受けようとする場合に対象受贈非上場株式等の全てを担保として提供したときに適用されるものであることから、同条第1項の規定の適用を受けるに当たり対象受贈非上場株式等以外の財産を担保として提供したこと等により同条第6項本文の規定が適用されなかった場合又は同条第6項本文の規定が適用されたものの担保の全部若しくは一部につき変更があったため同条第6項ただし書に該当した場合には、その後に担保財産の変更を行った結果、対象受贈非上場株式等の全てを担保提供している状況が生じても、その時点から同条第6項本文の規定が適用されるものではないことに留意する。
 ただし、同条第6項本文の規定が適用されたものの担保の全部又は一部につき変更があったため同条第6項ただし書に該当した場合であっても、担保として提供している対象受贈非上場株式等について措置法令第40条の8第34項に規定する特定事由が生じた又は生じることが確実と認められるため、同項の規定に基づき、当該対象受贈非上場株式等に対応するものとして新たに取得した対象受贈非上場株式等の全部が担保として提供されたときには、同項第1号の規定により当該担保の解除はなかったものとみなすことから、措置法第70条の7第6項本文の規定が継続して適用されることに留意する。(平21課資2-7追加、平22課資2-14、平23課資2-8、平26課資2-12、課審7-17、徴管6-25、平27課資2-9、平29課資2-14、平30課資2-9改正)

 

70の7-33(特定事由)
措置法令第40条の8第34項に規定する「特定事由」とは、70の7-30((みなす充足に該当しないこととなる事由))(1)から(6)に掲げるようなものをいうことに留意する。(平21課資2-7追加、平22課資2-14、平23課資2-8、平26課資2-12、課審7-17、徴管6-25、平27課資2-9改正)