株主への利益移転④-株主への利益移転によるみなし贈与課税は、法人から個人株主への利益移転でも起こると考えていないか?

Q 同族会社に対して、財産を無償又は時価よりも著しく低額で譲渡した場合には、会社株式を保有する株式価額の増加により、同族会社の株主に贈与税が課税されると聞きましたが、法人から個人株主へのみなし贈与も対象となりますか?

A 対象となりません。

解説
相続税法では、法人からの贈与により取得した財産に対する贈与税課税は除かれています(相続税法第21条の3第1項第1号)。同族会社に対する財産の無償提供等の取引により、同族会社に利益が移転することで、当該利益を間接的に享受する株主に贈与税が課税される定めは、相続税法が根拠となりますので、法人から個人株主へのみなし贈与については贈与税の課税はありません(相続税法第9条、相続税法基本通達9-2)。
法人から個人への贈与については、所得税法の定めにしたがうと一時所得となりますが(所得税法基本通達34−1(5))、みなし贈与の規定はあくまでも贈与税法の定めですので、所得税の対象とはならないと考えます。
ただし、例えば父が100%出資する法人から、子が100%出資する法人に対して財産の無償提供が行われた場合には、法人間の利益移転が、相続税、贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるため、同族会社の行為計算の否認が適用されて、父から子へのみなし贈与として、贈与税が課税されるものと考えます(相続税法第64条第1項)。

 

相続税法第21条の3第1項第1号(贈与税の非課税財産)
第二十一条の三 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
一 法人からの贈与により取得した財産

 

所得税法基本通達34−1(5)(一時所得の例示)
(5) 法人からの贈与により取得する金品(業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものを除く。)

 

相続税法第64条第1項(同族会社等の行為又は計算の否認等)
第六十四条 同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合においてはその株主若しくは社員又はその親族その他これらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、相続税又は贈与税についての更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、課税価格を計算することができる。