非上場株式の総則6項による否認①-相続税法と財産評価基本通達の前提を整理しないまま総則6項を検討していないか?
Q 相続税法と財産評価基本通達の関係について教えてくれますか?
A 相続税法では、財産評価は「時価」によることのみ規定しています。その「時価」の評価方法を財産評価基本通達で定めています。
解説
相続税法における財産の評価は「時価」によることを規定しています(相続税法第22条)。財産評価基本通達においては、その「時価」とは不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうことを前提として明示したうえで、その価額は、財産評価基本通達の定めによって評価した価額によることとしています(財産評価基本通達・総則1(2))。
したがって、実務上は財産評価基本通達に則って財産評価を行うことになりますが、あくまでも「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」を前提としているのが、相続税法上の時価です。そのため、財産評価基本通達の評価の仕組みを利用して、財産評価額を著しく圧縮する行為を防止するための例外規定が置かれています。
それが財産評価基本通達総則6項であり、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」旨を定めています。
財産評価基本通達 総則
1(評価の原則)
財産の評価については、次による。(平3課評2-4外改正)
(1) 評価単位
財産の価額は、第2章以下に定める評価単位ごとに評価する。
(2) 時価の意義
財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。
(3) 財産の評価
財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。
6(この通達の定めにより難い場合の評価)
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。