株主への利益移転⑫-合併比率の算定方法について、有利発行規定を確認せずに決定していないか?

Q 兄と弟がそれぞれ経営する非上場会社であるA社とB社があり、A社の株式は兄が100%、B社の株式は弟が100%保有しています。A社を合併法人、B社を被合併法人とする合併(適格合併)を行いますが、合併比率はどのような方法で算定しますか?

A 時価純資産価額で算定するのが原則だと考えます。

解説
合併にあたっては、合併比率を算定して、被合併法人の株主への合併法人株式の交付株式数を決定します。被合併法人の株主は被合併法人株式と引き換えに、合併法人株式の交付を受けるため、法人税法上、所得税法上の取扱いに準じて、有利発行に当たらない「その有価証券の取得のために通常要する価額」で計算することで問題は生じないと考えられます。したがって、合併比率は、1株あたり時価純資産価額をもとに算出するのが最も合理的な方法であるといえます(法人税基本通達4-1-5(4)、所得税基本通達23~35共-9(4)ニ)。

合併比率を1株あたり時価純資産価額をもとに算出していれば、みなし贈与にかかる相続税法第9条(相続税法基本通達9−2(4)、相続税法基本通達9−4)により、贈与税を課税されることはないものと考えます。

 

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有利発行にかかる法人税法上の規定

法人税法施行令第119条第1項第4号(有価証券の取得価額)
内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
四 有価証券と引換えに払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額が払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額である場合における当該払込み又は当該給付(以下この号において「払込み等」という。)により取得をした有価証券(新たな払込み等をせずに取得をした有価証券を含むものとし、法人の株主等が当該株主等として金銭その他の資産の払込み等又は株式等無償交付により取得をした当該法人の株式又は新株予約権(当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式又は新株予約権に限る。)、第二十号に掲げる有価証券に該当するもの及び適格現物出資により取得をしたものを除く。) その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額

 

法人税基本通達2-3-7(通常要する価額に比して有利な金額)
令第119条第1項第4号《有利発行により取得した有価証券の取得価額》に規定する「払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額」とは、当該株式の払込み又は給付の金額(以下2-3-7において「払込金額等」という。)を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいうものとする。(平12年課法2-7「四」により追加、平19年課法2-3「十」、平19年課法2-17「五」により改正)

(注)
1 社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかは、当該株式の価額と払込金額等の差額が当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるかどうかにより判定する。

2 払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額とは、決定日の価額のみをいうのではなく、決定日前1月間の平均株価等、払込金額等を決定するための基礎として相当と認められる価額をいう。

 

法人税基本通達2-3-8(他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認めれらる場合)
令第119条第1項第4号《有利発行により取得した有価証券の取得価額》に規定する「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは、株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ、かつ、その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいうことに留意する。(平12年課法2-7「四」により追加、平14年課法2-1「九」、平19年課法2-3「十」により改正)

(注) 他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に該当するか否かについては、例えば、新株予約権無償割当てにつき会社法第322条《ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会》の種類株主総会の決議があったか否かのみをもって判定するのではなく、その発行法人の各種類の株式の内容、当該新株予約権無償割当ての状況などを総合的に勘案して判定する必要がある。

 

法人税基本通達2-3-9(通常要する価額に比して有利な金額で新株等が発行された場合における有価証券の価額)
令第119条第1項第4号《有利発行により取得した有価証券の取得価額》に規定する有価証券の取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次による。(平12年課法2-7「四」により追加、平17年課法2-14「四」、平19年課法2-3「十」、令2年課法2-17「三」により改正)

(1) 新株が令第119条の13第1項第1号から第3号まで《市場有価証券の時価評価金額》に掲げる有価証券(以下2-3-9において「市場有価証券」という。)である場合 その新株の払込み又は給付に係る期日(払込み又は給付の期間を定めたものにあっては、その払込み又は給付をした日。以下2-3-9において「払込期日」という。)における当該新株の4-1-4《市場有価証券等の価額》に定める価額

(2) 旧株は市場有価証券であるが、新株は市場有価証券でない場合 新株の払込期日における旧株の4-1-4に定める価額を基準として当該新株につき合理的に計算される価額

(3) (1)及び(2)以外の場合 その新株又は出資の払込期日において当該新株につき4-1-5及び4-1-6《市場有価証券等以外の株式の価額》に準じて合理的に計算される当該払込期日の価額

 

法人税基本通達4-1-5(市場有価証券等以外の株式の価額の特例)
市場有価証券等以外の株式について法第25条第3項《資産評定による評価益の益金算入》の規定を適用する場合において、再生計画認可の決定があった時の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次による。(平17年課法2-14「七」により追加、平19年課法2-3「十五」、平19年課法2-17「九」、平22年課法2-1「十三」、令2年課法2-17「四」により改正)

(1) 売買実例のあるもの 当該再生計画認可の決定があった日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額

(2) 公開途上にある株式(金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式)で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下4-1-5において「公募等」という。)が行われるもの((1)に該当するものを除く。) 金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額

(3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額

(4) (1)から(3)までに該当しないもの 当該再生計画認可の決定があった日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額

 

法人税基本通達4-1-6(市場有価証券等以外の株式の価額の特例)
法人が、市場有価証券等以外の株式(4-1-5の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について法第25条第3項《資産評定による評価益の益金算入》の規定を適用する場合において、再生計画認可の決定があった時における当該株式の価額につき昭和39年4月25日付直資56・直審(資)17「財産評価基本通達」(以下4-1-6において「財産評価基本通達」という。)の178から189-7まで《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件としてこれを認める。(平17年課法2-14「七」により追加、平19年課法2-3「十五」、平19年課法2-17「九」、平22年課法2-1「十三」、令2年課法2-17「四」により改正)

