株主への利益移転⑮-合同会社への増資によりみなし贈与が生じないよう、定款で必ず定める事項を見逃していないか?
Q 父が10年前に100万円で設立した合同会社は、不動産事業で利益を上げ、会社価値は9,100万円です。子が900万円の増資を行った場合に留意事項はありますか?
A 定款に損益分配及び残余財産の分配の割合を定めないと、父から子へのみなし贈与課税の対象となります。
解説
合同会社において、損益分配及び残余財産の分配の割合について定款の定めがないときは、これらの割合は各社員の出資の価額に応じて決まります(会社法第622条第1項、同法第666条第1項)。
本件で増資後の出資金額は、父100万円、子900万円であるため、出資持分割合は、父10%、子90%です。損益分配及び残余財産について定款の定めがなく、出資持分割合に基づいて分配した場合には、増資後は90%が子に分配されることになります。
子は900万円の増資にも関わらず、会社価値ベースで9,000万円(1億円×90%)を得ていることから、父から子へ利益移転が生じていると考えられ、みなし贈与課税の対象となります(相続税法基本通達9−1)。
みなし贈与の問題が生じないように、合同会社への増資の際は、損益分配及び残余財産の分配の割合を、増資時の時価純資産価額に基づいて算定し、これを定款に定める必要がある点に留意が必要です。
会社法第622条第1項(社員の損益分配の割合)
第六百二十二条 損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。
2 利益又は損失の一方についてのみ分配の割合についての定めを定款で定めたときは、その割合は、利益及び損失の分配に共通であるものと推定する。
会社法第666条(残余財産の分配の割合)
第六百六十六条 残余財産の分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。
相続税法基本通達9-1(利益を受けたの意義)
法第9条に規定する「利益を受けた」とは、おおむね利益を受けた者の財産の増加又は債務の減少があった場合等をいい、労務の提供等を受けたような場合は、これに含まないものとする。