非上場株式の総則6項による否認⑤-総則6項の否認を受けた中央出版事案を抑えずに実務を行なっていないか?
Q 総則6項による否認事案を教えていただけますか?
A 中央出版事案があります。
解説
中央出版の創業者である元会長の相続において、相続財産約100億円の申告漏れを指摘され、約60億円の追徴課税を支払ったとされています。
(※新聞雑誌報道に基づくため、実際の事実関係と異なる可能性がある点はご留意ください)
中央出版の創業者である元会長の相続対策
中央出版株式を保有する持株会社である中央出版ホールディングス株式の評価に、類似業種比準方式を適用していることから、株式保有特定会社に該当しないように、借入によって株式以外の財産を増加させるなどの株特外しを行ったことが想定されますが、新聞報道からは具体的なスキームは読み取れません。
中央出版ホールディングス株式の財産評価のポイント
株式保有特定会社に該当する場合には、評価方法は原則、純資産価額となりますが、総資産に占める株式の割合を50%未満とすることで、株式保有特定会社に該当させず、中央出版ホールディングス株式の評価方法として、類似業種比準価方式が適用できます。
相続税申告
元会長に相続が発生し、中央出版ホールディングス株式について、類似業種比準方式を適用した評価額である1株18円で相続税申告を行いましたが、更正処分を受け、1株55円の評価額、約130億円の申告漏れを指摘されたとされています。その後、遺族は課税処分を不服として当局に再調査を請求し、最終的に1株45円程度、約100億円の申告漏れの指摘となり、約60億円の追徴課税となったとされています。
一部報道によると、当局は総則6項による財産評価の否認を行ううえで、第三者機関である大手監査法人による株価の鑑定評価額をもって時価としたとされています。
なお、納税者である相続人は不服申し立てをしたとされていますが、裁決の結果が公表されていないことから、相続人が申し立てを取り下げ、更正処分を受け入れている可能性があります。
否認されたポイント
具体的なスキームがわからないものの、何らかの株特外しスキームが行われたことが予想され、相続税負担軽減のみを目的としたものであると当局が判断したと考えられます。相続税法第22条の時価として、非上場株式に類似業種比準価額を適用した財産評価通達による評価は、著しく不適当と判断されたということになります。
財産評価基本通達 総則6(この通達の定めにより難い場合の評価)
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
課税時期において評価会社の有する各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める株式、出資及び新株予約権付社債(会社法第2条((定義))第22号に規定する新株予約権付社債をいう。)(189-3((株式等保有特定会社の株式の評価))において、これらを「株式等」という。)の価額の合計額(189-3((株式等保有特定会社の株式の評価))において「株式等の価額の合計額(相続税評価額によって計算した金額)」という。)の割合が50%以上である評価会社(次の(3)から(6)までのいずれかに該当するものを除く。以下「株式等保有特定会社」という。)の株式の価額は、189-3((株式等保有特定会社の株式の評価))の定めによる。
参考記事
朝日 2019年6月25日
名古屋の中央出版、創業者親族が100億円の申告漏れ
https://www.asahi.com/articles/ASM6T343WM6TOIPE007.html