(1) 当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合(同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、当該法人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

(2) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については当該再生計画認可の決定があった時における価額によること。

(3) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

 

有利発行にかかる所得税法上の規定

所得税法施行令第84条第3項第3号(譲渡制限付株式の価額等)
3 発行法人から次の各号に掲げる権利で当該権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されているものを与えられた場合(株主等として与えられた場合(当該発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)を除く。)における当該権利に係る法第三十六条第二項の価額は、当該権利の行使により取得した株式のその行使の日(第三号に掲げる権利にあつては、当該権利に基づく払込み又は給付の期日(払込み又は給付の期間の定めがある場合には、当該払込み又は給付をした日))における価額から次の各号に掲げる権利の区分に応じ当該各号に定める金額を控除した金額による。

三 株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合における当該株式を取得する権利(前二号に掲げるものを除く。) 当該権利の行使に係る当該権利の取得価額にその行使に際し払い込むべき額を加算した金額

 

所得税基本通達23~35共-7(株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合)
令第84条第3項第3号に規定する「株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合」とは、その株式と引換えに払い込むべき額を決定する日の現況におけるその発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下る金額である場合をいうものとする。(昭49直所2-23追加、平10課法8-2、課所4-5、平14課個2-5、課資3-3、課法8-3、課審3-118、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平28課個2-22、課審5-18、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12、令2課個2-11、課法11-3、課審5-6改正)

(注)
1 社会通念上相当と認められる価額を下る金額であるかどうかは、当該株式の価額と当該株式と引換えに払い込むべき額との差額が当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるかどうかにより判定する。

2 株式と引換えに払い込むべき額を決定する日の現況における株式の価額とは、決定日の価額のみをいうのではなく、決定日前1月間の平均株価等、当該株式と引換えに払い込むべき額を決定するための基礎として相当と認められる価額をいう。

 

所得税基本通達23~35共-8(株主等として与えられた場合) 
令第84条第3項に規定する「株主等として与えられた場合(当該発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)」とは、同項に規定する権利が株主等のその有する株式の内容及び数に応じて平等に与えられ、かつ、その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいうことに留意する。(昭49直所2-23追加、平10課法8-2、課所4-5、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26、平28課個2-22、課審5-18、令2課個2-11、課法11-3、課審5-6改正)

(注) 例えば、他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に該当するか否かの判定については、新株予約権無償割当てにつき会社法第322条の種類株主総会の決議があったか否かのみをもって判定するのではなく、その発行法人の各種類の株式の内容、当該新株予約権無償割当ての状況などを総合的に勘案して判断する必要があることに留意する。

 

所得税基本通達23~35共-9(株式等を取得する権利の価額)
令第84条第3項第1号及び第2号に掲げる権利の行使の日又は同項第3号に掲げる権利に基づく払込み若しくは給付の期日(払込み又は給付の期間の定めがある場合には、当該払込み又は給付をした日。以下この項において「権利行使日等」という。)における同条第3項本文の株式の価額は、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。(昭49直所2-23、平10課法8-2、課所4-5、平11課所4-1、平14課個2-5、課資3-3、課法8-3、課審3-118、平14課個2-22、課資3-5、課法8-10、課審3-197、平17課個2-23、課資3-5、課法8-6、課審4-113、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26、平26課個2-9、課審5-14、平28課個2-22、課審5-18、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12、令2課個2-12、課法11-3、課審5-6改正)

(1) これらの権利の行使により取得する株式が金融商品取引所に上場されている場合 当該株式につき金融商品取引法第130条の規定により公表された最終の価格(同日に最終の価格がない場合には、同日前の同日に最も近い日における最終の価格とし、2以上の金融商品取引所に同一の区分に属する最終の価格がある場合には、当該価格が最も高い金融商品取引所の価格とする。以下この項において同じ。)とする。

(2) これらの権利の行使により取得する株式に係る旧株が金融商品取引所に上場されている場合において、当該株式が上場されていないとき 当該旧株の最終の価格を基準として当該株式につき合理的に計算した価額とする。

(3) (1)の株式及び(2)の旧株が金融商品取引所に上場されていない場合において、当該株式又は当該旧株につき気配相場の価格があるとき (1)又は(2)の最終の価格を気配相場の価格と読み替えて(1)又は(2)により求めた価額とする。

(4) (1)から(3)までに掲げる場合以外の場合 次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める価額とする。

イ 売買実例のあるもの 最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額

ロ 公開途上にある株式で、当該株式の上場又は登録に際して株式の公募又は売出し(以下この項において「公募等」という。)が行われるもの(イに該当するものを除く。) 金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われるブックビルディング方式又は競争入札方式のいずれかの方式により決定される公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額

(注) 公開途上にある株式とは、金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式及び日本証券業協会が株式を登録銘柄として登録することを明らかにした日から登録の日の前日までのその株式をいう。

ハ 売買実例のないものでその株式の発行法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの 当該価額に比準して推定した価額

ニ イからハまでに該当しないもの 権利行使日等又は権利行使日等に最も近い日におけるその株式の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額

(注) この取扱いは、令第354条第2項((新株予約権の行使に関する調書))に規定する「当該新株予約権を発行又は割当てをした株式会社の株式の1株当たりの価額」について準用する。