非上場株式の公益財団への寄附④-措置法70条の適用の際、相続した寄附対象株式を種類株式に変更した場合に、種類変更後の株式を寄附する場合でも非課税の適用を受けられると考えていないか?
Q措置法70条による相続税の非課税の適用を考えています。公益財団法人に相続した株式を寄附する前に、当該株式を種類変更し、配当優先無議決権株式したいと考えています。相続した株式とはその権利内容が変化することになりますが、当該株式を寄附した場合でも非課税の適用は受けられますか?
A受けられない可能性があるため、寄附後に種類変更を行う必要があると考えます。
解説
措置法70条の適用を受けるための財産は、相続又は遺贈により取得した財産そのものでなければなりませんが、相続後に株式の種類変更をすることにより、相続時点の株式とはその権利内容が異なることになります。「相続又は遺贈により取得した財産」に該当する財産として認められる場合については、租税特別措置法関係通達70−1−6で限定列挙されていますが、相続により取得した株式を種類変更した場合については含まれていません。
公益財団法人への株式寄附後に種類変更する場合には、当該法人による同意手続きが生じることになりますが、優先配当を受けられる権利への変更であれば、寄附を受けた財団の理事会等で問題なく承認されるものと考えます。公益財団法人にとっては、議決権よりも配当を優先的に得られる権利の方が、公益活動を行っていくうえで明らかに重要であるためです。
措置法70条の適用が否認される可能性を無くすためにも、寄附後に種類変更を行う必要があると考えます。
〔措置法第70条第1項《国等に対して相続財産を贈与した場合の相続税の非課税等》関係〕(法令解釈通達)
70-1-6(相続財産たる家屋の火災保険金等)
措置法第70条第1項又は第10項の規定の適用がある「相続又は遺贈により取得した財産」とは、相続又は遺贈により取得した財産そのものをいうのであるが、当該財産が、例えば、次の(1)のイからトまでに掲げる場合に該当して取得したそれぞれに掲げる財産は「相続又は遺贈により取得した財産」に該当するものとして取り扱う。したがって、当該財産が次の2)のイ又はロに掲げる場合に該当して取得したそれぞれに掲げる財産は、これに該当しないものとする。(平19課資2-7、課審6-5改正)
(1) 「相続又は遺贈により取得した財産」に該当する財産
イ 相続又は遺贈により取得した建物等が火災により焼失した場合において、当該焼失に伴って取得した火災保険金(被相続人又は遺贈者(死因贈与による贈与者を含む。)が契約者であるものに限る。)
ロ 相続又は遺贈により取得した財産について措置法第33条の4第1項((収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除))に規定する「収用交換等」による譲渡があった場合において、当該収用交換等に伴い取得した財産
ハ 相続又は遺贈により取得した株式発行前の株式、株式の割当てを受ける権利又は株主となる権利について新株の割当て又は交付があった場合において、当該割当て又は交付により取得した新株式(当該新株式の払込金額が旧株式の取得者である相続人等により負担されたものである場合における当該相続人等の払込金額に係る部分を除く。)
ニ 相続又は遺贈により取得した株式等の発行法人について合併若しくは分割又は解散があった場合において、当該合併若しくは分割又は解散により取得した株式、金銭等
ホ 相続又は遺贈により取得した証券投資信託又は貸付信託の受益証券について信託期間が満了した場合において、当該満了により取得した金銭
へ 相続又は遺贈により取得した貸付金債権について弁済期限が到来した場合において、当該弁済により取得した金銭
ト 相続又は遺贈により取得した預貯金の払戻しを受けた場合において、当該払戻しを受けた金銭
(2) 「相続又は遺贈により取得した財産」に該当しない財産
イ 相続又は遺贈により取得した財産について譲渡があった場合において当該譲渡により取得した財産((1)のロの収用交換等に伴い取得した財産を除く。)
ロ 相続又は遺贈により取得した証券投資信託又は貸付信託の受益証券について信託契約の解約があった場合において、当該解約により取得した金銭
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