非上場株式の譲渡時の時価①-純然たる第三者間の取引について逐条解説で言及している点を見逃していないか?

Q 非上場株式をM&Aにより売却することになりました。売却価格が税法上の時価と乖離していた場合に、課税が生じることはありますか?

A ありません。

解説
第三者間取引においては、売り手と買い手で決定した取引価額が時価ですので、課税が生じることはありません。

法人税基本通達逐条解説(9–1−14)、所得税基本通達逐条解説(59−6)では、いずれも「純然たる第三者間」という表現を用いており、「純然たる第三者間」において種々の経済性を考慮して定められた取引価額は、合理的なものとして是認されると記載されています。

純然たる第三者間の取引とは、価格交渉に際し、売り手と買い手の双方が対等な立場で主張しあえる関係における取引をいうと考えられます。

親族間等の価格交渉では、租税回避目的で、時価とかけ離れた取引価額が設定される場合も考えられるため、税法上の時価との乖離が問題となるわけです。

 

法人税基本通達逐条解説(9–1−14)税務研究会出版 十訂版 2021年 高橋正朗編著

「なお、本通達により、財産評価基本通達の例により気配相場のない株式の評価を行うといっても、これが唯一無二の評価方式ということではなく、あくまでも評価方法の一つに過ぎないことに留意すべきである。このほかにも気配相場のない株式の評価については種々の方法が考えられるところであり、例えば証券会社においては、新たに上場する株式について独自の評価方式を定めているようであるが、これも一つの評価方法として是認される余地があって然るべきものであろう。

なお、本通達は、気配相場のない株式について評価損を計上する場合の期末時価の算定という形で定められているが、関係会社間等において気配相場のない株式の売買を行う場合の適正取引価額の判定に当たっても、準用されることになろう。

ただし、純然たる第三者間において種々の経済性を考慮して定められた取引価額は、たとえ上記したところと異なる価額であっても、一般に常に合理的なものとして是認されることになろう。」

 

所得税基本通達逐条解説(59−6)大蔵財務協会 令和3年版 樫田明・今井慶一郎・佐藤誠一郎・木下直人共著

「なお、当然のことながら、純然たる第三者間において種々の経済性を考慮して決定された価額(時価)により取引されたと認められる場合など、この取扱いを形式的に当てはめて判定することが相当でない場合もあることから、この取扱いは原則的なものとしている。」